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風邪2
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ピンポーン
チャイムの音にうとうとしていた樹はふらふらしながらベッドをおり、リビングのモニターを確認する。映っていたのは顔を知っている程度のアラフォーの女子社員だった。
確か総務課だったから樹の自宅の住所を知るのもたやすかっただろう。
「個人情報駄々洩れだなー……」
出社したら総務部長に掛け合って個人情報は厳重にロックしてもらい、上の人間しか閲覧できないようにしてもらおう。病気になったたびにこんなことをされては気が休まらない。
時計を見るとちょうど昼だった。昼休みに抜けてきたのだろう。
「てかオレが休んだって情報回んの早すぎんだろ」
インターホンが何度かしつこくならされたが、樹は迷わず居留守を使うことにする。
もし半休をとって来たのだとしたら、うっかり入れてしまえばそのまま居座られそうだ。出社した時に追及されたら「寝ていたのですみません」とでも言えばいい。
薬が効いたのか、熱っぽさは相変わらずだが、少し楽になった気がする。
樹はレトルトのおかゆを皿に移してレンジで温めた。横目でモニターを見ると、ようやく諦めて帰ったようだ。
ほっと胸をなでおろし、おかゆと一緒にコップに水をついでテーブルに持っていく。
セキュリティのしっかりとしたマンションにして本当によかったと思う。実家にいるときから同級生や知人、もしくは大した面識のない人間がストーカー化するのは日常茶飯事だった。
大学は通学できる距離だったので一人暮らしを始めたのは社会人になってからだったが、実家は戸建てだったので、それよりも今住んでいるマンションのほうが安心だ。
アパートなら玄関ドアのすぐ前まで来られるわけで、耳を顰めれば中の音も容易に聞こえるだろうから、居留守を使おうとすれば息をひそめていなければならない。
スマホを見て連絡が来ていないのを確認しつつ、おかゆを食べ終わったので薬を飲む。
さっき起きたばかりで眠くなかったので、ベッドに横になって本をめくる。
休日でもないのにこんなにゆっくりとするのはとても贅沢だ。だが物足りなく感じてしまうのはやっぱり樹は仕事人間なのだと思う。
チャイムの音にうとうとしていた樹はふらふらしながらベッドをおり、リビングのモニターを確認する。映っていたのは顔を知っている程度のアラフォーの女子社員だった。
確か総務課だったから樹の自宅の住所を知るのもたやすかっただろう。
「個人情報駄々洩れだなー……」
出社したら総務部長に掛け合って個人情報は厳重にロックしてもらい、上の人間しか閲覧できないようにしてもらおう。病気になったたびにこんなことをされては気が休まらない。
時計を見るとちょうど昼だった。昼休みに抜けてきたのだろう。
「てかオレが休んだって情報回んの早すぎんだろ」
インターホンが何度かしつこくならされたが、樹は迷わず居留守を使うことにする。
もし半休をとって来たのだとしたら、うっかり入れてしまえばそのまま居座られそうだ。出社した時に追及されたら「寝ていたのですみません」とでも言えばいい。
薬が効いたのか、熱っぽさは相変わらずだが、少し楽になった気がする。
樹はレトルトのおかゆを皿に移してレンジで温めた。横目でモニターを見ると、ようやく諦めて帰ったようだ。
ほっと胸をなでおろし、おかゆと一緒にコップに水をついでテーブルに持っていく。
セキュリティのしっかりとしたマンションにして本当によかったと思う。実家にいるときから同級生や知人、もしくは大した面識のない人間がストーカー化するのは日常茶飯事だった。
大学は通学できる距離だったので一人暮らしを始めたのは社会人になってからだったが、実家は戸建てだったので、それよりも今住んでいるマンションのほうが安心だ。
アパートなら玄関ドアのすぐ前まで来られるわけで、耳を顰めれば中の音も容易に聞こえるだろうから、居留守を使おうとすれば息をひそめていなければならない。
スマホを見て連絡が来ていないのを確認しつつ、おかゆを食べ終わったので薬を飲む。
さっき起きたばかりで眠くなかったので、ベッドに横になって本をめくる。
休日でもないのにこんなにゆっくりとするのはとても贅沢だ。だが物足りなく感じてしまうのはやっぱり樹は仕事人間なのだと思う。
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