恋研‼ ~恋する研究会!?~

安東門々

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第一章 始動! 恋愛研究会

入部

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「恋愛の楽しみは、つまるところ相手が入れ替わることにある」

「へ?」

 放課後、部活棟とは違い旧校舎の一番奥の部屋に、廊下に貼られていた案内を見て訪ねてみると、そこには綺麗な顔をした男性が、西日に背を向けながら本を読んでいた。

 そして、唐突に変な言葉を投げかけられる。

「モリエールだよ。フランス古典喜劇の大御所で、古典主義三大作家の一人なのだが、知らないのかい?」

 さも、知っていて当然という感じで問われてしまう。 
 そもそも、私は今の言葉があまりにも不意打ち過ぎて、次の行動に移れないでいた。

「やだ、ちょっと可哀そう。固まっちゃっているじゃない、ほら、いいからこっちに来てちょうだい」

 不意に、黒板の近くにある教壇の中から声が聞こえてきた。
 ぬっと、中から登場したのは、こちらも綺麗な顔をしている女性であった。

「あ、待って、その紙ってもしかして……?」

 私の手に持っているチラシを見た女性は、大きく目を開いて近寄ってくる。
 
「ちょっと! サトル! 入会希望者よ!」

 グイっと手を引かれて、無理やり部屋の中に連れていかれてしまった。
 まだ、この部屋を訪れて私が口にしたのは「お邪魔します」だけである。

 私こと二戸にのへ ひなたがこの部屋を訪ねたいきさつはこうだ。
 昔、ある苦い経験により今まで『恋』というモノに積極的になれずにいた私。
 
 だけど、この津々賀つつが学園に入学が決まり、地元からも離れた学園ということで、思い切って新しい自分を表現してみよう! と、決意した。

 入学式から一週間経過し、それぞれが段々と学園生活に慣れてくるタイミングで行動に移り始める。
 私も例外ではなく、まずは、過去の想い出を払拭するために何か部活動的なモノにでも入りたいなどと思っていると、この意味不明なチラシが視界の端に入ってくる。


『恋研 あなたの恋を研究して応援します!』
 
 如何にも怪しげな内容であるうえに、他の部活や研究会と違い。
 白地の紙に、この文章だけ書かれていた。 
 少しは絵や活動内容などを記載してもよさそうだが、それでも、私の脳裏から消えることはなく、また自分の過去と向き合うよい切っ掛けになれればと思い、様子を見るために尋ねてみることにした。

「うわぁ、旧校舎って遠いんだね」

「うん、遠いね……」

 隣を歩いているのは、この学園に入ってすぐに仲良くなれた南部なんぶ 晴香はるか
 席が隣とか、何かのグループが一緒など、別にそういったことには関係なく仲良くしてくれている。
 
 お互いの共通点としては、地元から離れており、他に知り合いが居ないというのは、大きな話の取っ掛かりにはなっていた。
 私よりも大きくて、スタイルもよい晴香、性格もサバサバしていて、すぐにクラスの人気者になれたのに、中々輪に混ざれない私によくしてくれている。

「でも、晴香が運動できないって意外だったな」

「そう? よく言われるけど、本当に無理、キャッチボールして全力で真後ろに投げられるって自慢になると思う?」

 渇いた笑みを思わず浮かべてしまう。
 だから、今日はお互い前々から目をつけていた文科系の部活か研究会を尋ねにこうして旧校舎へ来ていた。

「じゃぁね! 陽、私はこっちだから」

「うん、じゃぁね晴香‼」

 彼女はオカルト研究会に興味があるようで、よく休みの日は日夜UMAについて研究しているらしく。
 最近一番興味があるのは『タキタロウ』と言っていたが、それがどんなタロウさんなのか皆目見当もつかない。
 
 嬉しそうに角を曲がっていく彼女の背中に別れを告げてから、私も目的の場所へ向かって行った。
 この研究会に興味があると晴香に相談したところ。

『へぇ、陽ってこれ系に興味があるんだ』
 
 それ以外、何も言ってこないけれど、否定も応援もしてくれなかった。
 そんなところが、彼女らしくとても好きなところの一つでもある。

 恋に興味があるのかと聞かれると、今はそれほどピンとこない。
 あの日以来、私は無意識のうちに恐れているのかもしれない、だから、それを克服できたら自分が変われるような気がしていた。
 
 そのために、学園に入るまえ勉強をして、少しはあか抜けた感じなれたけれど、根が暗い性格なので、今の自分の姿と性格が少し違っているような気がしてならない。

「大丈夫、変われるんだから」

 そう自分に言い聞かせて、私は歩いて行く。
 克服できたら、きっと変われる。 だから、少し変な感じのする研究会だけど、勇気をだしてノックをするんだ‼

  
 
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