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第二章 風が運んできたものは?
チョロインならぬチョロヒーロー
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「そ、そうなんだ」
状況を理解したようで、戻ってくる気配のない先輩たちは放っておいて、私たちだけでもお弁当を食べようと提案する。
「ね? せっかくだし、それに、皆に食べて欲しくてたくさん作ってきたから」
さっと鞄から取り出したお弁当箱は、私一人分と倍ほどの大きさがある箱の二種類用意している。
宮古くんもお弁当箱を取り出して、箸を取り出した。
最初に私が蓋を開けると、母の手伝いもあり、色とりどりのおかずが顔を覗かせてくれる。
彼の方は、男の人らしい中身で、お肉を中心に野菜などはあまり入っていない。
「なんだか、美味しそうね!」
「そうかな? 僕から見たら二戸さんのほうが美味しそうだけど」
会話はスムーズなのだけど、なぜだろう? 先ほどから、私を見てくれない。
チラチラと横目ではみてくるが、前までのように正面を向いて話してはくれなかった。
「?」
気になるけれど、今はお弁当を楽しく食べたい。
だから、「いただきます」と言って、私が食べ始めると、彼も食べ始めた。
私たちの間に、作ってきたおかずを置いておく、水筒の中身は、何の代わり映えもしない緑茶、でも、なんでか、外で飲むと不思議と美味しく感じる。
「食べていいからね?」
「う、うん、ありがとう」
よそよそしく、そっとおかずを箸でつまんで口にもっていく。
チョイスしたのは、先ほど先輩が食べさせた料理と同じで卵焼き、いや、私なら軽くトラウマになってしばらく食べられそうもないけど、彼は食べてくれた。
「ん! 美味しい、柔らかくて、ふわふわして、ほんのり甘い」
よかった。喜んでくれた。 内心ドキドキしていたので、安堵する。
母が作る味を百パーセント再現できてはいない。それでも、美味しいと言ってくれたのは純粋に嬉しい。
「よかった。それじゃぁ、私もいただいて良い?」
「ん? いいよ」
差し出されたお弁当箱、こんがり焼き色が入った生姜焼きが美味しそうで、それを頂こうとした。
箸をのばしていくが、なぜか届かない。
もう一度、箸をのばすと、お弁当箱が遠ざかる。
「え? ダメなの?」
「いや、そんなことはないんだけど……」
また、こちらの顔を見ないで言葉が発せられた。
じれったくなったので、無理やり近づいてひょいっと生姜焼きを奪った。
「‼」
私の行動に驚く宮古くん、思ったより近くに移動してしまい、こちらを見て、固まってしまっている。
なんだかショックだなぁ、そりゃ、こっちが勝手に彼のトラウマな部分を刺激してしまったのは非がある。
「その、ごめんなさい」
「な、なななんで謝るの?」
「いや、だってあからさまに私のこと避けているでしょ? 勝手に前髪をどけて見たから」
私の答えに対し、彼は勢いよく顔を横に振って否定してくる。
「違う、えっと、なんって言ったら良いのか」
顔を真っ赤にさせ、ゴモゴモと言葉を濁してしまう。
意味がわからなくなってきたので、掴んだままの生姜焼きをパクっと食べた。
「うん、美味しい‼」
冷めていても、しっかりとした味付けに、香り豊かなショウガが口の中を満たしてくれる。
「じゃぁ、なんで私のこと避けるの?」
グイっと近づいて問い詰めてみる。
「っ‼」
小さく空気を飲み込み、左手で顔を隠してしまう。
「いや、本当に避けてないから! 信じて!」
「?」
本人がそう言うなら、納得はできないけれど、会話は普通にしてくれるので、良しとしよう。
また、距離を戻しお弁当を食べ始める。
少し作り過ぎたかな? そう思ったけれど、さすが男の人、自分の分を食べると、私の用意したおかずもパクパクと食べてくれた。
「うまい、美味しい!」
ひと口食べるたびに、何か言ってくれ、とても嬉しい。
あっという間になくなると、丁寧に「ごちそうさまでした」と伝えてくれた。
「お粗末様でした。 宮古くんのおかずも美味しかったよ」
「そうかな? 僕は、二戸さんの料理凄く好きだよ」
なんと嬉しい。 普段、あまり褒められたりしないので、ストレートに言われると、戸惑ってしまう。
彼の顔を見ると、なぜか固まりドンドンと顔を赤くしていった。
「あ、えっと、そのスキっていうのは……」
「ん? 何? 何か口にあわないのあった?」
「そんなこと無いよ‼ 全部美味しかった」
「そう、なら嬉しいかも、また何かあったら作ろうかな」
やはり、この日のために練習してきた料理、褒めてもらえて素直に嬉しい。
思わず頬が緩むのがわかる。
そんな私を見て、ただボーっとしている宮古くん、熱でもあるのだろうか?
