1 / 37
第一章 始動! 恋愛研究会
入部
しおりを挟む
「恋愛の楽しみは、つまるところ相手が入れ替わることにある」
「へ?」
放課後、部活棟とは違い旧校舎の一番奥の部屋に、廊下に貼られていた案内を見て訪ねてみると、そこには綺麗な顔をした男性が、西日に背を向けながら本を読んでいた。
そして、唐突に変な言葉を投げかけられる。
「モリエールだよ。フランス古典喜劇の大御所で、古典主義三大作家の一人なのだが、知らないのかい?」
さも、知っていて当然という感じで問われてしまう。
そもそも、私は今の言葉があまりにも不意打ち過ぎて、次の行動に移れないでいた。
「やだ、ちょっと可哀そう。固まっちゃっているじゃない、ほら、いいからこっちに来てちょうだい」
不意に、黒板の近くにある教壇の中から声が聞こえてきた。
ぬっと、中から登場したのは、こちらも綺麗な顔をしている女性であった。
「あ、待って、その紙ってもしかして……?」
私の手に持っているチラシを見た女性は、大きく目を開いて近寄ってくる。
「ちょっと! サトル! 入会希望者よ!」
グイっと手を引かれて、無理やり部屋の中に連れていかれてしまった。
まだ、この部屋を訪れて私が口にしたのは「お邪魔します」だけである。
私こと二戸 陽がこの部屋を訪ねたいきさつはこうだ。
昔、ある苦い経験により今まで『恋』というモノに積極的になれずにいた私。
だけど、この津々賀学園に入学が決まり、地元からも離れた学園ということで、思い切って新しい自分を表現してみよう! と、決意した。
入学式から一週間経過し、それぞれが段々と学園生活に慣れてくるタイミングで行動に移り始める。
私も例外ではなく、まずは、過去の想い出を払拭するために何か部活動的なモノにでも入りたいなどと思っていると、この意味不明なチラシが視界の端に入ってくる。
『恋研 あなたの恋を研究して応援します!』
如何にも怪しげな内容であるうえに、他の部活や研究会と違い。
白地の紙に、この文章だけ書かれていた。
少しは絵や活動内容などを記載してもよさそうだが、それでも、私の脳裏から消えることはなく、また自分の過去と向き合うよい切っ掛けになれればと思い、様子を見るために尋ねてみることにした。
「うわぁ、旧校舎って遠いんだね」
「うん、遠いね……」
隣を歩いているのは、この学園に入ってすぐに仲良くなれた南部 晴香。
席が隣とか、何かのグループが一緒など、別にそういったことには関係なく仲良くしてくれている。
お互いの共通点としては、地元から離れており、他に知り合いが居ないというのは、大きな話の取っ掛かりにはなっていた。
私よりも大きくて、スタイルもよい晴香、性格もサバサバしていて、すぐにクラスの人気者になれたのに、中々輪に混ざれない私によくしてくれている。
「でも、晴香が運動できないって意外だったな」
「そう? よく言われるけど、本当に無理、キャッチボールして全力で真後ろに投げられるって自慢になると思う?」
渇いた笑みを思わず浮かべてしまう。
だから、今日はお互い前々から目をつけていた文科系の部活か研究会を尋ねにこうして旧校舎へ来ていた。
「じゃぁね! 陽、私はこっちだから」
「うん、じゃぁね晴香‼」
彼女はオカルト研究会に興味があるようで、よく休みの日は日夜UMAについて研究しているらしく。
最近一番興味があるのは『タキタロウ』と言っていたが、それがどんなタロウさんなのか皆目見当もつかない。
嬉しそうに角を曲がっていく彼女の背中に別れを告げてから、私も目的の場所へ向かって行った。
この研究会に興味があると晴香に相談したところ。
『へぇ、陽ってこれ系に興味があるんだ』
それ以外、何も言ってこないけれど、否定も応援もしてくれなかった。
そんなところが、彼女らしくとても好きなところの一つでもある。
恋に興味があるのかと聞かれると、今はそれほどピンとこない。
あの日以来、私は無意識のうちに恐れているのかもしれない、だから、それを克服できたら自分が変われるような気がしていた。
そのために、学園に入るまえ勉強をして、少しはあか抜けた感じなれたけれど、根が暗い性格なので、今の自分の姿と性格が少し違っているような気がしてならない。
「大丈夫、変われるんだから」
そう自分に言い聞かせて、私は歩いて行く。
克服できたら、きっと変われる。 だから、少し変な感じのする研究会だけど、勇気をだしてノックをするんだ‼
「へ?」
放課後、部活棟とは違い旧校舎の一番奥の部屋に、廊下に貼られていた案内を見て訪ねてみると、そこには綺麗な顔をした男性が、西日に背を向けながら本を読んでいた。
そして、唐突に変な言葉を投げかけられる。
「モリエールだよ。フランス古典喜劇の大御所で、古典主義三大作家の一人なのだが、知らないのかい?」
さも、知っていて当然という感じで問われてしまう。
そもそも、私は今の言葉があまりにも不意打ち過ぎて、次の行動に移れないでいた。
「やだ、ちょっと可哀そう。固まっちゃっているじゃない、ほら、いいからこっちに来てちょうだい」
不意に、黒板の近くにある教壇の中から声が聞こえてきた。
