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第三話「須川」
3-1 舌先の性交 ※
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―――今入りました………によりますと。
―――昨夜遅く、○○市……高校生が何者か…襲撃……
―――……高校生は……頭…バット……もので殴られ…急搬送………
―――この付近……犯カメラ…どは無く…
美果はどんよりとした気分でとぼとぼと道を歩いていた。
目眩がする。出来ることならこのまま道に倒れてしまいたい。これ以上道を進みたくない、そんな事を考えながらももう目的地はすぐ目の前という所まで来ていた。
そこは美果の自宅から電車で一時間ほどの所にある巨大な私立病院だった。病院の白い壁が太陽光を反射して眩しく、美果は目を細めてため息をついた。
「五〇一…」
スマートフォンの画面に表示されている病室の番号を呟き、エレベーターに乗り込む。目的の階に到着してから五〇一号室にたどり着くまでに一分もかからなかった。
「…」
五〇一号室の扉の前に立ち美果は俯いた。訪ねたくないのである。
「あ、お見舞いの方ですか? 今は診察時間でもないし、患者様も中にいらっしゃいますよ!」
数秒ほどそうして佇んでいると、通りかかった看護師がきらきらとした笑顔で美果に話しかけ、親切にも扉を開けて美果を中へ誘導した。
「城木さーん、お見舞いの方がいらっしゃいましたよ!」
「あ、あの、私やっぱり…」
逃げ腰になった美果の耳に、聞きたくない男の声が届いた。
「ああ、待ってたんですよ」
余裕のある、優しそうな声だった。美果は思わず病室の中に目を向けた。
「この方は妹さんですか? 可愛いですね」
「ははっ、まあそんな感じです、教えてくれてありがとうございました」
どう致しまして、と看護師は全力の笑顔で会釈をすると美果を病室に残して去っていった。看護師の行動が好意でしかないのは分かっているが、美果からするとありがた迷惑である。
しかし美果はそんな事よりも、一人部屋の病室の中央のベッドで横たわる男を見て驚いた。
「よお美果ちゃん、元気してたか? やっぱり女子高生が来るだけでこの味気ない病室が華やぐわ」
「ど、どうしたんですか、その怪我」
美果は数週間前、城木に犯された時に写真を撮られたことで弱みを握られていた。しかしそれから半月以上もの間、この男から何の音沙汰もないことで、安心し始めてきておりその時のことを無理矢理忘れようとしていた。だが昨日の夜、美果が恋人の時村翔とトークアプリで楽しく話をしていると一通のメッセージが届いた。
【明日の午前中に来い。○○病院。五〇一号室。】
内容はそれだけだった。しかし、添付されていた写真を見て美果は気が遠くなった。それは城木に犯された日の自分のあられもない写真だったのである。
【分かりました】
とだけ返信し、美果は泣きながら枕に突っ伏した。
そして本日、なぜ待ち合わせが病院なのだろうと不思議に思っていた美果の前に現れた城木は、頭と右腕、胸元にもコルセットのような物を巻かれた状態だった。包帯の巻かれていない方の腕を上げて、驚いている美果を手招きをするのである。
「あれ、ニュース見てない? 俺ちょっと前に線路に落ちて死にかけたんだわ」
「線路に…?」
「そう、いつも俺たちが乗ってあるあの電車」
「…そういえば」
美果は以前、電車が人身事故により遅延した日のことを思い出した。あの遅延の原因がこの男だと分かって何とも言えない気分になった。美果はその日の学校に遅刻した。だが同じ日にそんな事を忘れてしまう程酷い目にあったせいですっかり忘れていたのだ。
