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第一章 始動! 恋愛研究会
不穏な空気
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次の日の放課後、一番最後の授業が苦手な数学だったこともあり、必要以上に脳が疲れている状態で研究会の部屋にたどり着いた。
晴香は、今日はジャージー・デビルの特集だ! と、喜んで全力で走って向かってしまう。
彼女の脳内は、常にUMAで溢れていると言っても、過言ではないかもしれない。
一人で来たが、宮古くんとは会っていないので、もしかすると既に部屋にいるかも?
そう思って、小さくノックをしてから入る。
連日、一関先輩に恋愛の名言? を、唐突に言われ続けているので、心構えをしっかりと持ち、部屋に入った。
「やっほー! ヒナちゃん! いらっしゃい♪」
「ゔうぅ‼」
油断していた。 まさか、部屋に入るなり一関先輩が椅子に縛り付けられ、口は布で覆われているなんて、誰も想像できないだろう。
「え、えっと、失礼しました‼」
見てはいけない現場を見てしまった感があるので、全力でその場から逃げようとする。
「あ! ちょっと、待ってこれは違うんだから!」
先輩の声が聞こえるが、あえて無視をしよう。
そう思って振り返り、逃げ出そうとしたとき、ボフっと誰かの体にぶつかってしまった。
「ふぐぅ……」
突然視界が真っ黒になり、ほんのりとシトラス系の香りが漂ってくる。
それに、なんだろう、思った以上に筋肉質な胸筋から伝わる熱に驚いてしまう。
「あ、二戸さん! ごめんなさい」
声の感じからいって、宮古くんであろう。
最初は細い印象だったけれど、体育や今触れた感じからいって、意外と鍛えている。
それに、ちょっと良い匂いがする。
「す、すみません、こっちがぶつかってしまって」
いつまで彼の胸に顔を埋めているのか! 心地よい感じがして、思わず少しだけ離れがたいと思ってしまったが、よくよく考えたら、かなり恥ずかしいことだ。
「えい! ヒナちゃん捕まえた」
そんな事をしているうちに、矢島先輩に背中から抱き着かれ、捕まってしまう。
現状を理解できていない彼は、部屋と私たちを交互に見つめて、苦笑を浮かべていた。
「お? イオくんも、ようこそ! 覚は気にしなくていいから、部屋に入って」
私も無理やり向きを変えられ、そのままソファーに座らせられる。
視界の端には、ジタバタと暴れる一関先輩がいるも、あまり見ないように心がけた。
「実は、昨日ヒナちゃんには連絡したけど、恋研に念願の新人さんが入ってくれました! と、言うことで急遽、歓迎会と題してプチ遠足をやりたいと思います! イエーイ♪」
プ、プチ遠足⁉ 突然の企画に内心で驚いてしまう。
それで、なぜ一関先輩が縄で縛られているのか理解できない。
「それで、コレが企画書ね」
そう言って、矢島先輩は私たちにプチ遠足なるものの企画書を配ってくれた。
学園から一駅離れた海沿いの街にある公園に行き、お昼を食べようという内容で、特になにするわけでもなく。ただ行ってお昼を食べるだけのようだ。
「どう? 最初の親睦会にしては、名案だと思うだけど」
「そうですね。その日でしたら特に用事はありませんし、雨が降っても近くに雨を防げる施設もありますし、どちらにせよ楽しめそうですね」
宮古くんが嬉しそうに補足してくれた。
なるほど、天候に左右されずに開催は可能ということか、確かに、先輩たちや彼と一気に仲良くなれるチャンス。
入りたての学園で、ずっと緊張状態が続いていたが、程よい息抜きになりそうだ。
「そ、それなら、私も参加できます。特にやることも無いし、せっかくなので」
「OK! じゃぁ決まりね、あ、それと覚は強制ね」
ギロリと睨みつけて一関先輩を脅している。
今まで抵抗していたが、諦めたかのように項垂れてしまった。
だから、一体何があるというのだ⁉
「それで、当日なんだけど、お互いお手製のお弁当を作って持参ね」
ニッコリと微笑みながら提案してくれる。
料理はあまりしたことがないけれど、不得意ではないので、私は問題なかった。
「料理ですか? ちょっと自信ないですが、頑張ります!」
宮古くんも、ノッテきた。しかし、微笑む彼女の後ろで虚ろな瞳に変わってしまっている人がいる。
顔が真っ青で、魂が抜けているように見えてしまう。
ゾクっと嫌な感じがしてきた。この太陽のような笑顔と、沈んだ表情に何かが隠されている。
そして、研究会が解散になる直前まで一関先輩は解放されることはなく、終わると同時に、縄が解かれた。
「お、終わった……あぁ、終わってしまう」
ポトポトと涙を流しながら、一人沈んでいる先輩、宮古くんが声をかけようとしたとき、矢島先輩が停止させた。
「ストップ! 覚のことは気にしないでいいから、ほら、今日はもうお終い! 終了ォ‼」
ググっと背中を押され、強制的に部屋の外に追い出されてしまう。
「じゃぁ、準備があるから、研究会は週末までお休みね♪」
「え⁉ それってどういう意味……」
ピシャンッ‼
勢いよくドアが閉められてしまう。
「じゅ、準備って?」
隣にいる彼に聞いてみた。
「わからない、けれど、なんだろう、胸騒ぎしかしないんだよね」
晴香は、今日はジャージー・デビルの特集だ! と、喜んで全力で走って向かってしまう。
彼女の脳内は、常にUMAで溢れていると言っても、過言ではないかもしれない。
一人で来たが、宮古くんとは会っていないので、もしかすると既に部屋にいるかも?
