年下彼氏の策略

水無瀬雨音

文字の大きさ
上 下
25 / 66

あり得ない

しおりを挟む
 帰宅したのは21時前だった。
 コンビニで買った弁当を食べながら、佑の作ってくれた食事は美味しかったと思い起こす。食べなれているはずなのに、なんだか味が濃い。
 今日は佑と社内で会うことがなかったが、このままなにもしないのはマズい、とメールで「昨日はありがとうございました」とあたりさわりのないことを送る。
 自分でも本当にチキンだと思う。
 しばらくして「こちらこそありがとうございました」と丁寧な返事が戻ってくる。とりあえず佑は追及する気はないらしい。というよりは思い出したくないだけかもしれないが。
 樹はスマホをテーブルに置いて、食事に専念することにした。


「オレ女の子に困ってないけど?」
「男だからじゃなくて小鳩さんだからですよね」
 聖母のような微笑みで「大丈夫です。分かってます」と言うように頷いているのが腹が立つ。
「だから!そうじゃないんだって」
 少し声高になってしまい、
「え?なにー?千堂君が揉めるのめずらしいね」
「てか痴話げんか?マジショックなんだけど」
 周囲からひそひそと漏れ聞こえてきた声に、樹はこほん、と軽く咳をする。
 ただでさえ目立つ取り合わせなのに、もめている様子を見せるのはマズい。
「……とにかく。嫉妬とかじゃないから。じゃあ」
 聖母のような表情を崩さない瀬奈を置いて、逃げるようにそこで会話を終えたのだが、今思い出しても腹が立つ。
(嫉妬とか男同士で意味わかんねー)
 樹は食べ終わった弁当の容器を洗って軽く水けを切ると、プラ用のゴミ箱に放り込んだ。
 男同士の恋愛を好む人種がいるのは知識として知っていたが、瀬奈はそういうイメージとかけ離れていたので意外だった。
 何を勘違いしているのか分からないが当面害はなさそうだ。放置することにする。佑にも変なことを触れ込んでいなければよいのだが。

 
 樹は脱衣所に着替えを用意すると、浴槽にお湯をはった。
 髪を洗いながらなんとなく昨日の佑を思い返す。
 さり気なく触った細い腰や普段より少し高い声。
 お世辞にも大きいとは言えない佑のものが、触っているうちに増していく硬度。
 紅潮したおびえた顔……。
「……やっべぇマジかよ」
 ふと気が付くと、下半身に血流が集中していた。
 瀬奈が言うように自分はゲイなのだろうか。
 ……いやちがう。
 これは最近ご無沙汰だっただけだ。
 けして瀬奈に嫉妬はしていないし、佑が好きなわけでもない。
 樹は言い訳しながら速やかに処理をした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...