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嫉妬
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カーナビで住所を設定しているので、佑と樹は中断することなく会話することができた。
都心では運転する機会はそうそうないと思っていたが、仕事や休日に乗ることが少なくないらしい。樹の運転は危なげのない慣れた運転だった。
「今さらなんですけど、こだわりあったならすみません。服とか色々口出ししちゃって」
「全然ないから大丈夫だよ。友達とかと約束あるだろうにありがとうね。貴重な休日を」
こだわりがあって千円カットに通う人間もそうそういないだろう。
それより交遊関係の広いであろう樹の休日を半日拘束してしまったのが申し訳ない。恐らくイケメンなのだから途切れなく彼女もいるだろう。
「それは気にしないでください。俺彼女も友達もいないので」
何事もないようにさらっと樹が言う。
「え、いやいや、それはウソでしょう」
会社でもだれとでも仲良くできるイケメンリア充な樹に友達がいないはずがない。彼女は時期によってはいないこともあるかもしれないが。
「本当です。ノリで誘える奴らは何人かいますけどね。彼女はできたこともないし」
「だから小鳩さんがひまなときは誘いにのってくれたら嬉しいです」と樹が続ける。
よく分からないが、リア充の世界と言うのも色々あるのだろう。
「僕でよければ大体大丈夫だよ」
「じゃまた誘います」
樹が地味な自分と一緒にいて楽しいのかは甚だ疑問だが、はにかむ樹を見るとお世辞でも嬉しい。
「まもなく目的地に到着します」
落ち着いた女性の声が祐の自宅が近いことを告げる。
「もうすぐですね」
もうすぐ祐とのこの時間が終わるのかと思うとなぜだか残念な気がした。月曜日には会社で会えるし、また樹から誘えば付き合ってくれるだろうが。
佑が嘘偽りのない、掛け値なしの良いひとなのはしばらく一緒にいるうちに分かった。基本的にそんな人間はいないと思っているから佑だけが特別なのだろう。
佑の正体を暴く、という建前がなくなった今、なぜ佑と一緒にいたくなるのかはまだ分からない。
「沢田さんちも一回だけ行ったけど近いんだよ。うちより駅近で築浅でいいマンションなんだ。管理人さんが常駐してて羨ましい。なんかあったらすぐ対応してもらえるし。
女の子はセキュリティよくないと心配だもんね」
佑の言葉に樹は自分がイライラしているのが分かった。
樹の胸中をしらない佑が「挨拶してもらえるのも嬉しいよねー。一人暮らしだといってらっしゃいとかおかえりなさいなんて言ってもらえないから」とのんびりした口調で続ける。
自分は大学生の頃から住んでいるアパートなので、管理人などいないのだと続けているのはもう耳に入らない。
祐が瀬奈のマンションに行ったことがある。
その事実が無性に腹が立った。腸が煮えくり返りそうだ。
そんな権利はないし、樹に嫉妬されるいわれはないと、分かっているのに。もちろん瀬奈も樹の彼女でもなんでもないのでとやかくいういわれはない。
「……気が変わりました」
助手席で祐がキョトンとしているのが分かるが、無視する。
「俺んち行きましょう。明日予定があるなら夜送ります」
都心では運転する機会はそうそうないと思っていたが、仕事や休日に乗ることが少なくないらしい。樹の運転は危なげのない慣れた運転だった。
「今さらなんですけど、こだわりあったならすみません。服とか色々口出ししちゃって」
「全然ないから大丈夫だよ。友達とかと約束あるだろうにありがとうね。貴重な休日を」
こだわりがあって千円カットに通う人間もそうそういないだろう。
それより交遊関係の広いであろう樹の休日を半日拘束してしまったのが申し訳ない。恐らくイケメンなのだから途切れなく彼女もいるだろう。
「それは気にしないでください。俺彼女も友達もいないので」
何事もないようにさらっと樹が言う。
「え、いやいや、それはウソでしょう」
会社でもだれとでも仲良くできるイケメンリア充な樹に友達がいないはずがない。彼女は時期によってはいないこともあるかもしれないが。
「本当です。ノリで誘える奴らは何人かいますけどね。彼女はできたこともないし」
「だから小鳩さんがひまなときは誘いにのってくれたら嬉しいです」と樹が続ける。
よく分からないが、リア充の世界と言うのも色々あるのだろう。
「僕でよければ大体大丈夫だよ」
「じゃまた誘います」
樹が地味な自分と一緒にいて楽しいのかは甚だ疑問だが、はにかむ樹を見るとお世辞でも嬉しい。
「まもなく目的地に到着します」
落ち着いた女性の声が祐の自宅が近いことを告げる。
「もうすぐですね」
もうすぐ祐とのこの時間が終わるのかと思うとなぜだか残念な気がした。月曜日には会社で会えるし、また樹から誘えば付き合ってくれるだろうが。
佑が嘘偽りのない、掛け値なしの良いひとなのはしばらく一緒にいるうちに分かった。基本的にそんな人間はいないと思っているから佑だけが特別なのだろう。
佑の正体を暴く、という建前がなくなった今、なぜ佑と一緒にいたくなるのかはまだ分からない。
「沢田さんちも一回だけ行ったけど近いんだよ。うちより駅近で築浅でいいマンションなんだ。管理人さんが常駐してて羨ましい。なんかあったらすぐ対応してもらえるし。
女の子はセキュリティよくないと心配だもんね」
佑の言葉に樹は自分がイライラしているのが分かった。
樹の胸中をしらない佑が「挨拶してもらえるのも嬉しいよねー。一人暮らしだといってらっしゃいとかおかえりなさいなんて言ってもらえないから」とのんびりした口調で続ける。
自分は大学生の頃から住んでいるアパートなので、管理人などいないのだと続けているのはもう耳に入らない。
祐が瀬奈のマンションに行ったことがある。
その事実が無性に腹が立った。腸が煮えくり返りそうだ。
そんな権利はないし、樹に嫉妬されるいわれはないと、分かっているのに。もちろん瀬奈も樹の彼女でもなんでもないのでとやかくいういわれはない。
「……気が変わりました」
助手席で祐がキョトンとしているのが分かるが、無視する。
「俺んち行きましょう。明日予定があるなら夜送ります」
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