そう思って、小さくノックをしてから入る。
連日、一関先輩に恋愛の名言? を、唐突に言われ続けているので、心構えをしっかりと持ち、部屋に入った。
「やっほー! ヒナちゃん! いらっしゃい♪」
「ゔうぅ‼」
油断していた。 まさか、部屋に入るなり一関先輩が椅子に縛り付けられ、口は布で覆われているなんて、誰も想像できないだろう。
「え、えっと、失礼しました‼」
見てはいけない現場を見てしまった感があるので、全力でその場から逃げようとする。
「あ! ちょっと、待ってこれは違うんだから!」
先輩の声が聞こえるが、あえて無視をしよう。
そう思って振り返り、逃げ出そうとしたとき、ボフっと誰かの体にぶつかってしまった。
「ふぐぅ……」
突然視界が真っ黒になり、ほんのりとシトラス系の香りが漂ってくる。
それに、なんだろう、思った以上に筋肉質な胸筋から伝わる熱に驚いてしまう。
「あ、二戸さん! ごめんなさい」
声の感じからいって、宮古くんであろう。
最初は細い印象だったけれど、体育や今触れた感じからいって、意外と鍛えている。
それに、ちょっと良い匂いがする。
「す、すみません、こっちがぶつかってしまって」
いつまで彼の胸に顔を埋めているのか! 心地よい感じがして、思わず少しだけ離れがたいと思ってしまったが、よくよく考えたら、かなり恥ずかしいことだ。
「えい! ヒナちゃん捕まえた」
そんな事をしているうちに、矢島先輩に背中から抱き着かれ、捕まってしまう。
現状を理解できていない彼は、部屋と私たちを交互に見つめて、苦笑を浮かべていた。
「お? イオくんも、ようこそ! 覚は気にしなくていいから、部屋に入って」
私も無理やり向きを変えられ、そのままソファーに座らせられる。
視界の端には、ジタバタと暴れる一関先輩がいるも、あまり見ないように心がけた。
「実は、昨日ヒナちゃんには連絡したけど、恋研に念願の新人さんが入ってくれました! と、言うことで急遽、歓迎会と題してプチ遠足をやりたいと思います! イエーイ♪」
プ、プチ遠足⁉ 突然の企画に内心で驚いてしまう。
それで、なぜ一関先輩が縄で縛られているのか理解できない。
「それで、コレが企画書ね」
そう言って、矢島先輩は私たちにプチ遠足なるものの企画書を配ってくれた。
学園から一駅離れた海沿いの街にある公園に行き、お昼を食べようという内容で、特になにするわけでもなく。ただ行ってお昼を食べるだけのようだ。
「どう? 最初の親睦会にしては、名案だと思うだけど」
「そうですね。その日でしたら特に用事はありませんし、雨が降っても近くに雨を防げる施設もありますし、どちらにせよ楽しめそうですね」
宮古くんが嬉しそうに補足してくれた。
なるほど、天候に左右されずに開催は可能ということか、確かに、先輩たちや彼と一気に仲良くなれるチャンス。
入りたての学園で、ずっと緊張状態が続いていたが、程よい息抜きになりそうだ。
「そ、それなら、私も参加できます。特にやることも無いし、せっかくなので」
「OK! じゃぁ決まりね、あ、それと覚は強制ね」
ギロリと睨みつけて一関先輩を脅している。
今まで抵抗していたが、諦めたかのように項垂れてしまった。
だから、一体何があるというのだ⁉
「それで、当日なんだけど、お互いお手製のお弁当を作って持参ね」
ニッコリと微笑みながら提案してくれる。
料理はあまりしたことがないけれど、不得意ではないので、私は問題なかった。
「料理ですか? ちょっと自信ないですが、頑張ります!」
宮古くんも、ノッテきた。しかし、微笑む彼女の後ろで虚ろな瞳に変わってしまっている人がいる。
顔が真っ青で、魂が抜けているように見えてしまう。
ゾクっと嫌な感じがしてきた。この太陽のような笑顔と、沈んだ表情に何かが隠されている。
そして、研究会が解散になる直前まで一関先輩は解放されることはなく、終わると同時に、縄が解かれた。
「お、終わった……あぁ、終わってしまう」
ポトポトと涙を流しながら、一人沈んでいる先輩、宮古くんが声をかけようとしたとき、矢島先輩が停止させた。
「ストップ! 覚のことは気にしないでいいから、ほら、今日はもうお終い! 終了ォ‼」
ググっと背中を押され、強制的に部屋の外に追い出されてしまう。
「じゃぁ、準備があるから、研究会は週末までお休みね♪」
「え⁉ それってどういう意味……」
ピシャンッ‼
勢いよくドアが閉められてしまう。
「じゅ、準備って?」
隣にいる彼に聞いてみた。
「わからない、けれど、なんだろう、胸騒ぎしかしないんだよね」
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