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番外編
ある休日2
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いつも感じることだが、樹と並んでいると女性の視線をやたらと感じる。
遅めの朝食をすませてから、樹と佑はマンションの中にあるスーパーにやってきていた。
日曜日の昼前という時間帯から家族連れが多い。
年頃の女の子なら分かるが、樹が凄いのは下は3,4歳の幼児から上は60歳前後と思われるマダムまでカバーしていることだ。カップルや夫婦であっても樹を見ているため、男のほうはかなり不機嫌そうにしている。それは樹のせいではないが。
樹は慣れていて平然としているが佑はまだ慣れない。
(隣に並んでいるのがこんなのですみません……)
樹と並んでいるのが美女とかイケメンでない自分だということに恐縮してしまう。
二人でカートを押しながらメニューを相談しながら買い物していると、新婚さんのようだ。男同士である自分たちには、そんな日はきっと訪れないのだろうけれど。
ちなみにカートは樹が押してくれている。
「佑」
委縮しながら歩いていると、ぐいと樹に肩を引き寄せられた。
「昼はパスタとか軽いものでいいよな?で、夜は和食」
「うん。それでいいよ」
だがそれはわざわざ肩を引き寄せて言うことだろうか。
訝し気な顔になっていたのだろう樹が小さく笑う。
「だってあんたすげー周りのこと気にしてるから。オレのこと気にしてよ」
「ありがとう。でも僕樹のことはいつも気になってるよ」
本当のことだ。佑はいつも樹が気になっている。
一緒にいれば何もされなくてもドキドキさせられているし、離れていれば可愛い女の子に色目を使われていないかと気になってしまう。
というかこんなにイケメンな彼氏ができたら気にならないはずはない。
はぁ、とため息をついた樹がふいっと顔を背けた。
「佑ってさらっとそういうこと言う」
怒らせただろうか、と心配になったが顔を背けたのは一瞬だけですぐいつも通りの笑顔を佑に向けた。
「晩飯何がいい?魚?」
佑が肉より魚派だというのを覚えていてくれたのが嬉しい。
だが樹は肉が好きだったはず。そう伝えると、
「今日は佑が好きなもの作りたいから魚にする」
「じゃあ僕は樹の食べたいの作りたいから横で肉料理作る」
「……もう」
「わっ」
いきなり樹の唇が首に触れて佑は思わず声をあげた。幸いすぐ離れたが、顔は赤くなっているだろう。
樹がよろけただけ、と思われていると思いたい。
「ちょっと!何してるの」
小声で文句を言うと、なぜか樹はむすっとした。
「むしろオレの理性を褒めてほしいくらいだけど」
「はぁ?」
理性を押しとどめた人間が真っ昼間の日曜日のスーパーで首にとはいえ、キスをすると言うのか。
「……口にキスするの我慢したんだよ?
それに家でそんな可愛いこと言われたらすぐさま寝室に連れ込んだ」
耳元で囁かれて佑はまた赤くなった。そんな佑を見てクスクス笑っているのがまた腹が立つ。
わざと甘えた口調で首をかしげてくる。
一般的に男がすると気持ちが悪い仕草だと思うが、樹がすると可愛い。イケメンだからなのか、単に惚れた弱みなのだろうか。
「オレ豚の角煮食べたいです。ね?佑先輩」
「また変な時に後輩ぶる……」
だが、基本的に先輩ぶりたい佑は甘えられると弱い。
「作れるよ」
「やったー♪じゃ大根とー、卵も入れてくださいね?佑先輩」
「いつまで続くの後輩プレイ……」
可愛いけど。という言葉は飲み込む。
言うと調子に乗るのが分かっているからだ。
遅めの朝食をすませてから、樹と佑はマンションの中にあるスーパーにやってきていた。
日曜日の昼前という時間帯から家族連れが多い。
年頃の女の子なら分かるが、樹が凄いのは下は3,4歳の幼児から上は60歳前後と思われるマダムまでカバーしていることだ。カップルや夫婦であっても樹を見ているため、男のほうはかなり不機嫌そうにしている。それは樹のせいではないが。
樹は慣れていて平然としているが佑はまだ慣れない。
(隣に並んでいるのがこんなのですみません……)
樹と並んでいるのが美女とかイケメンでない自分だということに恐縮してしまう。
二人でカートを押しながらメニューを相談しながら買い物していると、新婚さんのようだ。男同士である自分たちには、そんな日はきっと訪れないのだろうけれど。
ちなみにカートは樹が押してくれている。
「佑」
委縮しながら歩いていると、ぐいと樹に肩を引き寄せられた。
「昼はパスタとか軽いものでいいよな?で、夜は和食」
「うん。それでいいよ」
だがそれはわざわざ肩を引き寄せて言うことだろうか。
訝し気な顔になっていたのだろう樹が小さく笑う。
「だってあんたすげー周りのこと気にしてるから。オレのこと気にしてよ」
「ありがとう。でも僕樹のことはいつも気になってるよ」
本当のことだ。佑はいつも樹が気になっている。
一緒にいれば何もされなくてもドキドキさせられているし、離れていれば可愛い女の子に色目を使われていないかと気になってしまう。
というかこんなにイケメンな彼氏ができたら気にならないはずはない。
はぁ、とため息をついた樹がふいっと顔を背けた。
「佑ってさらっとそういうこと言う」
怒らせただろうか、と心配になったが顔を背けたのは一瞬だけですぐいつも通りの笑顔を佑に向けた。
「晩飯何がいい?魚?」
佑が肉より魚派だというのを覚えていてくれたのが嬉しい。
だが樹は肉が好きだったはず。そう伝えると、
「今日は佑が好きなもの作りたいから魚にする」
「じゃあ僕は樹の食べたいの作りたいから横で肉料理作る」
「……もう」
「わっ」
いきなり樹の唇が首に触れて佑は思わず声をあげた。幸いすぐ離れたが、顔は赤くなっているだろう。
樹がよろけただけ、と思われていると思いたい。
「ちょっと!何してるの」
小声で文句を言うと、なぜか樹はむすっとした。
「むしろオレの理性を褒めてほしいくらいだけど」
「はぁ?」
理性を押しとどめた人間が真っ昼間の日曜日のスーパーで首にとはいえ、キスをすると言うのか。
「……口にキスするの我慢したんだよ?
それに家でそんな可愛いこと言われたらすぐさま寝室に連れ込んだ」
耳元で囁かれて佑はまた赤くなった。そんな佑を見てクスクス笑っているのがまた腹が立つ。
わざと甘えた口調で首をかしげてくる。
一般的に男がすると気持ちが悪い仕草だと思うが、樹がすると可愛い。イケメンだからなのか、単に惚れた弱みなのだろうか。
「オレ豚の角煮食べたいです。ね?佑先輩」
「また変な時に後輩ぶる……」
だが、基本的に先輩ぶりたい佑は甘えられると弱い。
「作れるよ」
「やったー♪じゃ大根とー、卵も入れてくださいね?佑先輩」
「いつまで続くの後輩プレイ……」
可愛いけど。という言葉は飲み込む。
言うと調子に乗るのが分かっているからだ。
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