憂鬱な表情の美果を見ながら、城木は話を続ける。
「せっかく美果ちゃんを待ち伏せしてたのに全然電車に乗って来ないから、駅のホームに呼び出してやろうかと思ったら…後ろから誰かに突き落とされた」
「え!?」
とんでもなく物騒なことを言っている。その話が本当なら大事件だ。
「それは大変………」
でしたね、と心配するようなことを言いかけて、美果は口ごもった。よく考えたらこの男は美果に痴漢を働いた挙句にホテルに連れ込んで思う存分彼女を蹂躙した強姦魔である。今の話も美果の心象を変えるためについた嘘で、怪我の理由は全く別なのかもしれない。そんな事を考えて、美果は疑いの気持ちのこもった冷ややかな目で城木を見た。
城木は少し意外そうに美果の表情の変化を見つめていたが、次第に口元だけを歪ませて笑った。
「ーーー今、死ねばよかったのに、って思っただろ」
ずいぶんストレートな事を言う。美果は少し狼狽えた。
「そ、そこまでは思わないけど…スマホの中身とクラウドのデータが全部吹き飛べばいいのに、とは思いました」
「お前、正直だな」
ははは、と美果の回答を聞いて城木は楽しそうに笑った。
美果は初めて城木の顔を正面からはっきりと見た。こうして朗らかに笑う城木は、とても痴漢強姦魔だとは思えない。涼やかな目元を持つ、知的な顔つきの男だった。これで品の良いスーツを着て颯爽と歩いていればさぞやモテる事だろう。とても歪んだ性癖の持ち主とは思えないが、やはり人は見た目によらない。美果は残念なものを見る目で小さく呆れたため息をついた。
「…この様子なら、やっぱりこいつは違うか」
「…?」
笑いが収まると、城木はぼそりと呟いた。小声だった為、美果にはよく聞き取れなかった。
実はこうして平気そうな顔をしているが、城木は本当に死にかけたのである。
線路に突き落とされた日、城木は電車と接触し身体は弾き飛ばされた。右腕が折れ、肋骨にヒビが入り、頭を強く打った彼はすぐさま救急車で搬送された。
頭から血を流し、意識朦朧として倒れている彼を見た多くの人びとは彼の生存を絶望視した。だが周りの反応をよそに、城木は病院に担ぎこまれて治療を受けると驚異的な回復力を見せ一命を取り留めたのである。
事故の状況を知った医師には「五体満足なのは奇跡だ」と告げられ、城木は冷たいものが背中に落とされた気分になったのだ。
彼はそれなりに悪事を働いてきた自覚があるため、ここ数週間の間、何人かの心当たりを自分の協力者に依頼して調べさせていたのである。
だが色々と調べてみても、彼に怨みを持っていそうな知り合いに犯人らしき人物が居ないとの結論に至った。そして、最終確認として美果を自分の元まで呼んだのである。
城木は一番犯人としてありえそうな人物として美果を怪しんでいた。理由は直近で手を出した相手だからである。だが、会話をした感触、雰囲気、視線の動きなどからこの子はそんな事をするタイプじゃないな、と確信した。
ただの無害な小娘だと改めて認識すると、城木は美果の全身を舐めるように見つめた。
「そこじゃ遠いだろ、こっちに来いよ」
「…」
手招きされて、美果は表情を曇らせながら静かに城木の寝転ぶベッドの横に近寄った。城木が手を伸ばす。美果はびくりと震えたが逃げ出さずにその場で様子を伺った。
城木は美果の長い黒髪を手に取ると指に絡めたり、匂いを嗅いだりしている。美果は髪を振りほどきたいのを懸命に堪えて口を開いた。
「あの、もう帰りたいんですけど」
「今来たばっかだろうが、遠慮すんなよ」
美果の髪を引っ張り、その艶やかな髪の感触を楽しみながら城木はにやにやと笑う。
「それに俺の用も済んでないし」
「あっ」
城木はぐいっと、さらに強く美果の髪を引っ張った。美果はよろけて前かがみになってしまう。
