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番外編 ランバートからのお返し
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「お帰りなさい、ランバート」
帰宅したランバートを玄関で出迎えると、
「ただいま。はい、これ。エリオノール」
手に持っていた包みを渡された。
「ありがとう!」
ランバートは傍にいた執事にカバンを渡し、寝室へと向かう。その後をエリオノールもついていく。
寝室に入ると、着替えを始めるランバートの横をしり目に、エリオノールはソファーに腰かけると包みをほどいていく。直視するのは無理だが、近くで着替えられても平然とできる程度には慣れた。
中に入っていたのは飴とネックレスだった。小さなダイヤモンドがついており、シンプルで可愛らしい。
「可愛い! ありがとう」
「気に入った? つけようか?」
「うん」
着替えを終えたランバートが隣に腰かけ、エリオノールの首につけてくれる。
「嬉しいんだけど、どうしたの?」
結婚記念日でもエリオノールの誕生日でもない。何かの記念日だとしたら、何も用意していないので気まずい。忘れていたとして怒るランバートではないが。
何の日でもなくてもたまにプレゼントをくれるが、アクセサリーはわりと珍しい。エリオノールの好みがあるだろうから、とランバートが選んだものを渡すことはあまりないからだ。
「今日ホワイトデーだろ」
「そうだっけ? 気づかなかった。ていうか! もうちょっと渡し方にサプライズとか、何かあるでしょ!?」
嬉しいけれども。せっかくのイベントなのに。エリオノールだって渡し方にサプライズも何もなかったから、人のことは言えないのだけれど。
「そういうの苦手なんだ。渡し方がどうでも、中身は同じだろ」
「まああなたがそういう人なのは知ってるけど」
確かにランバートの言う通りだし、嬉しいことには変わりがないが、なんというかドライだ。
「来年もバレンタイン渡すわね。……来年はもう少し練習してましなもの渡すわ」
「君が作ったものならなんでも食べるけど? さすがに死にそうなものは遠慮するけど」
「失礼ね! 元々の材料は食べ物なんだし、わたしが手を加えた程度でさすがに劇物にはならないわよ。……多分」
エリオノールは飴の包みを一つ手に取って口に放り込んだ。甘くておいしい。
「んー、美味しい!」
顔をほころばせるエリオノールを、ランバートがほほえましく見つめている。
「ランバート」
「うん」
「好きよ」
エリオノールは、ランバートの首元に手を回した。ランバートが口を開く前にその唇を塞いで、舌先で飴を彼の口の中に押し込んだ。
「おすそわけよ。美味しい?」
「……まあまあかな」
微笑んだランバートは、エリオノールの口を塞ぎ返した。
★★★
ホワイトデーに遅刻しました!ランバートは意味を分かっていて贈っていますが、エリオノールは気づいていません。
このまま仲良く暮らしてほしいですね。
帰宅したランバートを玄関で出迎えると、
「ただいま。はい、これ。エリオノール」
手に持っていた包みを渡された。
「ありがとう!」
ランバートは傍にいた執事にカバンを渡し、寝室へと向かう。その後をエリオノールもついていく。
寝室に入ると、着替えを始めるランバートの横をしり目に、エリオノールはソファーに腰かけると包みをほどいていく。直視するのは無理だが、近くで着替えられても平然とできる程度には慣れた。
中に入っていたのは飴とネックレスだった。小さなダイヤモンドがついており、シンプルで可愛らしい。
「可愛い! ありがとう」
「気に入った? つけようか?」
「うん」
着替えを終えたランバートが隣に腰かけ、エリオノールの首につけてくれる。
「嬉しいんだけど、どうしたの?」
結婚記念日でもエリオノールの誕生日でもない。何かの記念日だとしたら、何も用意していないので気まずい。忘れていたとして怒るランバートではないが。
何の日でもなくてもたまにプレゼントをくれるが、アクセサリーはわりと珍しい。エリオノールの好みがあるだろうから、とランバートが選んだものを渡すことはあまりないからだ。
「今日ホワイトデーだろ」
「そうだっけ? 気づかなかった。ていうか! もうちょっと渡し方にサプライズとか、何かあるでしょ!?」
嬉しいけれども。せっかくのイベントなのに。エリオノールだって渡し方にサプライズも何もなかったから、人のことは言えないのだけれど。
「そういうの苦手なんだ。渡し方がどうでも、中身は同じだろ」
「まああなたがそういう人なのは知ってるけど」
確かにランバートの言う通りだし、嬉しいことには変わりがないが、なんというかドライだ。
「来年もバレンタイン渡すわね。……来年はもう少し練習してましなもの渡すわ」
「君が作ったものならなんでも食べるけど? さすがに死にそうなものは遠慮するけど」
「失礼ね! 元々の材料は食べ物なんだし、わたしが手を加えた程度でさすがに劇物にはならないわよ。……多分」
エリオノールは飴の包みを一つ手に取って口に放り込んだ。甘くておいしい。
「んー、美味しい!」
顔をほころばせるエリオノールを、ランバートがほほえましく見つめている。
「ランバート」
「うん」
「好きよ」
エリオノールは、ランバートの首元に手を回した。ランバートが口を開く前にその唇を塞いで、舌先で飴を彼の口の中に押し込んだ。
「おすそわけよ。美味しい?」
「……まあまあかな」
微笑んだランバートは、エリオノールの口を塞ぎ返した。
★★★
ホワイトデーに遅刻しました!ランバートは意味を分かっていて贈っていますが、エリオノールは気づいていません。
このまま仲良く暮らしてほしいですね。
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退会済ユーザのコメントです
お気に召していただいて嬉しいです。古い作品でも感想いただけるとありがたいです。お読みいただきありがとうございました(*´ω`*)
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めちゃくちゃ面白いです!!頑張ってくださいm(*_ _)m
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