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砂糖と嘘
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樹に連れられ、美容院に行ってから一か月。
佑のイメチェンは家族にも会社の人たちにも好評だった。特にメガネがよろしくなかったらしい。
佑自身はファッションに無頓着なので、前とそこまで違いがあるのか分からなかったが。
始業時間前にお茶を持ってきた瀬奈に、イメチェンのきっかけを聞かれ、
「千堂君が面倒を見てくれて、今度の土曜日は服も見立ててくれるんだ」
樹は基本的に忙しく、接待や休日出勤も珍しくなく、終業時間に帰宅というのはほぼないらしい。
そんな貴重な時間を佑に充ててくれたと知って「千堂君は親切だなぁ」と呑気に思っていた気持ちに申し訳なさが加わった。
今度の予定を樹が言いだしてきたときも「せっかくの休日に申し訳ないから」と断ったが、「小鳩さんはオレと休日まで顔つき合わすのが嫌ってことですね」と寂しそうに言われると無下にすることはできなかった。
ちなみに先日連絡先を交換し、一日一回くらいは少なくともスタンプが送られてくる。
部署が違うため顔を合わせることが今まで通りほとんどないが、毎日のようにやり取りしているため、以前より樹を身近に感じている。
佑は基本的に家族や友人と事務的なやり取りしかしないので、樹が「今日は蟹座が1位でした!」など意味のない文面を送ってくるのは戸惑う反面嬉しいものだった。「よかったね」など面白味のない返信しかできず申し訳ないので、祐もたまにスタンプを送っている。
アイラインをくっきりひいて、丁寧にマスカラを塗ったまつげに縁どられた目がなぜかきらっと光った。
「俺色に染めたい的な?」
「え?」
意味が分からず聞き返すと、慌てたようにぱたぱた顔の前で手を振る。
「なんでもないです」
そしてよく分からないままランチに誘われ、話を聞いていた隣の席の同期高田も図々しくついてきた。
カフェに行き、勝手が分からなかったが、瀬奈が面倒みよく高田と佑に日替わりランチを注文してくれた。
瀬奈はこのカフェの名物のパンケーキを頼んでいた。量が多いため、一人では食べきれないらしく、残りは高田が引き取るらしい。
なぜか瀬奈は樹と出かけた日の詳細が聞きたかったらしかった。
何が楽しいのだろうと思いながらも話していると、瀬奈は前のめりになって聞いていた。
特に食いついてきたのが、前のメガネを返してくれず、腕を組まされてメガネ屋に向かったというところだ。
「視界が悪いとくっついてもらえますもんね。ふふ。さりげなく車道側になるのもポイント高いです。さすが樹先輩」
瀬奈は終始ご満悦で、「服を買いに行った話も聞かせてくださいねっ」と来週のランチを約束させられた。
「うん。別にいいけど。
……高田聞いてて楽しい?」
瀬奈のハイテンションぶりに若干引きながら、他人が聞くと面白いのだろうかと高田に聞くと、
「全然」
日替わりのハンバーグをナイフで切りながらつまらなそうに答えた。
話がつまらないのもさることながら、せっかく高嶺の花の瀬奈とランチにこぎつけたのに(佑がいるが)、肝心の瀬奈は佑の話に夢中なのも気に食わないのだろう。
一通り聞いて満足したらしい瀬奈が、そのあとは佑と高田に平等に話を振ってくれ、ご機嫌が戻ったが。
佑のイメチェンは家族にも会社の人たちにも好評だった。特にメガネがよろしくなかったらしい。
佑自身はファッションに無頓着なので、前とそこまで違いがあるのか分からなかったが。
始業時間前にお茶を持ってきた瀬奈に、イメチェンのきっかけを聞かれ、
「千堂君が面倒を見てくれて、今度の土曜日は服も見立ててくれるんだ」
樹は基本的に忙しく、接待や休日出勤も珍しくなく、終業時間に帰宅というのはほぼないらしい。
そんな貴重な時間を佑に充ててくれたと知って「千堂君は親切だなぁ」と呑気に思っていた気持ちに申し訳なさが加わった。
今度の予定を樹が言いだしてきたときも「せっかくの休日に申し訳ないから」と断ったが、「小鳩さんはオレと休日まで顔つき合わすのが嫌ってことですね」と寂しそうに言われると無下にすることはできなかった。
ちなみに先日連絡先を交換し、一日一回くらいは少なくともスタンプが送られてくる。
部署が違うため顔を合わせることが今まで通りほとんどないが、毎日のようにやり取りしているため、以前より樹を身近に感じている。
佑は基本的に家族や友人と事務的なやり取りしかしないので、樹が「今日は蟹座が1位でした!」など意味のない文面を送ってくるのは戸惑う反面嬉しいものだった。「よかったね」など面白味のない返信しかできず申し訳ないので、祐もたまにスタンプを送っている。
アイラインをくっきりひいて、丁寧にマスカラを塗ったまつげに縁どられた目がなぜかきらっと光った。
「俺色に染めたい的な?」
「え?」
意味が分からず聞き返すと、慌てたようにぱたぱた顔の前で手を振る。
「なんでもないです」
そしてよく分からないままランチに誘われ、話を聞いていた隣の席の同期高田も図々しくついてきた。
カフェに行き、勝手が分からなかったが、瀬奈が面倒みよく高田と佑に日替わりランチを注文してくれた。
瀬奈はこのカフェの名物のパンケーキを頼んでいた。量が多いため、一人では食べきれないらしく、残りは高田が引き取るらしい。
なぜか瀬奈は樹と出かけた日の詳細が聞きたかったらしかった。
何が楽しいのだろうと思いながらも話していると、瀬奈は前のめりになって聞いていた。
特に食いついてきたのが、前のメガネを返してくれず、腕を組まされてメガネ屋に向かったというところだ。
「視界が悪いとくっついてもらえますもんね。ふふ。さりげなく車道側になるのもポイント高いです。さすが樹先輩」
瀬奈は終始ご満悦で、「服を買いに行った話も聞かせてくださいねっ」と来週のランチを約束させられた。
「うん。別にいいけど。
……高田聞いてて楽しい?」
瀬奈のハイテンションぶりに若干引きながら、他人が聞くと面白いのだろうかと高田に聞くと、
「全然」
日替わりのハンバーグをナイフで切りながらつまらなそうに答えた。
話がつまらないのもさることながら、せっかく高嶺の花の瀬奈とランチにこぎつけたのに(佑がいるが)、肝心の瀬奈は佑の話に夢中なのも気に食わないのだろう。
一通り聞いて満足したらしい瀬奈が、そのあとは佑と高田に平等に話を振ってくれ、ご機嫌が戻ったが。
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