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嫉妬2
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「いいですよね?」
とニコッと微笑まれれば、大抵休日の予定が真っ白な祐に断る理由はない。
むしろ自宅に誘われるのは新密度が増したようで嬉しい。
樹は気づかいがうまいので、祐のほうは一緒にいて気兼ねないし楽しく過ごせるが、樹と休日過ごしたい相手など引く手あまただろうし、その中の誰かのほうが一緒にいて楽しいのだろうと思うので、何故自分にこんなに構ってくれるのだろうとは不思議に思うが。
ほどなくすると樹の自宅マンションに到着した。マンションの地下にある駐車場に停めると、そのまま広いロビーに出る。荷物はさりげなく樹が持ってくれた。
シャンデリアに落ち着いた絵画。よく分からない壺などの置物。待ち合わせに休めそうなソファ。
奥行きがあり高級のある内装は、高級ホテルのロビーのようだ。
「千堂様、お帰りなさいませ」
「ただいま帰りました。お疲れ様っす」
コンシェルジュがうやうやしく挨拶してくれるのを慣れた様子で片手をあげて樹が応える。
すたすたと迷いなく樹がエレベーターに乗り込むのを小走りで祐も着いていく。
「何これ?千堂くん、僕と違う会社だった?」
「俺と会社で過ごした時間消去するとか小鳩さんひでぇ。確かに社内でそんな絡みないですけど」
けたけたと樹が笑う。
樹の自宅は会社に程近いタワーマンションだった。会社は都心にあるのでその近くのタワーマンションということは当然家賃も高いだろう。
「電車通勤嫌なので徒歩通勤できるとこにしました。終電逃したときのタクシーけっこーでかいし。
あと瀬奈じゃないけど、俺もセキュリティちゃんとしてないと色々面倒なんで」
軽い口調で言っているが、下手したら家賃は祐の給料半月、もしくは一月分くらいだと思われる。
女の子じゃなくてもイケメンはストーカーやらなにやらあるのかもしれない。祐には今後も縁のない苦労だと思われるが、イケメンも大変なのだろう。
「あれ?そういえば」
祐はふと疑問に思い当たる。
初めてイメチェンに付き合ってくれたとき、改札の中まで送ってくれたが、樹は入る必要はなかったのではないか。電車に乗らなくてもホームに入ってしまえばお金を取られたはずだ。数百円くらいの話だが。
その事を祐が口にすると、
「駅からそのままマンション入れるしついでです」
「今度は改札手前まででいいから」
祐が念を押すと樹は渋々といった様子で頷いた。
リア充なので送ってくれるのに慣れているのだろう。相手が女の子だったら基本的に家まで送ってくれるのかもしれない。
だが祐は女の子ではないし、数百円とは言え使わなくてもいいお金を使わせるのは申し訳ない。
「こっちです」
エレベーターが止まり、樹に続いて降りると樹の部屋に着くまでにちらほら住人とすれ違った。
普通に暮らしていたら都心のタワーマンションなど、祐が足を踏み入れることは到底なかっただろう。すれ違う他の住人も祐と関わりなさそうな雰囲気の人ばかりだ。スーツをびしっと決めている初老の男性がいると思えば、夜の香り漂う妖艶なお姉さんがにこっと微笑んでくれたりする。
とニコッと微笑まれれば、大抵休日の予定が真っ白な祐に断る理由はない。
むしろ自宅に誘われるのは新密度が増したようで嬉しい。
樹は気づかいがうまいので、祐のほうは一緒にいて気兼ねないし楽しく過ごせるが、樹と休日過ごしたい相手など引く手あまただろうし、その中の誰かのほうが一緒にいて楽しいのだろうと思うので、何故自分にこんなに構ってくれるのだろうとは不思議に思うが。
ほどなくすると樹の自宅マンションに到着した。マンションの地下にある駐車場に停めると、そのまま広いロビーに出る。荷物はさりげなく樹が持ってくれた。
シャンデリアに落ち着いた絵画。よく分からない壺などの置物。待ち合わせに休めそうなソファ。
奥行きがあり高級のある内装は、高級ホテルのロビーのようだ。
「千堂様、お帰りなさいませ」
「ただいま帰りました。お疲れ様っす」
コンシェルジュがうやうやしく挨拶してくれるのを慣れた様子で片手をあげて樹が応える。
すたすたと迷いなく樹がエレベーターに乗り込むのを小走りで祐も着いていく。
「何これ?千堂くん、僕と違う会社だった?」
「俺と会社で過ごした時間消去するとか小鳩さんひでぇ。確かに社内でそんな絡みないですけど」
けたけたと樹が笑う。
樹の自宅は会社に程近いタワーマンションだった。会社は都心にあるのでその近くのタワーマンションということは当然家賃も高いだろう。
「電車通勤嫌なので徒歩通勤できるとこにしました。終電逃したときのタクシーけっこーでかいし。
あと瀬奈じゃないけど、俺もセキュリティちゃんとしてないと色々面倒なんで」
軽い口調で言っているが、下手したら家賃は祐の給料半月、もしくは一月分くらいだと思われる。
女の子じゃなくてもイケメンはストーカーやらなにやらあるのかもしれない。祐には今後も縁のない苦労だと思われるが、イケメンも大変なのだろう。
「あれ?そういえば」
祐はふと疑問に思い当たる。
初めてイメチェンに付き合ってくれたとき、改札の中まで送ってくれたが、樹は入る必要はなかったのではないか。電車に乗らなくてもホームに入ってしまえばお金を取られたはずだ。数百円くらいの話だが。
その事を祐が口にすると、
「駅からそのままマンション入れるしついでです」
「今度は改札手前まででいいから」
祐が念を押すと樹は渋々といった様子で頷いた。
リア充なので送ってくれるのに慣れているのだろう。相手が女の子だったら基本的に家まで送ってくれるのかもしれない。
だが祐は女の子ではないし、数百円とは言え使わなくてもいいお金を使わせるのは申し訳ない。
「こっちです」
エレベーターが止まり、樹に続いて降りると樹の部屋に着くまでにちらほら住人とすれ違った。
普通に暮らしていたら都心のタワーマンションなど、祐が足を踏み入れることは到底なかっただろう。すれ違う他の住人も祐と関わりなさそうな雰囲気の人ばかりだ。スーツをびしっと決めている初老の男性がいると思えば、夜の香り漂う妖艶なお姉さんがにこっと微笑んでくれたりする。
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