もしくは、矢島先輩の料理を食べて、まだ体調が完璧に回復していないのかもしれない。
さっき、あれだけ食べたのだから、大丈夫そうだけど、心配になったので、彼のオデコに手をあててみる。
「え! えぇ‼」
いきなりのことに狼狽しだした宮古くん、心なしか熱っぽい気がした。
自分でも大胆な行動だなぁと、思いつつも、恥ずかしさは無い。
そんな感覚になるのは、久しいことだと思った。 ずっと他の男性には何か引っかかる感じがあったが、彼にはそれがない。
なんていうのか、目に見えないバリアのようなモノが無いと思う。
「大丈夫? 少し熱あるかも」
もし、体調がすぐれないのなら、早めに休むなりして、月曜日からの学園に支障をきたさないようにしなければならない。
「大丈夫だよ! うん、本当に大丈夫だから‼」
慌てて私から離れる宮古くん、アタフタとしており変な踊りに見える。
今日は色んな表情を見せてくれる彼は、接していてとても楽しい。
そんな彼の後ろにある窓から見えていた風景が、変わったように思えた。
「あれ? 風が止んだ?」
状況を理解したようで、戻ってくる気配のない先輩たちは放っておいて、私たちだけでもお弁当を食べようと提案する。
「ね? せっかくだし、それに、皆に食べて欲しくてたくさん作ってきたから」
さっと鞄から取り出したお弁当箱は、私一人分と倍ほどの大きさがある箱の二種類用意している。
宮古くんもお弁当箱を取り出して、箸を取り出した。
最初に私が蓋を開けると、母の手伝いもあり、色とりどりのおかずが顔を覗かせてくれる。
彼の方は、男の人らしい中身で、お肉を中心に野菜などはあまり入っていない。
「なんだか、美味しそうね!」
「そうかな? 僕から見たら二戸さんのほうが美味しそうだけど」
会話はスムーズなのだけど、なぜだろう? 先ほどから、私を見てくれない。
チラチラと横目ではみてくるが、前までのように正面を向いて話してはくれなかった。
「?」
気になるけれど、今はお弁当を楽しく食べたい。
だから、「いただきます」と言って、私が食べ始めると、彼も食べ始めた。
私たちの間に、作ってきたおかずを置いておく、水筒の中身は、何の代わり映えもしない緑茶、でも、なんでか、外で飲むと不思議と美味しく感じる。
「食べていいからね?」
「う、うん、ありがとう」
よそよそしく、そっとおかずを箸でつまんで口にもっていく。
チョイスしたのは、先ほど先輩が食べさせた料理と同じで卵焼き、いや、私なら軽くトラウマになってしばらく食べられそうもないけど、彼は食べてくれた。
「ん! 美味しい、柔らかくて、ふわふわして、ほんのり甘い」
よかった。喜んでくれた。 内心ドキドキしていたので、安堵する。
母が作る味を百パーセント再現できてはいない。それでも、美味しいと言ってくれたのは純粋に嬉しい。
「よかった。それじゃぁ、私もいただいて良い?」
「ん? いいよ」
差し出されたお弁当箱、こんがり焼き色が入った生姜焼きが美味しそうで、それを頂こうとした。
箸をのばしていくが、なぜか届かない。
もう一度、箸をのばすと、お弁当箱が遠ざかる。
「え? ダメなの?」
「いや、そんなことはないんだけど……」
また、こちらの顔を見ないで言葉が発せられた。
じれったくなったので、無理やり近づいてひょいっと生姜焼きを奪った。
「‼」