「入院してると溜まるんだよ」
「っ!」
美果は思わず握られていた髪を取り返して一歩後ろへ引いた。
「そ、その怪我じゃ身体に障るじゃないですか、止めた方がいいですよ!」
顔を青くしてじりじりと距離を取ろうとする美果に、城木は自らのスマホを取り出して例の写真を見せた。
「逃げんなって、さすがに今は身体に堪えるからマンコは使わないでやるよ、代わりに」
城木は自らの下半身を差して微笑んだ。
「しゃぶれ」
美果は半泣きになって首をぶんぶんと振りながら拒絶の意思を見せた。美果が中々言う事を聞かない様子に業を煮やしたのか、城木は怪しい笑顔を引っ込めた。そして表情を消すと、大きな舌打ちを響かせた。
「おい、SNSでばらまかれたいのか?」
不機嫌さを隠しもしない低い声でそう言った。美果の身体がびくりと震える。城木は顎をしゃくって美果を再び呼び寄せた。
城木はベッドの真ん中に座り、胡座を組んだ。
「まずはチンコしゃぶる前にちゅーしような」
「い、嫌です!」
「あ?」
「………少しだけなら」
美果が反抗的な態度を取ると、城木は直ぐ様例の写真を見せてくる。美果は涙目になってしぶしぶ従った。
「ほらこっち向け、俺の足の間にケツ下ろして、足広げて俺の腰に回せ」
「うぅ…こんな体制」
美果は両足を広げ、城木の足の間に正面から向かい合う形で座らされた。スカートを穿いていた美果は、城木と自らの下半身がかなり密着するのを嫌がって尻を動かし、後ろに身体をずらそうとした。
「何後ずさってんだ」
城木は包帯を巻いていない左腕で美果の腰を抱き寄せ、ぴったりと二人の体を密着させた。
「………」
美果は自らのショーツ越しに城木の硬いものが当たっている事が恥ずかしくなり、顔を赤面させて目をそらした。
「そういう反応が良いんだよなぁ」
「あっ、んむっ」
美果の耳元で楽しそうな声で囁いたかと思うと、城木はそのまま唇を重ねてきた。
「ん、ぅ」
美果が逃げないように彼女の後頭部を引き寄せる。美果は小さく震えながらその強引な口付けを受け入れるしかなかった。
「口開けろ、舌入れるぞ」
「…や…やだ」
震えながら美果が拒絶すると、城木は舌打ちして彼女の口に指をねじ込んだ。
「うぐっ」
「このまま吐くまで喉の奥に指入れてやろうか?」
「ううっ、いあれふ」
美果が首を振って嫌がると、城木は指を抜いた。おずおずと小さく口を上げた美果を見てにやりと笑い、城木は再び彼女の唇にむしゃぶりついた。
「ん、うっ、うくっ」
「俺の舌、噛むなよ」
はあ、と艶めいた吐息を吐いて城木が美果の口内に舌を入れる。分厚くて長い舌は、美果の可愛らしい舌を見つけると絡めとって撫で回した。美果の舌が嫌がって逃げ出そうとしても、執拗に追いかけられて絡まされ、舌の付け根をつつかれた。舌の全体を舐めとられる、今度は舌先をじゅぷじゅぷと吸われるのである。
城木に執拗に口内を蹂躙される度に美果の肩がぴくりぴくりと小さく跳ねた。
美果はだんだんと身体が熱くなってくる感覚と、密着している股間部に熱くて硬いものが擦り付けられることに気付いた。
(こんな、凄いキス…翔さんともした事ないのに…っ)
美果は恐怖とは別に、小さな快楽を感じ始めていた。
しかし彼女はまだそのことには気づいていない。彼女はまだ性交において、快楽というものをあまり感じたことがないのだ。
「…ふ、ぅ…ん、ぅ…ん、ん」
次第に飲みきれなくなった唾液が美果の口の端から漏れ落ちた。
静かな病室に二人の重なった唇の間からくちゅくちゅという音が響いている。
長いキスからいい加減に解放されたくて、美果は目の端に涙を溜めて薄らと目を開ける。
「…!」
美果はびくりと肩を震わせた。
