後継社長奮闘す

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第六章 次代を創る

同じ景色を観る

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社長にならなければ
分からない事がある。
しかし、
社長と同じ景色を観る事はできる。

次代の経営者、経営チームを
創る上で大切な視点だと
達社長、
考えるようになってきた。

同じ景色、すなわち未来の姿。

今までは、達社長が一人で考え
皆と、共有してきた。

つまりは、トップダウン。
それを変えようと考えている。

次代を担うメンバーが未来の姿を
自らの手で構想、具体化し
実現にまで責任を持つやり方だ。

「100年プロジェクト」

そう名付けた、
未来と次代の経営チームを創る
計画を立ち上げたいと経営会議に
図ることにした。

定年間近なベテラン専務筆頭に
皆概ね好意的であった。
 
「問題は人選ですね」

自身もその対象になるはずの
総務課長が、表情一つ変えずに
そう呟いた。

そうなのだ。

「人材育成は投資」

この姿勢を貫き育成してきたとは言え
まだまだ、経営人材候補というと
選抜するにはまだ数が少ない。

しかも、次代を担う・・
このテーマで選抜すると
選ばれなかった者の
モチベーションも心配だ。

「日本の中小企業にアメリカ式
エリート教育は馴染まない」

建築部長が追い討ちをかける様に
言葉をつないだ。

「・・・」

沈黙の時間が流れる中、
それを断ち切って発言してくれたのは
ベテラン専務であった。

「30,40代課長クラスは20名前後」
「数年かけて皆参画させては」

選抜せずに、全員に機会を与えようと
言う提言である。

いかにも日本らしい発想だ。
しかし、他に妙案がなく
他の重要事項があるため

この議題は、次回に持ち越して
決めることにした。

達社長、困った時は
「4賢者から助言を受ける」

尊敬する先輩社長と
税理士の所長先生に相談している。

「毎回、毎回ありがたい」

結論から言うと、
お二人とも、
専務の「数年かけた課長全員参加型」
プロジェクトに賛成だと言う。

「機会平等、結果不平等」は
人事の鉄則であるし、
何より
「彼は◯◯には向かない」と
達社長自身が貼っている
レッテルを剥がせるかもしれない。

そう助言を頂いた。

加えて、先輩社長からは

「内部昇格が理想だが、
外部招聘も考えておきなさい」

とも言われた。

中小企業でオーナー家以外から
社長を創る難しさなのだろう。

その後、
対象の一人にもなる総務課長にも
「本音を」と思い話しを聞いて見た。

「悪くないと思います」

クールに端的にそう話してくれた。

「ただ、
これしかないとも言えます」


そして、二週間後の経営会議。

3年かけて課長全員が参画する
「100年プロジェクト」
をスタートさせる事が決定した。

一つだけ意見が割れたのが

「次代の社長候補を創る」

真の目的を明らかにするか
どうかだった。

「エリート教育は??」

と発言していた建築部長は
随分反対したが、

最終的には、
目的も明示すると決定した。

「教育のための教育」
にしない。そう決意しているからだ。

次代を創る・・

いよいよ本格的にスタートする



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