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第二話「笠間」
2-3 体育倉庫に現れたのは
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全校生徒は一度運動場に集合し、校長先生の長い話を聞いたことで本日の帰りのホームルームは終了していた。各々制服に着替えたのち自由解散という事で、校内には体育着の生徒も制服姿の生徒も入り乱れていた。だがどの生徒も本日は部活が行われないため、友人同士で連れ立って帰宅の途につく準備をしていた。
「あれ、美果まだ着替えてないの?」
「うん、ちょっと倉島先生に頼まれちゃって」
「そうなんだ、頑張ってね、じゃあお先に!」
「どんな頼まれごとかくらい聞いてよー」
クラスメイトは笑顔で早足に去っていった。面倒事の気配を察知したらしい。そしてその勘は正しい。美果はちょっと眉を寄せた。
(私も早く帰りたいなぁ)
よく考えれば、今帰宅した生徒は美果のクラスの体育委員だった。体育委員でもない美果が着替えずに残って後片付けを任されるのは筋違いではないだろうか。
(不満を言ってもしょうがないか、これで倉島先生の私に対する印象が少しでも良くなれば良いんだけど)
美果がバレーボールの試合を行った体育館に舞い戻ってみると、数人の生徒たちがネットを畳んだり、ポールを片付けたりと慌ただしく動き回っていた。
「あのー、倉島先生に片付けを手伝うように言われてきたんですけど」
「ほんと? 助かるわ、じゃあこのネットを畳んで体育倉庫にしまってきてくれる? その後は散らばってるボールを全部数えてそれも倉庫のカゴに入れといて!」
「あ、はい」
上級生の男子生徒は山のようなネットを美果に渡すと、ネットを支えていたポールの取り外しの応援に走っていってしまった。美果はやれやれと肩をすくめて作業に取り掛かった。
「お疲れ、もう他の皆も終わったし、それ終わったら帰っていいよ」
「分かりました」
一時間ほど作業をすると、大体の片付けは終わったらしい。美果は指示を受けていた男子生徒に会釈して再び体育倉庫の中を見回した。
「あれ…何度数えても一個足りない」
本日競技で使われていたバレーボールが一つ足りないのだ。
「あのー」
美果は隣接している体育館に顔を覗かせたが、素早いことにもう誰も居なくなっていた。視線を巡らせてもボールは落ちていない。
「数え間違えたかな」
人気のない体育館や体育倉庫はちょっと不気味だ。美果はさっさとカゴの中のボールを数え直そうと再び体育倉庫へ戻った。
「―――電気消すぞ、まだ誰か残ってるのか?」
遠くから誰かがそんな事を尋ねてきた。
美果は「はい、まだ居ます」と返事をして、ふとその声に聞き覚えがあることに気がついた。
人の気配を感じて慌てて体育倉庫の入口を振り返る。するとそこには制服に着替えた一人の男子生徒が立っていた。
「か…笠間先輩」
「…」
笠間の後ろの体育館の照明は消えていた。恐らく笠間が消したのだろう。夕暮れ時の今、部活も授業も無い体育館はすっかり静まり返り、薄暗くなりつつあった。
体育倉庫の中に居たのが美果であると知って、笠間は途端に表情を歪めた。嫌なものを見る目つきで美果を見ている。
対する美果の方も、笠間の顔を見ただけで今日の試合中に何度もバレーボールを当てられた時の痛みを思い出してびくりと震えた。
「あ…」
美果は笠間が片手で持っていたバレーボールを見た。どこかで拾ってきたのか、笠間はこれを返却しにわざわざ体育倉庫まで出向いたようである。
やや緊張しながら、美果は出来るだけ愛想よく声をかけた。
「あの、ボールの数が足りなくて困ってたんです、それ渡してもらっていいですか?」
声をかけられた笠間はぴくりと眉を動かした。不機嫌であるということを語らず顔で表現している彼は返事もせず、ゆっくりとボールを投げる仕草をした。
「え、あの」
しかし、その仕草は軽くボールを投げて寄越す仕草とは言い難く、敵意を込めて思い切り投げつけようとしているようだった。
「ひぇっ!?」
思わず美果がすぐ真横に身体をずらすのと、笠間がバレーボールを力強く投げて寄越すのは同時だった。
―――ビュンッッッ!