城木は美果の唇を蹂躙しながら、ぎらついた目で彼女をじっと見つめていたのである。その目つきは彼女を犯したあの日のそのもので、美果は怖くなってぎゅっと目を閉じた。
―――昨夜遅く、○○市……高校生が何者か…襲撃……
―――……高校生は……頭…バット……もので殴られ…急搬送………
―――この付近……犯カメラ…どは無く…
美果はどんよりとした気分でとぼとぼと道を歩いていた。
目眩がする。出来ることならこのまま道に倒れてしまいたい。これ以上道を進みたくない、そんな事を考えながらももう目的地はすぐ目の前という所まで来ていた。
そこは美果の自宅から電車で一時間ほどの所にある巨大な私立病院だった。病院の白い壁が太陽光を反射して眩しく、美果は目を細めてため息をついた。
「五〇一…」
スマートフォンの画面に表示されている病室の番号を呟き、エレベーターに乗り込む。目的の階に到着してから五〇一号室にたどり着くまでに一分もかからなかった。
「…」
五〇一号室の扉の前に立ち美果は俯いた。訪ねたくないのである。
「あ、お見舞いの方ですか? 今は診察時間でもないし、患者様も中にいらっしゃいますよ!」
数秒ほどそうして佇んでいると、通りかかった看護師がきらきらとした笑顔で美果に話しかけ、親切にも扉を開けて美果を中へ誘導した。
「城木さーん、お見舞いの方がいらっしゃいましたよ!」
「あ、あの、私やっぱり…」
逃げ腰になった美果の耳に、聞きたくない男の声が届いた。
「ああ、待ってたんですよ」
余裕のある、優しそうな声だった。美果は思わず病室の中に目を向けた。
「この方は妹さんですか? 可愛いですね」
「ははっ、まあそんな感じです、教えてくれてありがとうございました」
どう致しまして、と看護師は全力の笑顔で会釈をすると美果を病室に残して去っていった。看護師の行動が好意でしかないのは分かっているが、美果からするとありがた迷惑である。
しかし美果はそんな事よりも、一人部屋の病室の中央のベッドで横たわる男を見て驚いた。
「よお美果ちゃん、元気してたか? やっぱり女子高生が来るだけでこの味気ない病室が華やぐわ」
「ど、どうしたんですか、その怪我」
美果は数週間前、城木に犯された時に写真を撮られたことで弱みを握られていた。しかしそれから半月以上もの間、この男から何の音沙汰もないことで、安心し始めてきておりその時のことを無理矢理忘れようとしていた。だが昨日の夜、美果が恋人の時村翔とトークアプリで楽しく話をしていると一通のメッセージが届いた。
【明日の午前中に来い。○○病院。五〇一号室。】
内容はそれだけだった。しかし、添付されていた写真を見て美果は気が遠くなった。それは城木に犯された日の自分のあられもない写真だったのである。
【分かりました】
とだけ返信し、美果は泣きながら枕に突っ伏した。
そして本日、なぜ待ち合わせが病院なのだろうと不思議に思っていた美果の前に現れた城木は、頭と右腕、胸元にもコルセットのような物を巻かれた状態だった。包帯の巻かれていない方の腕を上げて、驚いている美果を手招きをするのである。
「あれ、ニュース見てない? 俺ちょっと前に線路に落ちて死にかけたんだわ」
「線路に…?」
「そう、いつも俺たちが乗ってあるあの電車」
「…そういえば」
美果は以前、電車が人身事故により遅延した日のことを思い出した。あの遅延の原因がこの男だと分かって何とも言えない気分になった。美果はその日の学校に遅刻した。だが同じ日にそんな事を忘れてしまう程酷い目にあったせいですっかり忘れていたのだ。
憂鬱な表情の美果を見ながら、城木は話を続ける。
「せっかく美果ちゃんを待ち伏せしてたのに全然電車に乗って来ないから、駅のホームに呼び出してやろうかと思ったら…後ろから誰かに突き落とされた」
「え!?」
