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二章 スピード婚と結婚生活
里帰り2
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「ここがプリシラ様が育ったところですかー。素敵ですね」
「そうでしょう? もうすぐ麦の収穫ね」
風になびく黄金色の麦がきれいだ。
馬車に揺られながら、フェンリルと並んで窓から外を眺めていた。
ちなみにフェンリルはいつものメイド服ではなく、お出かけ用のドレス。アンセル様が新調してくれたものだ。さすがアンセル様優しい。私もいっしょに新調してもらって、同じデザインの色違いだ。
一緒に袖を通したとき、お揃いが嬉しくて手を取り合った。姉妹がいないので経験がないのだけれど、もしいたらこんな感じなのかなぁと思った。
時折気づいた領民が挨拶してくれるので、私も手を振り返す。
実家を離れてさほどたっていないのに、もうすでに懐かしい。
ほどなくして屋敷に着いた。
ウォルトを始めとした使用人たちが、玄関の前で出迎えてくれる。わざわざ待っていてくれたらしい。
私は急いで飛び降りると、彼らにかけよった。一緒に屋敷の中に入る。
「久しぶりー! 皆元気にしてた?」
「プリシラ様もお元気そうですね」
アンセル様のお屋敷の使用人にもよくしてもらっているんだけど、やっぱり慣れ親しんだ実家はいいなぁー。
使用人たちと再会を喜んでいると、少し間を開けてフェンリルも馬車から降りてきた。
「初めまして。プリシラ様付のフェンリルです。しばらくお世話になります。何かありましたら、なんなりとお申し付けくださいませ。掃除でも洗濯でも料理でも」
丁寧に頭を下げるフェンリル。
「まぁ。お客さまですもの。何もさせられませんわ」
「ただ漫然と過ごすのは退屈ですし申し訳なくて。ああ、私の働いている屋敷とのやり方の違いに興味があります。良かったら見せていただいても?」
「私たちも興味がありますわ。教えていただいても?」
「ええもちろんです」
「じゃ、行きましょう」
フェンリルは使用人たちと意気投合したらしい。キャッキャウフフしながら、歩いて行く。
あっちはー……洗濯室ね。
勉強熱心で感心するわ。
後に残ったウォルトが、にこやかに微笑む。
「お嬢様。ああ、もう奥さまですね。不自由はありませんか? ああ、お荷物お運びします。お部屋で休まれますか?」
ウォルトに奥さまと呼ばれるのを、照れくさく感じながら、
「不自由なんか、何もないわよ。よくしてくださっているもの。そうね。とりあえず部屋で休むわ」
「そうですか。よくしていただいているのなら、よかったです」
部屋に向かう私の後を、ウォルトが荷物を持ってついてきてくれる。
「こっちも変わりない?」
「ええ。アンセル様が、伯爵の仕事も完璧にしてくださっているので問題ありません。むしろ効率的な収穫方法を考案してくださったりして、収益は伸びているくらいです」
「さすがね」
さすがアンセル様。事業のかたわらで伯爵の仕事も完璧にこなすなんて。
部屋について、ウォルトが荷物を下ろす。
「片づけるのはわたしがするわ」
さすがに気心しれたウォルトとはいえ、荷物を見られるのは気が引ける。
「かしこまりました。お茶をお持ちしましょうか?」
「ええ。よろしく。お菓子はいらないわ」
「ではプリシラ様。何かございましたらお申し付けくださいませ」
一旦部屋を出て行ったウォルトが、お茶の用意をして再び退室した。
久しぶりのウォルトのお茶をゆっくり飲み終わった私は、「さて」と立ち上がった。
家探しの開始だ。自分の実家だけれど。
「そうでしょう? もうすぐ麦の収穫ね」
風になびく黄金色の麦がきれいだ。
馬車に揺られながら、フェンリルと並んで窓から外を眺めていた。
ちなみにフェンリルはいつものメイド服ではなく、お出かけ用のドレス。アンセル様が新調してくれたものだ。さすがアンセル様優しい。私もいっしょに新調してもらって、同じデザインの色違いだ。
一緒に袖を通したとき、お揃いが嬉しくて手を取り合った。姉妹がいないので経験がないのだけれど、もしいたらこんな感じなのかなぁと思った。
時折気づいた領民が挨拶してくれるので、私も手を振り返す。
実家を離れてさほどたっていないのに、もうすでに懐かしい。
ほどなくして屋敷に着いた。
ウォルトを始めとした使用人たちが、玄関の前で出迎えてくれる。わざわざ待っていてくれたらしい。
私は急いで飛び降りると、彼らにかけよった。一緒に屋敷の中に入る。
「久しぶりー! 皆元気にしてた?」
「プリシラ様もお元気そうですね」
アンセル様のお屋敷の使用人にもよくしてもらっているんだけど、やっぱり慣れ親しんだ実家はいいなぁー。
使用人たちと再会を喜んでいると、少し間を開けてフェンリルも馬車から降りてきた。
「初めまして。プリシラ様付のフェンリルです。しばらくお世話になります。何かありましたら、なんなりとお申し付けくださいませ。掃除でも洗濯でも料理でも」
丁寧に頭を下げるフェンリル。
「まぁ。お客さまですもの。何もさせられませんわ」
「ただ漫然と過ごすのは退屈ですし申し訳なくて。ああ、私の働いている屋敷とのやり方の違いに興味があります。良かったら見せていただいても?」
「私たちも興味がありますわ。教えていただいても?」
「ええもちろんです」
「じゃ、行きましょう」
フェンリルは使用人たちと意気投合したらしい。キャッキャウフフしながら、歩いて行く。
あっちはー……洗濯室ね。
勉強熱心で感心するわ。
後に残ったウォルトが、にこやかに微笑む。
「お嬢様。ああ、もう奥さまですね。不自由はありませんか? ああ、お荷物お運びします。お部屋で休まれますか?」
ウォルトに奥さまと呼ばれるのを、照れくさく感じながら、
「不自由なんか、何もないわよ。よくしてくださっているもの。そうね。とりあえず部屋で休むわ」
「そうですか。よくしていただいているのなら、よかったです」
部屋に向かう私の後を、ウォルトが荷物を持ってついてきてくれる。
「こっちも変わりない?」
「ええ。アンセル様が、伯爵の仕事も完璧にしてくださっているので問題ありません。むしろ効率的な収穫方法を考案してくださったりして、収益は伸びているくらいです」
「さすがね」
さすがアンセル様。事業のかたわらで伯爵の仕事も完璧にこなすなんて。
部屋について、ウォルトが荷物を下ろす。
「片づけるのはわたしがするわ」
さすがに気心しれたウォルトとはいえ、荷物を見られるのは気が引ける。
「かしこまりました。お茶をお持ちしましょうか?」
「ええ。よろしく。お菓子はいらないわ」
「ではプリシラ様。何かございましたらお申し付けくださいませ」
一旦部屋を出て行ったウォルトが、お茶の用意をして再び退室した。
久しぶりのウォルトのお茶をゆっくり飲み終わった私は、「さて」と立ち上がった。
家探しの開始だ。自分の実家だけれど。
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