年下彼氏の策略

水無瀬雨音

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お風呂

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「お風呂!お風呂に入らせて!」
 樹なら気にならないが、自分のことは気になる。すること自体は嫌ではないが、綺麗な体でむかえたい。
「風呂ぉ?」
 佑の胸のとがりをつまみながら、樹が嫌そうに顔をしかめる。
「んん……っ。僕汗かいてるし……」
「オレ気にしないけど?」
「僕が気になるの!お願いします」
 しばらく黙っていた樹はおとなしく了承した。
「分かった」
 佑はすぐさま立ち上がり、浴槽に湯をはり始める。手早くシャワーで済ませたいところだが、今夜も寒い。その間にと歯磨きをしていると、樹も隣に並んできた。
「予備の歯ブラシある?」
「どうぞ」
 新しい歯ブラシの袋を破いて樹に差し出す。樹も歯磨き粉をつけて磨き始めた。
 二人並んで歯磨きしているとなんだが、

「同棲してるみたいだな」

「!」
 樹は佑が想像していたことと同じことを言った。
「オレはいつでもいいから」
 冗談なのか本気なのか樹がウインクしてきた。
「ええと、あの……。それはそのうち……」
 冗談として流そうかと思ったが、佑はしどろもどろで答えるのが精いっぱいだった。


 歯磨きを終えて浴槽を覗くと、そこそこ溜まっていた。あとは体を洗ったりしているうちに適正量に溜まるだろう。
「あの、僕そろそろお風呂入るけど」
 歯磨きを終えても出て行かない樹にさりげなく退室を促す。
 だが樹は一向に退室しなかった。
「どうぞ?風呂入るならそうだよな。オレも脱ぐし」
「なんで樹も脱ぐの?」
「なんでって一緒に入るし」
「え?樹も入るなら僕後でいいから」
 出て行こうとした腕をつかまれる。
「オレは早く触りたい。佑は風呂に入りたい。じゃあ一緒に入れば解決だろ」
「そう、かな?」
 なんとなく言いくるめられた気がする。
「佑も納得したところでじゃ、脱いで。オレが脱がせようか?」
「自分で脱ぎます……」
「あー泡風呂の入浴剤買って来ればよかった。買っておくから今度一緒に入ろ、佑」
「あ、泡風呂!?」
 女の子や男女のカップルが使うのには違和感がなさそうだが、……それは男同士で使うものなんだろうか。
 脱いだスーツを丁寧にたたんで脱衣かごに入れる。緩慢な動きながらも順調に脱いでいた佑だったが、上半身が裸になったところで動きを止める。
「やっぱオレが脱がせようか?」
衣服を取り去った樹が、佑をじろじろ眺める。
「だ、大丈夫!」
 ズボンを脱ぎパンツに手をかけて佑はゆっくりと脱いだ。
「……うう」
 電気がついた中、見られながら服を脱ぐというのはかなりの羞恥を伴うものなのだ、と佑は初めて知った。
「あんまり……見ないで」
 自分のだらんとした貧相なものを手で隠す。
「どうせ後で見るんだけど?」
 樹はからかうような口調で言ったが、無理に見ようとはしなかった。もちろん樹は隠していない。それだけ立派なら隠す必要はない。むしろ自慢したいだろう、と佑はうらやましく思う。
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