後継社長奮闘す

tathufuntou

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第六章 次代を創る

すべきでない事を承継する

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100年を経営する。
こうした意識が
高まってきたからだろう。

正直いつも案内を頂いているが、
大変失礼ながら、封も開けずに
処分する事が多かった
◯◯社のセミナー。

今回は、
あるテーマのものが目に留まった。

それが、
「創業150年長寿企業の経営」

である。

読書が好きな達社長。

長寿企業の経営についても
それなりに勉強、研究していて
自分なりの知見を高めていたが、

「目に留まったのも縁」

セミナー開催日に
特別な用がなかった事もあり、

久しぶりに、経営セミナーに
出席する事にした。

約1ヶ月後の会の当日。
定員の6割位の参加者しかいない
少し寂しい会場風景であった。

ビジネスモデルや新規事業、
あるいはM&A等、攻めのセミナーは
活況のようだが、

「固い話はトレンドではない」
いつも案内をくれるセミナー会社の
担当が自嘲気味に話してくれた。

さて、150年続く長寿企業。

代々◯◯家の者が社長に就任する
いわゆるファミリー承継型で
事業を継続させている事例である

興味深かったのは、
経営の長期安定化の為に
「ファミリー憲章」
なるものを明文化。

民法等に定める親族の中から
経営チームの一員として
認められし者で共有される
憲法のようなものだそうだ。

経営の心構えから始まり
ファミリー間の
コミュニケーションの取り方、
あるいは株式などの資本政策、
そして後継人材育成まで

実にこと細やかに方針が
記載され、ことある事に確認し、
襟を正しているという。

しかし、この憲章。
実は、攻めの経営戦略に関しては
何一つ記載されてはいない。

「戦略は時代が決める」
つまり、未来を縛ってはいけない
との考えだと言う。

しかし、事業に関して
最後尾に、多くの字数を使い、
記載されていることがある。

それが、
「すべきでないこと」である。

一例を上げると以下のようなものだ。

・身の丈に合わぬ投資
・顧客企業とバッティングする
事業への進出
・運転資金が過大な事業
・季節性が高い事業
・地域の人が喜ばぬ事業
・下請けのみに甘んじる事業

「企業は変化対応業」ゆえ
「すべき事の承継は難しい」
だからこそ
「すべきでないことを承継する」

というお話しには、達社長
学びも多く、何より大変共感した。

「150年の知恵」

セミナーが終了した夜、
誰もいない事務所へ戻り、
一人社長デスクに座った。

すべきでないことは何か?
それを考えたかったからだ。

色々、自問自答したが
最後は達社長らしくシンプルにした。

「私達の街を元気に、そして
暮らしを楽しくする」

こう自信を持って言えない事業は
例え、それが
儲かるとわかっていてもやらない。

ある意味当たり前かもしれないし、
実は、言うほど簡単ではない
かもしれない。

また、「語り継ぐ」ならば、
もう少し具体化する必要も
きっとあるだろう。

でもこれは承継したい。

「哲学的な事を考える歳になったな」

そう感じながら
深夜の事務所を後にする
達社長であった。
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