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バレンタインの予定
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「もうすぐさー何があるか分かってる?」
「ん?新年会は終わったし。……分からない。あ、もしかして樹の誕生日?」
「違う。オレの誕生日は5月。佑は?」
「僕は9月。樹の誕生日のほうが先だね」
「そだなー。て、そうじゃなくて。もうすぐバレンタインじゃん。くれるよね?」
確かに恋人たちの一大イベントではあるけれど、少なくとも日本では女性から男性にチョコをあげる、というのが一般的だ。
男性同士でも交換し合うものなのだろうか。
「でも女の子からいくらでももらえるよね。樹は」
去年のバレンタインでは樹と親しくなかったが、それでも社内の女の子たちがそわそわして我先にと樹に渡しているところを何回か目撃した。
「もらってねーもん。お返しとかめんどくせーし、市販品だって何入ってるか怪しいから返してる。手作りなんか最悪」
「可哀想じゃない?そんな言い方」
もちろん佑は思い人にチョコを渡した覚えはないが、女の子たちがどんなに勇気を出して樹にチョコを差し出したか想像くらいはできる。
「可哀想?」
樹の目が鋭くなった。
「こっちの気持ちもお構いなしに自分の気持ち押し付けてくんのが?ろくに話したことない女のなんかマジで怖くてもらえない。物は物で盗聴器とか隠しカメラとか仕込んでくるしね、やつら」
非リア充の佑ではこれから先も縁がないだろう苦労があったのだろう。樹は苦々しい顔で吐き捨てるように言った。
「えーと、ごめんね?僕知らないのにあんなこと言って」
「いいよ。別に。
佑からだけはほしい。だからちょうだい」
抱き着いてきた樹が甘えるような口調で言って、肩口に鼻先を押し付けてくる。
珍しく甘えてくる樹は可愛いし、求められるならあげたい。だが、
「チョコ売り場に行くのはハードル高いです」
女の子がひしめいているであろうチョコ売り場で男一人で買い物するのはかなりハードルが高い。注目されるのは確実だ。どうしてもというのなら瀬奈に頼んで一緒に行ってもらうが。
「じゃー板チョコでも買ってなんか作ってよ。あ、オレ甘いの苦手だからビターでよろしく」
「手作り、嫌なんじゃないの?」
「佑の作ったものはむしろ食いたい。佑は特別だから。こんだけ料理食わせといて今さら何言ってんの」
「それはそうか」
樹の特別という言葉に優越感を感じた。
「お菓子はあんまり作らないんだけど、頑張る」
「よろしく。ホワイトデーはオレがなんかあげるから」
嬉しそうに笑った樹の手が、佑のシャツの裾をズボンから出して、する、と中に侵入する。
「わ!何?」
「お腹はいっぱいになったから、そろそろ佑をください」
「ん?新年会は終わったし。……分からない。あ、もしかして樹の誕生日?」
「違う。オレの誕生日は5月。佑は?」
「僕は9月。樹の誕生日のほうが先だね」
「そだなー。て、そうじゃなくて。もうすぐバレンタインじゃん。くれるよね?」
確かに恋人たちの一大イベントではあるけれど、少なくとも日本では女性から男性にチョコをあげる、というのが一般的だ。
男性同士でも交換し合うものなのだろうか。
「でも女の子からいくらでももらえるよね。樹は」
去年のバレンタインでは樹と親しくなかったが、それでも社内の女の子たちがそわそわして我先にと樹に渡しているところを何回か目撃した。
「もらってねーもん。お返しとかめんどくせーし、市販品だって何入ってるか怪しいから返してる。手作りなんか最悪」
「可哀想じゃない?そんな言い方」
もちろん佑は思い人にチョコを渡した覚えはないが、女の子たちがどんなに勇気を出して樹にチョコを差し出したか想像くらいはできる。
「可哀想?」
樹の目が鋭くなった。
「こっちの気持ちもお構いなしに自分の気持ち押し付けてくんのが?ろくに話したことない女のなんかマジで怖くてもらえない。物は物で盗聴器とか隠しカメラとか仕込んでくるしね、やつら」
非リア充の佑ではこれから先も縁がないだろう苦労があったのだろう。樹は苦々しい顔で吐き捨てるように言った。
「えーと、ごめんね?僕知らないのにあんなこと言って」
「いいよ。別に。
佑からだけはほしい。だからちょうだい」
抱き着いてきた樹が甘えるような口調で言って、肩口に鼻先を押し付けてくる。
珍しく甘えてくる樹は可愛いし、求められるならあげたい。だが、
「チョコ売り場に行くのはハードル高いです」
女の子がひしめいているであろうチョコ売り場で男一人で買い物するのはかなりハードルが高い。注目されるのは確実だ。どうしてもというのなら瀬奈に頼んで一緒に行ってもらうが。
「じゃー板チョコでも買ってなんか作ってよ。あ、オレ甘いの苦手だからビターでよろしく」
「手作り、嫌なんじゃないの?」
「佑の作ったものはむしろ食いたい。佑は特別だから。こんだけ料理食わせといて今さら何言ってんの」
「それはそうか」
樹の特別という言葉に優越感を感じた。
「お菓子はあんまり作らないんだけど、頑張る」
「よろしく。ホワイトデーはオレがなんかあげるから」
嬉しそうに笑った樹の手が、佑のシャツの裾をズボンから出して、する、と中に侵入する。
「わ!何?」
「お腹はいっぱいになったから、そろそろ佑をください」
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