美果が立っていた場所を、ボールが風を切って突っ切り、すぐ後ろにあった体育倉庫の壁に当たって跳ね返る。
―――ガンッ!!
ボールは更に鉄製の扉にぶつかり派手な音を立ててバウンドした。
そして美果のすぐ横にある体育マットにぶつかると、力をなくしてコロコロと転がり笠間の足下まで戻ってきて止まったのである。
「…」
「…」
体育倉庫内に沈黙が落ちた。
「…あ、あの先輩?」
ごくりと唾を飲み込み、美果は恐る恐る口を開く。
「…」
笠間は無言のまま体育倉庫の中に入り、後ろ手に扉を閉めた。しかも外から開けられないように近くにあった跳び箱を足で押して扉のスライド部分の溝に乗せてしまう。美果は目を見開いてそれを見ていた。
「な、何を」
「お前、夕美ちゃんに何か言ったろ」
美果が口を開くとその言葉に被せて笠間が言った。その声は不機嫌極まりなく、怒りを含んでいる。
その低い声が恐ろしくて、美果は肩をびくりと震わせて萎縮した。
「えっと…」
思い当たる節ならある。
美果は夕美が決定的に笠間を振るように促し、その告白の場についてきた人物である。後ろめたくないと言えば嘘になる。美果は目をそらして口を閉じた。
「だんまりかよ」
一言呟いて、笠間は先ほどのボールを拾い、ゆっくりと美果に近寄った。
すでに倉庫の最奥に居た美果は逃げ場がなく、後ずさりもできずに後ろの壁に背中をくっつけた。美果の目の前まで来ると、笠間の長身がさらに彼女を圧倒し恐怖を抱かせた。笠間は手に持ったままだったボールを美果の傍にあった籠へ乱暴に投げ入れた。
「夕美ちゃんは誠実な子だから他人からの大事な呼び出しがあったら一人で来る子のはずだ、なのにお前が一緒に来たせいで彼女は俺をフッた!」
危険な気配を感じ取り、美果はどうにかしてこの空間から逃げ出すすべはないかと視線を左右に滑らせた。しかし、狭い体育倉庫で目の前には長身の男がいる。おいそれと逃げ出せる状況ではなかった。
「―――聞いてんのかよ!!!」
「きゃあっ!」
ドンッ、と笠間が美果の身体の横すれすれの壁を蹴りつけた。美果の背後の壁が揺れる。その振動が身体に伝わり美果は小さく悲鳴を上げた。全くときめかない壁ドンである。
「お前俺のこと舐めてるよな、上級生相手に馬鹿にした態度だし、何様のつもりだ?」
「私、そんなつもりは全然…」
「俺と夕美ちゃんの間を引き裂くような事してやがって」
「ち、違」
「あ? 何が違うか言ってみろよ!」
足が震え、声がひっくり返りそうになりながらも美果は弁解しようとした。しかし笠間は言葉を聞くつもりは毛頭ないのか、溢れ出した怒りを止めることなく美果に掴みかかった。
「うぅっ」
他人に恫喝されたり、ましてや胸倉を掴まれた事など一度も無い。美果は完全に怯えきっていた。手足が震えて満足に抵抗することもできない。
胸倉を揺すっても殆ど口が聞けない美果に、笠間は苛立った口調のままぼそりと呟いた。
「馬鹿は口で言っても分かんないか」
「きゃっ!?」
そう言うと、笠間は美果を体操マットの上に突き飛ばした。その上に素早く馬乗りになると彼女の体育着を力尽くで脱がせ始めたのである。
「二度と変な真似が出来ないように顔とセットで下着姿の写真撮ってやるよ、そうすれば少しはお前も懲りるだろ?」
「なっ、や、やめて!」
冗談ではない。同じ学校の上級生にそんな写真を握られたら、いつ学校中に拡散するか分からない。
しかし美果がどれほど体をばたつかせて抵抗しても、笠間の腕一本振りほどけなかった。男女の力の差、体格差、そして運動をして鍛えている上級生との差である。最初から美果に勝ち目など無い。そもそも馬乗りにされた時点でその抵抗が何の意味もなさないのは火を見るより明らかだった。
「暴れんな、殴るぞ」
「やだ、先輩やめて!」
美果の抵抗も虚しく上のジャージはあっと言う間に脱がされてしまった。
「ん…?」
「…?」
笠間の動きがぴたりと止まった。美果は殴られるのではないかとびくびくしながら、自分をマットに押し倒す笠間の顔を見上げた。
「お前」
そう言って笠間は美果の鎖骨付近をすりっと撫でた。美果がびくりと肩を震わせる。
笠間はその様子を見て、いやらしく笑った。
「お前、もしかして凄く遊んでる?」
「え?」
思いもよらない言葉をかけられて、美果は目を白黒させた。しかし、自分の首や胸辺りに散っている無数の痕を思い出して赤面した。
「ち、違います! これは…その…」
痴漢の城木に無理矢理付けられたキスマークだと、それはそれで美果には言い辛い。
「何が違うんだよ、この淫乱女」
馬鹿にした声だった。笠間は問答無用で美果の上半身の体育着を脱がすとその体をじろじろと見た。そして片手で自らの口元を少し覆って呟いた。
「ふーん…」
「やっ、見ないで! 服返してください!」
笠間の片手に隠された口元を美果は一瞬見てしまった。笑っている。酷く嗜虐的に口元を歪ませて。美果はぞっとしてどうにか笠間の下から逃げ出そうと懸命に体を捩った。
だが抜け出そうと暴れて美果は気付いてしまった。自分に跨る上級生の股間部、ズボンの中心部がはちきれそうに張っているのである。
美果の視線で笠間も自分の状態に気付いたようだった。笠間は一瞬何かを考えるような顔をして、しかしすぐに元のいやらしい笑みを浮かべた。
「…お前みたいな淫乱が側にいたら夕美ちゃんに悪影響だよな」
「私淫乱なんかじゃ」
美果の言葉を無視して、笠間は言い聞かせるように続けた。
「そうだ、夕美ちゃんを守る為に今からお前を教育してやるよ」
「なっ、何言って…」
わけの分からない事を言って、笠間はもはや隠しもせずに笑った。ぎらついた目。浅い呼吸。高い体温。そして。
「騒ぐなよ」
「うぐっ」
脱がせたジャージの袖部分を丸めると、笠間は美果の口の中にそれを無理矢理詰め込んだ。
そして美果の身体の上に覆いかぶさり、笠間は硬く勃ち上がった股間部を彼女の腹にぐいぐいと押し付けながら囁いた。
「俺の、こんなにした責任取れよ」
「んんーっ!?」
美果の悲鳴は口の中で響くばかりで体育倉庫の外まで届くことはなかった。
「あれ、美果まだ着替えてないの?」
「うん、ちょっと倉島先生に頼まれちゃって」
「そうなんだ、頑張ってね、じゃあお先に!」
「どんな頼まれごとかくらい聞いてよー」
クラスメイトは笑顔で早足に去っていった。面倒事の気配を察知したらしい。そしてその勘は正しい。美果はちょっと眉を寄せた。
(私も早く帰りたいなぁ)
よく考えれば、今帰宅した生徒は美果のクラスの体育委員だった。体育委員でもない美果が着替えずに残って後片付けを任されるのは筋違いではないだろうか。
(不満を言ってもしょうがないか、これで倉島先生の私に対する印象が少しでも良くなれば良いんだけど)
美果がバレーボールの試合を行った体育館に舞い戻ってみると、数人の生徒たちがネットを畳んだり、ポールを片付けたりと慌ただしく動き回っていた。
「あのー、倉島先生に片付けを手伝うように言われてきたんですけど」
「ほんと? 助かるわ、じゃあこのネットを畳んで体育倉庫にしまってきてくれる? その後は散らばってるボールを全部数えてそれも倉庫のカゴに入れといて!」
「あ、はい」
上級生の男子生徒は山のようなネットを美果に渡すと、ネットを支えていたポールの取り外しの応援に走っていってしまった。美果はやれやれと肩をすくめて作業に取り掛かった。
「お疲れ、もう他の皆も終わったし、それ終わったら帰っていいよ」
「分かりました」
一時間ほど作業をすると、大体の片付けは終わったらしい。美果は指示を受けていた男子生徒に会釈して再び体育倉庫の中を見回した。
「あれ…何度数えても一個足りない」
本日競技で使われていたバレーボールが一つ足りないのだ。
「あのー」
美果は隣接している体育館に顔を覗かせたが、素早いことにもう誰も居なくなっていた。視線を巡らせてもボールは落ちていない。