とんでもなく物騒なことを言っている。その話が本当なら大事件だ。
「それは大変………」
でしたね、と心配するようなことを言いかけて、美果は口ごもった。よく考えたらこの男は美果に痴漢を働いた挙句にホテルに連れ込んで思う存分彼女を蹂躙した強姦魔である。今の話も美果の心象を変えるためについた嘘で、怪我の理由は全く別なのかもしれない。そんな事を考えて、美果は疑いの気持ちのこもった冷ややかな目で城木を見た。
城木は少し意外そうに美果の表情の変化を見つめていたが、次第に口元だけを歪ませて笑った。
「ーーー今、死ねばよかったのに、って思っただろ」
ずいぶんストレートな事を言う。美果は少し狼狽えた。
「そ、そこまでは思わないけど…スマホの中身とクラウドのデータが全部吹き飛べばいいのに、とは思いました」
「お前、正直だな」
ははは、と美果の回答を聞いて城木は楽しそうに笑った。
美果は初めて城木の顔を正面からはっきりと見た。こうして朗らかに笑う城木は、とても痴漢強姦魔だとは思えない。涼やかな目元を持つ、知的な顔つきの男だった。これで品の良いスーツを着て颯爽と歩いていればさぞやモテる事だろう。とても歪んだ性癖の持ち主とは思えないが、やはり人は見た目によらない。美果は残念なものを見る目で小さく呆れたため息をついた。
「…この様子なら、やっぱりこいつは違うか」
「…?」
笑いが収まると、城木はぼそりと呟いた。小声だった為、美果にはよく聞き取れなかった。
実はこうして平気そうな顔をしているが、城木は本当に死にかけたのである。
線路に突き落とされた日、城木は電車と接触し身体は弾き飛ばされた。右腕が折れ、肋骨にヒビが入り、頭を強く打った彼はすぐさま救急車で搬送された。
頭から血を流し、意識朦朧として倒れている彼を見た多くの人びとは彼の生存を絶望視した。だが周りの反応をよそに、城木は病院に担ぎこまれて治療を受けると驚異的な回復力を見せ一命を取り留めたのである。
事故の状況を知った医師には「五体満足なのは奇跡だ」と告げられ、城木は冷たいものが背中に落とされた気分になったのだ。
彼はそれなりに悪事を働いてきた自覚があるため、ここ数週間の間、何人かの心当たりを自分の協力者に依頼して調べさせていたのである。
だが色々と調べてみても、彼に怨みを持っていそうな知り合いに犯人らしき人物が居ないとの結論に至った。そして、最終確認として美果を自分の元まで呼んだのである。
城木は一番犯人としてありえそうな人物として美果を怪しんでいた。理由は直近で手を出した相手だからである。だが、会話をした感触、雰囲気、視線の動きなどからこの子はそんな事をするタイプじゃないな、と確信した。
ただの無害な小娘だと改めて認識すると、城木は美果の全身を舐めるように見つめた。
「そこじゃ遠いだろ、こっちに来いよ」
「…」
手招きされて、美果は表情を曇らせながら静かに城木の寝転ぶベッドの横に近寄った。城木が手を伸ばす。美果はびくりと震えたが逃げ出さずにその場で様子を伺った。
城木は美果の長い黒髪を手に取ると指に絡めたり、匂いを嗅いだりしている。美果は髪を振りほどきたいのを懸命に堪えて口を開いた。
「あの、もう帰りたいんですけど」
「今来たばっかだろうが、遠慮すんなよ」
美果の髪を引っ張り、その艶やかな髪の感触を楽しみながら城木はにやにやと笑う。
「それに俺の用も済んでないし」
「あっ」
城木はぐいっと、さらに強く美果の髪を引っ張った。美果はよろけて前かがみになってしまう。
「入院してると溜まるんだよ」
「っ!」
美果は思わず握られていた髪を取り返して一歩後ろへ引いた。
「そ、その怪我じゃ身体に障るじゃないですか、止めた方がいいですよ!」
