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過去
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あゆはは実家からあずかった荷物を持ってきたらしい。実家から都内の大学に通学していて、今日は授業が午後からなのでその途中によったという。
樹は早々に帰らせようとしていたが、一緒に昼食をとってから駅まで佑が送ることにした。と言っても樹のマンションと駅は目と鼻の先だ。「少し話したいことがある」と言われ、佑とあゆはは近くの公園に向かいベンチに座った。並んで座ると身長差があまり目立たなくなる。
あゆはも兄の樹同様かなり通行人から注目される。当のあゆはは慣れているらしく一向に意に介していない様子だ。兄妹二人ならんでいればなおさらなのだろうと思う。
「小鳩さんは樹君とずっと仲良かったの?」
「仲良くなったのは最近なんだよね。課も入社時期も違うから」
「本当に恋人じゃないの?」
先ほども聞かれたのに、重ねてあゆはが聞いてくる。友人だと思われるならともかく、同性だというのになぜこんなに追及されるのだろう。
そもそも樹と佑では釣り合いが取れないと思うのだが。
瀬奈やあゆはのような女性ならともかく。
「違うよ?カードキーは前預かって返しそびれただけだし。千堂君ってゲイなの?」
樹なら女の子はもちろん男でもより取り見取りだろう。そうであったとしてもやっぱり佑では釣り合わないと思うが。
「とりあえず今まではフツーに女の子とつきあってたから違うと思うんだけど。
家に人入れたこと初めてだったから。だから小鳩さんが入ってきたときびっくりしたの。
家族は入れてくれるけど、カードキーは私たちももらったことないから小鳩さんはやっぱり特別なんだと思う」
そこであゆはは目を伏せ、まつげが頬に影を落とす。
「小鳩さん」
あゆはが佑の手を握ってきて佑の顔を真正面から見つめる。その口調が真剣みを帯びて、佑も緊張する。
「何?」
「樹君を助けてください」
いきなり頭を下げられ、佑は慌てる。
「待って。助けるって何から?」
人付き合いはうまくて営業課のエースで都心のタワーマンションに住んでいて、佑よりよっぽど順風満帆な人生を送っていそうだが、ストーカーでもいるのだろうか。
「小さい頃は普通の子供だったんだけど……。
あるときから樹君は泣いたり怒ったりすることがなくなって。いつも笑顔で誰でも受け入れてるけど、本当は誰のことも拒絶してる。私たち家族すらも。隙を見せないようにいつも気をはってるみたいに。
私も小さかったし、何がきっかけは分からない。
樹君の心を助けられるのはきっと小鳩さんだけ」
「お願いします」と改めて頭を下げられる。
「とりあえず顔あげて」
人目も気になるので頭をあげてもらう。
「あゆはちゃんの話だけだとよく分からないし、もし千堂君が僕に話してくれて頼ってくれるんならその時は全力で助けるよ」
佑の言葉にあゆはは泣き笑いのような顔をした。
「ありがとう」
両親も共働きで多忙だったため、気になっていても誰にも言えなかったのだという。樹本人に聞いたところで簡単には打ち明けないだろう。
「大丈夫だよ」
祐はしばらくあゆはの頭を撫でていた。
もちろん佑はカウンセラーでもなんでもないので、樹を助けられる保証はない。だができる限りのことをしたいと思っていた。
樹は早々に帰らせようとしていたが、一緒に昼食をとってから駅まで佑が送ることにした。と言っても樹のマンションと駅は目と鼻の先だ。「少し話したいことがある」と言われ、佑とあゆはは近くの公園に向かいベンチに座った。並んで座ると身長差があまり目立たなくなる。
あゆはも兄の樹同様かなり通行人から注目される。当のあゆはは慣れているらしく一向に意に介していない様子だ。兄妹二人ならんでいればなおさらなのだろうと思う。
「小鳩さんは樹君とずっと仲良かったの?」
「仲良くなったのは最近なんだよね。課も入社時期も違うから」
「本当に恋人じゃないの?」
先ほども聞かれたのに、重ねてあゆはが聞いてくる。友人だと思われるならともかく、同性だというのになぜこんなに追及されるのだろう。
そもそも樹と佑では釣り合いが取れないと思うのだが。
瀬奈やあゆはのような女性ならともかく。
「違うよ?カードキーは前預かって返しそびれただけだし。千堂君ってゲイなの?」
樹なら女の子はもちろん男でもより取り見取りだろう。そうであったとしてもやっぱり佑では釣り合わないと思うが。
「とりあえず今まではフツーに女の子とつきあってたから違うと思うんだけど。
家に人入れたこと初めてだったから。だから小鳩さんが入ってきたときびっくりしたの。
家族は入れてくれるけど、カードキーは私たちももらったことないから小鳩さんはやっぱり特別なんだと思う」
そこであゆはは目を伏せ、まつげが頬に影を落とす。
「小鳩さん」
あゆはが佑の手を握ってきて佑の顔を真正面から見つめる。その口調が真剣みを帯びて、佑も緊張する。
「何?」
「樹君を助けてください」
いきなり頭を下げられ、佑は慌てる。
「待って。助けるって何から?」
人付き合いはうまくて営業課のエースで都心のタワーマンションに住んでいて、佑よりよっぽど順風満帆な人生を送っていそうだが、ストーカーでもいるのだろうか。
「小さい頃は普通の子供だったんだけど……。
あるときから樹君は泣いたり怒ったりすることがなくなって。いつも笑顔で誰でも受け入れてるけど、本当は誰のことも拒絶してる。私たち家族すらも。隙を見せないようにいつも気をはってるみたいに。
私も小さかったし、何がきっかけは分からない。
樹君の心を助けられるのはきっと小鳩さんだけ」
「お願いします」と改めて頭を下げられる。
「とりあえず顔あげて」
人目も気になるので頭をあげてもらう。
「あゆはちゃんの話だけだとよく分からないし、もし千堂君が僕に話してくれて頼ってくれるんならその時は全力で助けるよ」
佑の言葉にあゆはは泣き笑いのような顔をした。
「ありがとう」
両親も共働きで多忙だったため、気になっていても誰にも言えなかったのだという。樹本人に聞いたところで簡単には打ち明けないだろう。
「大丈夫だよ」
祐はしばらくあゆはの頭を撫でていた。
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