「数え間違えたかな」
人気のない体育館や体育倉庫はちょっと不気味だ。美果はさっさとカゴの中のボールを数え直そうと再び体育倉庫へ戻った。
「―――電気消すぞ、まだ誰か残ってるのか?」
遠くから誰かがそんな事を尋ねてきた。
美果は「はい、まだ居ます」と返事をして、ふとその声に聞き覚えがあることに気がついた。
人の気配を感じて慌てて体育倉庫の入口を振り返る。するとそこには制服に着替えた一人の男子生徒が立っていた。
「か…笠間先輩」
「…」
笠間の後ろの体育館の照明は消えていた。恐らく笠間が消したのだろう。夕暮れ時の今、部活も授業も無い体育館はすっかり静まり返り、薄暗くなりつつあった。
体育倉庫の中に居たのが美果であると知って、笠間は途端に表情を歪めた。嫌なものを見る目つきで美果を見ている。
対する美果の方も、笠間の顔を見ただけで今日の試合中に何度もバレーボールを当てられた時の痛みを思い出してびくりと震えた。
「あ…」
美果は笠間が片手で持っていたバレーボールを見た。どこかで拾ってきたのか、笠間はこれを返却しにわざわざ体育倉庫まで出向いたようである。
やや緊張しながら、美果は出来るだけ愛想よく声をかけた。
「あの、ボールの数が足りなくて困ってたんです、それ渡してもらっていいですか?」
声をかけられた笠間はぴくりと眉を動かした。不機嫌であるということを語らず顔で表現している彼は返事もせず、ゆっくりとボールを投げる仕草をした。
「え、あの」
しかし、その仕草は軽くボールを投げて寄越す仕草とは言い難く、敵意を込めて思い切り投げつけようとしているようだった。
「ひぇっ!?」
思わず美果がすぐ真横に身体をずらすのと、笠間がバレーボールを力強く投げて寄越すのは同時だった。
―――ビュンッッッ!
美果が立っていた場所を、ボールが風を切って突っ切り、すぐ後ろにあった体育倉庫の壁に当たって跳ね返る。
―――ガンッ!!
ボールは更に鉄製の扉にぶつかり派手な音を立ててバウンドした。
そして美果のすぐ横にある体育マットにぶつかると、力をなくしてコロコロと転がり笠間の足下まで戻ってきて止まったのである。
「…」
「…」
体育倉庫内に沈黙が落ちた。
「…あ、あの先輩?」
ごくりと唾を飲み込み、美果は恐る恐る口を開く。
「…」
笠間は無言のまま体育倉庫の中に入り、後ろ手に扉を閉めた。しかも外から開けられないように近くにあった跳び箱を足で押して扉のスライド部分の溝に乗せてしまう。美果は目を見開いてそれを見ていた。
「な、何を」
「お前、夕美ちゃんに何か言ったろ」
美果が口を開くとその言葉に被せて笠間が言った。その声は不機嫌極まりなく、怒りを含んでいる。
その低い声が恐ろしくて、美果は肩をびくりと震わせて萎縮した。
「えっと…」
思い当たる節ならある。
美果は夕美が決定的に笠間を振るように促し、その告白の場についてきた人物である。後ろめたくないと言えば嘘になる。美果は目をそらして口を閉じた。
「だんまりかよ」
一言呟いて、笠間は先ほどのボールを拾い、ゆっくりと美果に近寄った。
すでに倉庫の最奥に居た美果は逃げ場がなく、後ずさりもできずに後ろの壁に背中をくっつけた。美果の目の前まで来ると、笠間の長身がさらに彼女を圧倒し恐怖を抱かせた。笠間は手に持ったままだったボールを美果の傍にあった籠へ乱暴に投げ入れた。
「夕美ちゃんは誠実な子だから他人からの大事な呼び出しがあったら一人で来る子のはずだ、なのにお前が一緒に来たせいで彼女は俺をフッた!」
危険な気配を感じ取り、美果はどうにかしてこの空間から逃げ出すすべはないかと視線を左右に滑らせた。しかし、狭い体育倉庫で目の前には長身の男がいる。おいそれと逃げ出せる状況ではなかった。
「―――聞いてんのかよ!!!」
「きゃあっ!」
ドンッ、と笠間が美果の身体の横すれすれの壁を蹴りつけた。美果の背後の壁が揺れる。その振動が身体に伝わり美果は小さく悲鳴を上げた。全くときめかない壁ドンである。
