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第一章 始動! 恋愛研究会
喧嘩するほどなんちゃら……
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次の日の放課後に部屋に集まると、瞳を輝かせた矢島先輩が私たちを出迎えてくれた。
「ねぇ! 何を買ってきたの⁉ 見せて!」
同時に帰りのホームルームが終わり、宮古くんと来ていたので、鞄から本を取り出して手渡した。
ちなみに、晴香は今日は活動が休みなようで、昨晩録画したUMAの特集深夜番組を観るために、すぐに帰宅している。
矢島先輩が本を見ている間に、一関先輩が私たちからレシートを貰って、金額を確認すると、ファイルに丁寧にしまい、奥から小さな金庫を取り出して、鍵で開けると、お金を返してくれた。
「ありがとうございます」
「いいんだよ。これは立派な経費、一か月に一人千円までだけどね」
今日は矢島先輩のおかげで、部屋に入るなり意味不明な言葉を聞かずに済んだけれど、こうしていると、至って真面目そうに見える一関先輩。
黙っていればモテそうなのに、不思議だ。
それは矢島先輩もそうで、この人は絶対人気がある。
私が男性だったら、好きになっている確率は高いと思う。
この二人、何がいけないんだろうか? スペックはかなり高いと思うけれど、ただ、少しだけ変わっているというだけだ。
「先輩たちはなぜこの恋愛研究会を設立しようと思ったのですか?」
今まで疑問だったことを聞いてみる。
ピクリと反応したのは矢島先輩だった。
今まで本のページをペラペラとめくっていた手が止まると、私と宮古くんを見つめる。
「えっとね、どこから話そうかな……私と覚って実は幼馴染なの」
そ、それは初耳でだけど、二人の妙に息の合ったやりとりを思い浮かべると納得ができる。
「私たちって、この歳になるまで一回も恋っていうことを経験したことがなかったの、それで、二人で話し合って【恋】ってどんな感じなんだろうって思って、気になったから設立したの」
幼馴染どうしが研究会を設立するのはわかる。だけど、なぜ研究会でなければならないのか⁉ 普段の生活の中で十分に学んで経験できると思うのは、私だけだろうか?
「告はね。誰かがいないとすぐに行動してしまうんだ。彼女のストッパーをこなすのはかなり大変なんだよ」
一関先輩が呆れた顔で話してくる。
「はぁ⁉ 覚だって、普段変なことばかり言って、もっと普通に会話できないの? 私がいないと、人とだって目をあわせられないシャイなのに!」
なるほど、それでいつも本で顔を隠したり、視線を外したりしているのか、それにしても矢島先輩がいないと、つまり何もできない人ということなのだろう。
私たちが買ってきた本をテーブルに置くと、二人は何やら言い合いだした。
それを見ていた私と宮古くんは苦笑し、二人で会話をすることにした。
「どうだった? 少し読めた?」
「うん、本当に少しだけね。言葉も難しいし、解説だけだと不十分だから自分で調べながらだと疲れちゃって」
「そっか、でも恋って本当に普遍的に変わらないテーマの一つなんだね」
普遍的、なにやら小難しい表現をする宮古くん。でも、確かに言われてみれば、私が読んでいる本の人たちは、車も電気もない時代、その中でも恋は常にそばにある。
逆を言えば、未来も残っている可能性が十分にあった。
「無ければ無くても良いと思うけどね」
ボソリと呟く、もっと効率的に将来はなるかもしれない。
あの歌のように、私が経験したみたいに辛いのなら、無くても構わないと思ってしまう。
「そうかな? 僕はまだ経験がないけれど、とても素敵なことだと思うよ。ちょっと抽象的すぎるけどね」
夕日が彼の左頬を染めていく、こちらを向いて恥ずかしそうにしていた。
「素敵な面だけじゃないよ? 辛いことも絶対でてくると思うし」
「だけど、辛いだけだと、もうとっくの昔に無くなっていると思うんだ。それが今でも続いているってことは、きっと何か最後は素敵なことが待っていると僕は考えている」
ふわっと、どこからか風が入り込んできた。
まだ花の香りよりも土埃の感じが色濃く残る風であるが、どこか遠くに菜の花の色が混ざっているように思える。
「そ、そうかもね。確かに、辛いだけだとヒトは止めているよね。だったら、私もいつかステキなことができるかな?」
純粋な気持ちを聞いてみる。 だって、今の私は恋に対し弱腰になっている。
未だ出口が見えないトンネルを彷徨っているような感覚に似ていた。
「まだ経験のない僕が言うのもなんだけど、大丈夫! きっと素敵なことが待っているよ」
優しい声が頭の上から降り注いでくる。
どこか、温もりのある声がポンと肩に触れると、一瞬で弾け綺麗な音色に変わる。
不思議な感覚だった。 なんだか、少しだけ光が見えた気がする。
「ちょっと! ヒナちゃんにイオリくんはどう思う⁉」
いきなり横から矢島先輩が声をかけてきた。
「告と俺、どっちが言ってることが正と思う?」
ど、どうしよう。 まったく二人の会話を聞いていなかった。
それは彼も同じで、返答に困ってしまう。
どこかイライラした表情が似ているような気がする。
何か言わなければと考えていると、矢島先輩が私たちが何も言えないのは一関先輩に原因があると言い出した。