ぬっと、中から登場したのは、こちらも綺麗な顔をしている女性であった。
「あ、待って、その紙ってもしかして……?」
私の手に持っているチラシを見た女性は、大きく目を開いて近寄ってくる。
「ちょっと! サトル! 入会希望者よ!」
グイっと手を引かれて、無理やり部屋の中に連れていかれてしまった。
まだ、この部屋を訪れて私が口にしたのは「お邪魔します」だけである。
私こと二戸 陽がこの部屋を訪ねたいきさつはこうだ。
昔、ある苦い経験により今まで『恋』というモノに積極的になれずにいた私。
だけど、この津々賀学園に入学が決まり、地元からも離れた学園ということで、思い切って新しい自分を表現してみよう! と、決意した。
入学式から一週間経過し、それぞれが段々と学園生活に慣れてくるタイミングで行動に移り始める。
私も例外ではなく、まずは、過去の想い出を払拭するために何か部活動的なモノにでも入りたいなどと思っていると、この意味不明なチラシが視界の端に入ってくる。
『恋研 あなたの恋を研究して応援します!』
如何にも怪しげな内容であるうえに、他の部活や研究会と違い。
白地の紙に、この文章だけ書かれていた。
少しは絵や活動内容などを記載してもよさそうだが、それでも、私の脳裏から消えることはなく、また自分の過去と向き合うよい切っ掛けになれればと思い、様子を見るために尋ねてみることにした。
「うわぁ、旧校舎って遠いんだね」
「うん、遠いね……」
隣を歩いているのは、この学園に入ってすぐに仲良くなれた南部 晴香。
席が隣とか、何かのグループが一緒など、別にそういったことには関係なく仲良くしてくれている。
お互いの共通点としては、地元から離れており、他に知り合いが居ないというのは、大きな話の取っ掛かりにはなっていた。
私よりも大きくて、スタイルもよい晴香、性格もサバサバしていて、すぐにクラスの人気者になれたのに、中々輪に混ざれない私によくしてくれている。
「でも、晴香が運動できないって意外だったな」
「そう? よく言われるけど、本当に無理、キャッチボールして全力で真後ろに投げられるって自慢になると思う?」
渇いた笑みを思わず浮かべてしまう。
だから、今日はお互い前々から目をつけていた文科系の部活か研究会を尋ねにこうして旧校舎へ来ていた。
「じゃぁね! 陽、私はこっちだから」
「うん、じゃぁね晴香‼」
彼女はオカルト研究会に興味があるようで、よく休みの日は日夜UMAについて研究しているらしく。
最近一番興味があるのは『タキタロウ』と言っていたが、それがどんなタロウさんなのか皆目見当もつかない。
嬉しそうに角を曲がっていく彼女の背中に別れを告げてから、私も目的の場所へ向かって行った。
この研究会に興味があると晴香に相談したところ。
『へぇ、陽ってこれ系に興味があるんだ』
それ以外、何も言ってこないけれど、否定も応援もしてくれなかった。
そんなところが、彼女らしくとても好きなところの一つでもある。
恋に興味があるのかと聞かれると、今はそれほどピンとこない。
あの日以来、私は無意識のうちに恐れているのかもしれない、だから、それを克服できたら自分が変われるような気がしていた。
そのために、学園に入るまえ勉強をして、少しはあか抜けた感じなれたけれど、根が暗い性格なので、今の自分の姿と性格が少し違っているような気がしてならない。
「大丈夫、変われるんだから」
そう自分に言い聞かせて、私は歩いて行く。
克服できたら、きっと変われる。 だから、少し変な感じのする研究会だけど、勇気をだしてノックをするんだ‼
5
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

アルダブラ君、逃げ出す
んが
児童書・童話
動物たちがのびのびとおさんぽできる小さな動物園。
あるひ、誰かが動物園の入り口の扉を閉め忘れて、アルダブラゾウガメのアルダブラ君が逃げ出してしまいます。
逃げ出したゾウガメのあとをそっとついていくライオンのオライオンと豚のぶた太の三頭組が繰りひろげる珍道中を描いています。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
【完結】だからウサギは恋をした
東 里胡
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞応募作品】鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」
入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。
困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。
自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。
※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる