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第一章 始動! 恋愛研究会
善は急げ
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「じゃあね!」
「うん、またね」
帰りがバラバラになることが、今後は増えていくだろうから、予めさよならを伝えて別れる。
恋愛研究会の部屋の前に到着するなり、なんだか緊張してきた。
深呼吸を大きく一度行い、ノックして入る。
「はぁーい!」
矢島先輩の声が聞こえ、ゆっくりと扉を開けると、一番最初に目に入ったのは、昨日と同じように西日を浴びながら読書をしている一関先輩だった。
「At the touch of love, everyone becomes a poet」
「え?」
チラッと目があった瞬間に意味の解らない英語を言われると、人間誰でも固まるのがわかる。
あまりにも唐突過ぎて、まったく聞き取れなかった。
「愛に触れると誰でも詩人になる。哲学者であるプラトンの言葉だけど、知っている?」
「い、いえ、存じませんねぇ」
頬が引き攣る。もしかすると、毎回ここに来るたびに、このやり取りをしなければならないのだろうか?
「もう! 覚ったら、いい加減にしなさいよ。ヒナちゃん困っているでしょ!」
矢島先輩が横から私たちの間に入ってくる。
先輩の後ろには、私より先に来ていた宮古くんが苦笑しながら座っていた。
「どうも、僕も何か英文で言われたけど、全然理解できなくて……」
誰にでも分け隔てなく、ああやって接しているのは、ある意味凄い。
あの勉強のベクトルを別の方向に向けると、本当は凄い人なのでは? そんなことを考えていると、矢島先輩に怒られた一関先輩が私たちにお茶を用意してくれる。
「はい、いらっしゃい♪ いやぁ、よかった。昨日だけ来て、あとは来ないかと心配していたけど! 二人ともちゃんと来てくれて本当に嬉しいよ」
ニコニコと本当に嬉しそうに、接してくれた。
「じゃぁ、全員集まったので、さっそく作戦会議という名の今後についての、大体の説明をしちゃいましょう!」
チラッと、一関先輩に目線で合図を送ると、棚から人数分の紙が出てくる。
その中身を確認してみると、一人一作品、広義の意味での恋愛に関する作品を一つ読んだり、観たりし勉強すること。
そのためのコツが書かれている。
手書きでコピーしたもののようで、矢島先輩の字だろうか? 綺麗な文字で、きっちりとしていた。
「読んでくれた?」
「はい、読みました」
宮古くんが、答えてくれる。 私も、頷いて答えた。
「じゃぁ、さっそく今日でも本屋さんとかに行って、買ってきてもいいよ! 一人、本一冊千円未満なら、経費で落とせるから、必ずレシートを持ってきてね」
「今日ですか?」
「そう、善は急げって言うじゃない! だから、行ってきて」
満面の笑みで言われると、何も言い返せない。
ただ、何もしないよりは明確な指示があるので、その点はとても良いと思う。
半ば無理やり部屋の外に追い出された私たち、お互い向き合って苦笑を浮かべてしまう。
「そ、それじゃあ、せっかくだから?」
「そうだね、行こうか」
ぎこちなく歩き出していく。 資料と言われても、ぱっと浮かんでこないので、とりあえず、一関先輩のように本でも買っておけば間違いなさそうだ。
「あ、そう言えば、私ってここの地理詳しくないんだった……」
自分の地元から離れているため、学園周辺の地図が頭に浮かんでこない。
辛うじて、駅から学園までの道のりぐらいしかわからない。
「え? 僕もなんだけど……」
「そう言えば、宮古くんって地元離れているの?」
以前、晴香から聞いていたことを訊ねてみる。
「うん、離れているって言えば離れているね、二戸さんも地元は遠いの?」
素直に答えた。 すると、自分よりも離れた場所から通学していることに驚き、凄いと言ってくれる。
凄いとは思わない、朝も苦手ではないし、むしろ夜遅くまで起きているのが、苦手である。
「で、どうしようか?」
玄関まで来てから考え始める。 宮古くんは、鞄から携帯電話を取り出して、ポチポチと画面を操作すると、私にみせてくれた。
「ここ、学園から近いよ」
街の本屋さんの場所が赤い印で表示されており、最寄の本屋さんまで、徒歩で十分程と記載されていた。
「じゃぁ、ここに行ってみようかな?」
「そうだね、とりあえず、行ってみて決めようか」
もしかしたら、彼は映画とかの方がよかったのでは? なんて、考えてしまう。 だけど、本屋さんを探してくれたのだから、まずはそこに行ってみようと思う。
学園から目的地まで、緩やかな坂道だったこともあり、思ったよりも早めに到着できた。
街の小さな本屋さんで、学園から近いというこもあり、大学の入試対策の本がズラリと並んでいる。
店内に入ると、眼鏡をかけた店主さんらしき人が小さな声で「いらっしゃい」と言ってくれる。
「どこから探そうか?」
小さいと言っても、そこは本屋、多くの本が棚にびっしりと並んでおり、一番目立つ場所には、最近ニュースになった作家さんの新刊が置かれていた。
「とりあえず、予算は一人千円までだから……」
奥に進んでいき、文庫本のコーナーに行き、棚に並んでいる本のタイトルを左から順に見ていく。
彼も隣で一緒になって探していた。 この小さなお店の一角で二人でいると、自然と距離が近くなってしまう。
隣を見ると、宮古くんの腕が見える。 この細い腕で、あの強烈なアタックをくりだしていた。
なんだろう、ギャップが凄いというのか、人は見かけによらないとはよく言ったものだ。
「うん、またね」
帰りがバラバラになることが、今後は増えていくだろうから、予めさよならを伝えて別れる。
恋愛研究会の部屋の前に到着するなり、なんだか緊張してきた。
深呼吸を大きく一度行い、ノックして入る。
「はぁーい!」
矢島先輩の声が聞こえ、ゆっくりと扉を開けると、一番最初に目に入ったのは、昨日と同じように西日を浴びながら読書をしている一関先輩だった。
「At the touch of love, everyone becomes a poet」
「え?」
チラッと目があった瞬間に意味の解らない英語を言われると、人間誰でも固まるのがわかる。
あまりにも唐突過ぎて、まったく聞き取れなかった。
「愛に触れると誰でも詩人になる。哲学者であるプラトンの言葉だけど、知っている?」
「い、いえ、存じませんねぇ」
頬が引き攣る。もしかすると、毎回ここに来るたびに、このやり取りをしなければならないのだろうか?
「もう! 覚ったら、いい加減にしなさいよ。ヒナちゃん困っているでしょ!」
矢島先輩が横から私たちの間に入ってくる。
先輩の後ろには、私より先に来ていた宮古くんが苦笑しながら座っていた。
「どうも、僕も何か英文で言われたけど、全然理解できなくて……」
誰にでも分け隔てなく、ああやって接しているのは、ある意味凄い。
あの勉強のベクトルを別の方向に向けると、本当は凄い人なのでは? そんなことを考えていると、矢島先輩に怒られた一関先輩が私たちにお茶を用意してくれる。
「はい、いらっしゃい♪ いやぁ、よかった。昨日だけ来て、あとは来ないかと心配していたけど! 二人ともちゃんと来てくれて本当に嬉しいよ」
ニコニコと本当に嬉しそうに、接してくれた。
「じゃぁ、全員集まったので、さっそく作戦会議という名の今後についての、大体の説明をしちゃいましょう!」
チラッと、一関先輩に目線で合図を送ると、棚から人数分の紙が出てくる。
その中身を確認してみると、一人一作品、広義の意味での恋愛に関する作品を一つ読んだり、観たりし勉強すること。
そのためのコツが書かれている。
手書きでコピーしたもののようで、矢島先輩の字だろうか? 綺麗な文字で、きっちりとしていた。
「読んでくれた?」
「はい、読みました」
宮古くんが、答えてくれる。 私も、頷いて答えた。
「じゃぁ、さっそく今日でも本屋さんとかに行って、買ってきてもいいよ! 一人、本一冊千円未満なら、経費で落とせるから、必ずレシートを持ってきてね」
「今日ですか?」
「そう、善は急げって言うじゃない! だから、行ってきて」
満面の笑みで言われると、何も言い返せない。
ただ、何もしないよりは明確な指示があるので、その点はとても良いと思う。
半ば無理やり部屋の外に追い出された私たち、お互い向き合って苦笑を浮かべてしまう。
「そ、それじゃあ、せっかくだから?」
「そうだね、行こうか」
ぎこちなく歩き出していく。 資料と言われても、ぱっと浮かんでこないので、とりあえず、一関先輩のように本でも買っておけば間違いなさそうだ。
「あ、そう言えば、私ってここの地理詳しくないんだった……」
自分の地元から離れているため、学園周辺の地図が頭に浮かんでこない。
辛うじて、駅から学園までの道のりぐらいしかわからない。
「え? 僕もなんだけど……」
「そう言えば、宮古くんって地元離れているの?」
以前、晴香から聞いていたことを訊ねてみる。
「うん、離れているって言えば離れているね、二戸さんも地元は遠いの?」
素直に答えた。 すると、自分よりも離れた場所から通学していることに驚き、凄いと言ってくれる。
凄いとは思わない、朝も苦手ではないし、むしろ夜遅くまで起きているのが、苦手である。
「で、どうしようか?」
玄関まで来てから考え始める。 宮古くんは、鞄から携帯電話を取り出して、ポチポチと画面を操作すると、私にみせてくれた。
「ここ、学園から近いよ」
街の本屋さんの場所が赤い印で表示されており、最寄の本屋さんまで、徒歩で十分程と記載されていた。
「じゃぁ、ここに行ってみようかな?」
「そうだね、とりあえず、行ってみて決めようか」
もしかしたら、彼は映画とかの方がよかったのでは? なんて、考えてしまう。 だけど、本屋さんを探してくれたのだから、まずはそこに行ってみようと思う。
学園から目的地まで、緩やかな坂道だったこともあり、思ったよりも早めに到着できた。
街の小さな本屋さんで、学園から近いというこもあり、大学の入試対策の本がズラリと並んでいる。
店内に入ると、眼鏡をかけた店主さんらしき人が小さな声で「いらっしゃい」と言ってくれる。
「どこから探そうか?」
小さいと言っても、そこは本屋、多くの本が棚にびっしりと並んでおり、一番目立つ場所には、最近ニュースになった作家さんの新刊が置かれていた。
「とりあえず、予算は一人千円までだから……」
奥に進んでいき、文庫本のコーナーに行き、棚に並んでいる本のタイトルを左から順に見ていく。
彼も隣で一緒になって探していた。 この小さなお店の一角で二人でいると、自然と距離が近くなってしまう。
隣を見ると、宮古くんの腕が見える。 この細い腕で、あの強烈なアタックをくりだしていた。
なんだろう、ギャップが凄いというのか、人は見かけによらないとはよく言ったものだ。
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