後継社長奮闘す

tathufuntou

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第五章 稼げる体質へ転換する

3高モデルを考える

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達社長が大好きだった
名捕手であり、名監督
故野村克也氏の言葉がある。

それが
「負けに不思議の負けなし、
しかし、勝ちに不思議あり」

達社長、
経営の世界でも同じ事が
当てはまると考えている。

すなわち、
「業績低迷に不思議なし」
である。

業績低迷を利益視点で
打破するヒント、それが
税理士の所長先生が提唱される

「3高モデルへの挑戦」だ。

3高とは、
高速(回転)で経営する
高粗利(率)を軸にする
高安定(リピート)型をつくり込む

である。

第一が、高速すなわち、
回転の早い経営である。

一般的に高速とは
「投資回収を速く」
である。

もちろん、額面通り、
投資したものを出来るだけ
速く回収することは極めて大切だ。

観光や外食施設など
投資過剰による回収不足で
人気がありながら、倒産に
追い込まれることも少なくない
ようだ。

しかし、税理士の所長先生は、
「短納期」こそが、
ここで言う「高速」を意味し、
しかもそれが、中小企業が
生きる道の一つだと、
常日頃語っている。

ある、建築部品を扱う商社は
商社ながら経常利益率が
実に7%以上ある。

商社ゆえ、他社と比較し
扱う商品に大きな差はない。

違うのは「単品即納」
すなわち、
例え、たった一つでもすぐに
現場に届ける便利さゆえに、
顧客の支持を大いに獲得し、
利益のとれるビジネスに
なっているようだ。

一方、ある住宅会社は、
工期を従来の2/3に短縮し
利益改善に成功している。

1棟1大工の常識に囚われず、
上棟だけを専門にやる
建て方チームをつくるなど
現場仕事の再組織化で
短工期を実現しているそうである。

「顧客に速く価値を届ける」
建設業だからできない
とは考えたくない。

二つ目が、
粗利率の高い事業をやる視点だ。

一件当たりの単価が高い建設事業は
他業界と比較して、
概して粗利率は高くない。

しかし、利益の第一ボタン。
ここにメスを入れずして、
収益改善はないだろう。

一方、税理士の所長先生は、
口酸っぱく
「粗利率は管理でなく戦略」
と言われる。

粗利管理を疎かにする等
無論、あり得ないが、
社長の仕事として
粗利率の高いビジネスのあり方
そのものを考えて欲しいと
言われている。

同じ業種でも
粗利率は実は大きく
異なるようなのだ。

ここは、近いうちに
知人の住宅会社にお伺いし、
他社からも謙虚に学ぼうと
達社長は考えている。

そして、最後3つ目が、
安定性を高める経営である。

税理士の所長先生の
言葉を借りるなら
「来年の売上がいくら読めるか?」
である。

建設業なら、真っ先に思いつくのが
受注残を増やすである。

聞きかじりでしかないが、
経営の神様、松下幸之助氏流に
言えば
「ダム式経営」だろうか?

しかし、ここでも
税理士の所長先生の見立ては
少し違う

安定性とは、
リピートや紹介の売上(利益)高が
全体で何割を占めているか?
だと、言う。

メンテナンス等の毎年安定して
得られるサービス売上で出来るだけ
人件費分の経費を稼ぎだし、

受注型事業だとしても
紹介の割合を常時50%以上へと
引き上げるように言われている。

「そんな上手く言ったら苦労しない」
ベテラン専務は、いつもそう言う。

しかし、
税理士の所長先生は怯まない。

「潰れるか、生き残るかの話」
だとの信念があるからだ。

「3高モデル」の理想を胸に
収益改善を進めよう。

達社長の新たな戦いが
今、始まろうとしていた。


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