顔を青くしてじりじりと距離を取ろうとする美果に、城木は自らのスマホを取り出して例の写真を見せた。
「逃げんなって、さすがに今は身体に堪えるからマンコは使わないでやるよ、代わりに」
城木は自らの下半身を差して微笑んだ。
「しゃぶれ」
美果は半泣きになって首をぶんぶんと振りながら拒絶の意思を見せた。美果が中々言う事を聞かない様子に業を煮やしたのか、城木は怪しい笑顔を引っ込めた。そして表情を消すと、大きな舌打ちを響かせた。
「おい、SNSでばらまかれたいのか?」
不機嫌さを隠しもしない低い声でそう言った。美果の身体がびくりと震える。城木は顎をしゃくって美果を再び呼び寄せた。
城木はベッドの真ん中に座り、胡座を組んだ。
「まずはチンコしゃぶる前にちゅーしような」
「い、嫌です!」
「あ?」
「………少しだけなら」
美果が反抗的な態度を取ると、城木は直ぐ様例の写真を見せてくる。美果は涙目になってしぶしぶ従った。
「ほらこっち向け、俺の足の間にケツ下ろして、足広げて俺の腰に回せ」
「うぅ…こんな体制」
美果は両足を広げ、城木の足の間に正面から向かい合う形で座らされた。スカートを穿いていた美果は、城木と自らの下半身がかなり密着するのを嫌がって尻を動かし、後ろに身体をずらそうとした。
「何後ずさってんだ」
城木は包帯を巻いていない左腕で美果の腰を抱き寄せ、ぴったりと二人の体を密着させた。
「………」
美果は自らのショーツ越しに城木の硬いものが当たっている事が恥ずかしくなり、顔を赤面させて目をそらした。
「そういう反応が良いんだよなぁ」
「あっ、んむっ」
美果の耳元で楽しそうな声で囁いたかと思うと、城木はそのまま唇を重ねてきた。
「ん、ぅ」
美果が逃げないように彼女の後頭部を引き寄せる。美果は小さく震えながらその強引な口付けを受け入れるしかなかった。
「口開けろ、舌入れるぞ」
「…や…やだ」
震えながら美果が拒絶すると、城木は舌打ちして彼女の口に指をねじ込んだ。
「うぐっ」
「このまま吐くまで喉の奥に指入れてやろうか?」
「ううっ、いあれふ」
美果が首を振って嫌がると、城木は指を抜いた。おずおずと小さく口を上げた美果を見てにやりと笑い、城木は再び彼女の唇にむしゃぶりついた。
「ん、うっ、うくっ」
「俺の舌、噛むなよ」
はあ、と艶めいた吐息を吐いて城木が美果の口内に舌を入れる。分厚くて長い舌は、美果の可愛らしい舌を見つけると絡めとって撫で回した。美果の舌が嫌がって逃げ出そうとしても、執拗に追いかけられて絡まされ、舌の付け根をつつかれた。舌の全体を舐めとられる、今度は舌先をじゅぷじゅぷと吸われるのである。
城木に執拗に口内を蹂躙される度に美果の肩がぴくりぴくりと小さく跳ねた。
美果はだんだんと身体が熱くなってくる感覚と、密着している股間部に熱くて硬いものが擦り付けられることに気付いた。
(こんな、凄いキス…翔さんともした事ないのに…っ)
美果は恐怖とは別に、小さな快楽を感じ始めていた。
しかし彼女はまだそのことには気づいていない。彼女はまだ性交において、快楽というものをあまり感じたことがないのだ。
「…ふ、ぅ…ん、ぅ…ん、ん」
次第に飲みきれなくなった唾液が美果の口の端から漏れ落ちた。
静かな病室に二人の重なった唇の間からくちゅくちゅという音が響いている。
長いキスからいい加減に解放されたくて、美果は目の端に涙を溜めて薄らと目を開ける。
「…!」
美果はびくりと肩を震わせた。
城木は美果の唇を蹂躙しながら、ぎらついた目で彼女をじっと見つめていたのである。その目つきは彼女を犯したあの日のそのもので、美果は怖くなってぎゅっと目を閉じた。
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