「お前俺のこと舐めてるよな、上級生相手に馬鹿にした態度だし、何様のつもりだ?」
「私、そんなつもりは全然…」
「俺と夕美ちゃんの間を引き裂くような事してやがって」
「ち、違」
「あ? 何が違うか言ってみろよ!」
足が震え、声がひっくり返りそうになりながらも美果は弁解しようとした。しかし笠間は言葉を聞くつもりは毛頭ないのか、溢れ出した怒りを止めることなく美果に掴みかかった。
「うぅっ」
他人に恫喝されたり、ましてや胸倉を掴まれた事など一度も無い。美果は完全に怯えきっていた。手足が震えて満足に抵抗することもできない。
胸倉を揺すっても殆ど口が聞けない美果に、笠間は苛立った口調のままぼそりと呟いた。
「馬鹿は口で言っても分かんないか」
「きゃっ!?」
そう言うと、笠間は美果を体操マットの上に突き飛ばした。その上に素早く馬乗りになると彼女の体育着を力尽くで脱がせ始めたのである。
「二度と変な真似が出来ないように顔とセットで下着姿の写真撮ってやるよ、そうすれば少しはお前も懲りるだろ?」
「なっ、や、やめて!」
冗談ではない。同じ学校の上級生にそんな写真を握られたら、いつ学校中に拡散するか分からない。
しかし美果がどれほど体をばたつかせて抵抗しても、笠間の腕一本振りほどけなかった。男女の力の差、体格差、そして運動をして鍛えている上級生との差である。最初から美果に勝ち目など無い。そもそも馬乗りにされた時点でその抵抗が何の意味もなさないのは火を見るより明らかだった。
「暴れんな、殴るぞ」
「やだ、先輩やめて!」
美果の抵抗も虚しく上のジャージはあっと言う間に脱がされてしまった。
「ん…?」
「…?」
笠間の動きがぴたりと止まった。美果は殴られるのではないかとびくびくしながら、自分をマットに押し倒す笠間の顔を見上げた。
「お前」
そう言って笠間は美果の鎖骨付近をすりっと撫でた。美果がびくりと肩を震わせる。
笠間はその様子を見て、いやらしく笑った。
「お前、もしかして凄く遊んでる?」
「え?」
思いもよらない言葉をかけられて、美果は目を白黒させた。しかし、自分の首や胸辺りに散っている無数の痕を思い出して赤面した。
「ち、違います! これは…その…」
痴漢の城木に無理矢理付けられたキスマークだと、それはそれで美果には言い辛い。
「何が違うんだよ、この淫乱女」
馬鹿にした声だった。笠間は問答無用で美果の上半身の体育着を脱がすとその体をじろじろと見た。そして片手で自らの口元を少し覆って呟いた。
「ふーん…」
「やっ、見ないで! 服返してください!」
笠間の片手に隠された口元を美果は一瞬見てしまった。笑っている。酷く嗜虐的に口元を歪ませて。美果はぞっとしてどうにか笠間の下から逃げ出そうと懸命に体を捩った。
だが抜け出そうと暴れて美果は気付いてしまった。自分に跨る上級生の股間部、ズボンの中心部がはちきれそうに張っているのである。
美果の視線で笠間も自分の状態に気付いたようだった。笠間は一瞬何かを考えるような顔をして、しかしすぐに元のいやらしい笑みを浮かべた。
「…お前みたいな淫乱が側にいたら夕美ちゃんに悪影響だよな」
「私淫乱なんかじゃ」
美果の言葉を無視して、笠間は言い聞かせるように続けた。
「そうだ、夕美ちゃんを守る為に今からお前を教育してやるよ」
「なっ、何言って…」
わけの分からない事を言って、笠間はもはや隠しもせずに笑った。ぎらついた目。浅い呼吸。高い体温。そして。
「騒ぐなよ」
「うぐっ」
脱がせたジャージの袖部分を丸めると、笠間は美果の口の中にそれを無理矢理詰め込んだ。
そして美果の身体の上に覆いかぶさり、笠間は硬く勃ち上がった股間部を彼女の腹にぐいぐいと押し付けながら囁いた。
「俺の、こんなにした責任取れよ」
「んんーっ!?」
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