私の行動に驚く宮古くん、思ったより近くに移動してしまい、こちらを見て、固まってしまっている。
なんだかショックだなぁ、そりゃ、こっちが勝手に彼のトラウマな部分を刺激してしまったのは非がある。
「その、ごめんなさい」
「な、なななんで謝るの?」
「いや、だってあからさまに私のこと避けているでしょ? 勝手に前髪をどけて見たから」
私の答えに対し、彼は勢いよく顔を横に振って否定してくる。
「違う、えっと、なんって言ったら良いのか」
顔を真っ赤にさせ、ゴモゴモと言葉を濁してしまう。
意味がわからなくなってきたので、掴んだままの生姜焼きをパクっと食べた。
「うん、美味しい‼」
冷めていても、しっかりとした味付けに、香り豊かなショウガが口の中を満たしてくれる。
「じゃぁ、なんで私のこと避けるの?」
グイっと近づいて問い詰めてみる。
「っ‼」
小さく空気を飲み込み、左手で顔を隠してしまう。
「いや、本当に避けてないから! 信じて!」
「?」
本人がそう言うなら、納得はできないけれど、会話は普通にしてくれるので、良しとしよう。
また、距離を戻しお弁当を食べ始める。
少し作り過ぎたかな? そう思ったけれど、さすが男の人、自分の分を食べると、私の用意したおかずもパクパクと食べてくれた。
「うまい、美味しい!」
ひと口食べるたびに、何か言ってくれ、とても嬉しい。
あっという間になくなると、丁寧に「ごちそうさまでした」と伝えてくれた。
「お粗末様でした。 宮古くんのおかずも美味しかったよ」
「そうかな? 僕は、二戸さんの料理凄く好きだよ」
なんと嬉しい。 普段、あまり褒められたりしないので、ストレートに言われると、戸惑ってしまう。
彼の顔を見ると、なぜか固まりドンドンと顔を赤くしていった。
「あ、えっと、そのスキっていうのは……」
「ん? 何? 何か口にあわないのあった?」
「そんなこと無いよ‼ 全部美味しかった」
「そう、なら嬉しいかも、また何かあったら作ろうかな」
やはり、この日のために練習してきた料理、褒めてもらえて素直に嬉しい。
思わず頬が緩むのがわかる。
そんな私を見て、ただボーっとしている宮古くん、熱でもあるのだろうか?
もしくは、矢島先輩の料理を食べて、まだ体調が完璧に回復していないのかもしれない。
さっき、あれだけ食べたのだから、大丈夫そうだけど、心配になったので、彼のオデコに手をあててみる。
「え! えぇ‼」
いきなりのことに狼狽しだした宮古くん、心なしか熱っぽい気がした。
自分でも大胆な行動だなぁと、思いつつも、恥ずかしさは無い。
そんな感覚になるのは、久しいことだと思った。 ずっと他の男性には何か引っかかる感じがあったが、彼にはそれがない。
なんていうのか、目に見えないバリアのようなモノが無いと思う。
「大丈夫? 少し熱あるかも」
もし、体調がすぐれないのなら、早めに休むなりして、月曜日からの学園に支障をきたさないようにしなければならない。
「大丈夫だよ! うん、本当に大丈夫だから‼」
慌てて私から離れる宮古くん、アタフタとしており変な踊りに見える。
今日は色んな表情を見せてくれる彼は、接していてとても楽しい。
そんな彼の後ろにある窓から見えていた風景が、変わったように思えた。
「あれ? 風が止んだ?」
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