それに対し、一関先輩は矢島先輩が無鉄砲過ぎると忠告しながら、うまく怒りをかわしている。
「なんだか、仲良いですね」
ポロっと思いついたことを口に出してしまった。
「ねぇ! 何を買ってきたの⁉ 見せて!」
同時に帰りのホームルームが終わり、宮古くんと来ていたので、鞄から本を取り出して手渡した。
ちなみに、晴香は今日は活動が休みなようで、昨晩録画したUMAの特集深夜番組を観るために、すぐに帰宅している。
矢島先輩が本を見ている間に、一関先輩が私たちからレシートを貰って、金額を確認すると、ファイルに丁寧にしまい、奥から小さな金庫を取り出して、鍵で開けると、お金を返してくれた。
「ありがとうございます」
「いいんだよ。これは立派な経費、一か月に一人千円までだけどね」
今日は矢島先輩のおかげで、部屋に入るなり意味不明な言葉を聞かずに済んだけれど、こうしていると、至って真面目そうに見える一関先輩。
黙っていればモテそうなのに、不思議だ。
それは矢島先輩もそうで、この人は絶対人気がある。
私が男性だったら、好きになっている確率は高いと思う。
この二人、何がいけないんだろうか? スペックはかなり高いと思うけれど、ただ、少しだけ変わっているというだけだ。
「先輩たちはなぜこの恋愛研究会を設立しようと思ったのですか?」
今まで疑問だったことを聞いてみる。
ピクリと反応したのは矢島先輩だった。
今まで本のページをペラペラとめくっていた手が止まると、私と宮古くんを見つめる。
「えっとね、どこから話そうかな……私と覚って実は幼馴染なの」
そ、それは初耳でだけど、二人の妙に息の合ったやりとりを思い浮かべると納得ができる。
「私たちって、この歳になるまで一回も恋っていうことを経験したことがなかったの、それで、二人で話し合って【恋】ってどんな感じなんだろうって思って、気になったから設立したの」
幼馴染どうしが研究会を設立するのはわかる。だけど、なぜ研究会でなければならないのか⁉ 普段の生活の中で十分に学んで経験できると思うのは、私だけだろうか?
「告はね。誰かがいないとすぐに行動してしまうんだ。彼女のストッパーをこなすのはかなり大変なんだよ」
一関先輩が呆れた顔で話してくる。
「はぁ⁉ 覚だって、普段変なことばかり言って、もっと普通に会話できないの? 私がいないと、人とだって目をあわせられないシャイなのに!」
なるほど、それでいつも本で顔を隠したり、視線を外したりしているのか、それにしても矢島先輩がいないと、つまり何もできない人ということなのだろう。
私たちが買ってきた本をテーブルに置くと、二人は何やら言い合いだした。
それを見ていた私と宮古くんは苦笑し、二人で会話をすることにした。
「どうだった? 少し読めた?」
「うん、本当に少しだけね。言葉も難しいし、解説だけだと不十分だから自分で調べながらだと疲れちゃって」
「そっか、でも恋って本当に普遍的に変わらないテーマの一つなんだね」
普遍的、なにやら小難しい表現をする宮古くん。でも、確かに言われてみれば、私が読んでいる本の人たちは、車も電気もない時代、その中でも恋は常にそばにある。
逆を言えば、未来も残っている可能性が十分にあった。
「無ければ無くても良いと思うけどね」
ボソリと呟く、もっと効率的に将来はなるかもしれない。
あの歌のように、私が経験したみたいに辛いのなら、無くても構わないと思ってしまう。
「そうかな? 僕はまだ経験がないけれど、とても素敵なことだと思うよ。ちょっと抽象的すぎるけどね」
夕日が彼の左頬を染めていく、こちらを向いて恥ずかしそうにしていた。
「素敵な面だけじゃないよ? 辛いことも絶対でてくると思うし」
「だけど、辛いだけだと、もうとっくの昔に無くなっていると思うんだ。それが今でも続いているってことは、きっと何か最後は素敵なことが待っていると僕は考えている」
ふわっと、どこからか風が入り込んできた。
まだ花の香りよりも土埃の感じが色濃く残る風であるが、どこか遠くに菜の花の色が混ざっているように思える。
「そ、そうかもね。確かに、辛いだけだとヒトは止めているよね。だったら、私もいつかステキなことができるかな?」
純粋な気持ちを聞いてみる。 だって、今の私は恋に対し弱腰になっている。
未だ出口が見えないトンネルを彷徨っているような感覚に似ていた。
「まだ経験のない僕が言うのもなんだけど、大丈夫! きっと素敵なことが待っているよ」
優しい声が頭の上から降り注いでくる。
どこか、温もりのある声がポンと肩に触れると、一瞬で弾け綺麗な音色に変わる。
不思議な感覚だった。 なんだか、少しだけ光が見えた気がする。
「ちょっと! ヒナちゃんにイオリくんはどう思う⁉」
いきなり横から矢島先輩が声をかけてきた。
「告と俺、どっちが言ってることが正と思う?」
ど、どうしよう。 まったく二人の会話を聞いていなかった。
それは彼も同じで、返答に困ってしまう。
どこかイライラした表情が似ているような気がする。
何か言わなければと考えていると、矢島先輩が私たちが何も言えないのは一関先輩に原因があると言い出した。
それに対し、一関先輩は矢島先輩が無鉄砲過ぎると忠告しながら、うまく怒りをかわしている。
「なんだか、仲良いですね」
ポロっと思いついたことを口に出してしまった。
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