私の守護者

安東門々

文字の大きさ
上 下
52 / 54
最終章 私の守護者

私の守護者 ⑦

しおりを挟む
「わ、私は、正直凄く嬉しいです……! こうやって家族の前で座っていられのは、彼がいなければ絶対にありえませんでした」

「私も、お嬢様をお守りできるなら、本望でございます」

 私たち二人の意見を聞くと、母は勝ち誇ったように父に向き直る。
 父は頭に手をあてながら、横に数回首を振ると、椅子に腰かけた。

「もう、好きにしてくれ……。 うぅ、愛が愛がぁぁ! これだからイケメンは嫌いなんだぁ!」

 あまつさえ、泣きだす始末。 
 なんだろう、こう立派に見えていた父の像が崩れ去ろうとしている。

「はぁ! スッキリした。 ってことで、契約しましょ」

 母は彼の手をとると、無理やり立たせ私の目の前まで連れてくる。

「さ、どうぞ、娘のボディーガードを任せたからね!」

 ドンっと背中を強く叩く、これで契約成立なのだろうか? 色々省いているような気もするが、このさいはどうでもよい。
 彼とこれからも一緒にいられるなら。

 トクン――。 トクン……。 心臓の鼓動が増していく。
 彼を見るたびに、心に甘い波紋が波打ち、瞳が潤むのがかわった。

 少しだけ困った顔をしていた彼だが、姿勢を正すと私の前にひざまづき、頭を垂れながら右手を掴んで、そっと唇の前までもっていく。
 それだけでも、心臓が破裂しそうなほど暴れだし、体中が強張っていく。

「お嬢様、今後、いかなる時もあなた様をお守りすることを誓います」
 
 言い終わると、そっと手の甲に口づけをしてくる。
 柔らかく、そして力強い、なんとも心地のよい口づけなのだろうか。

「わぁーい! 今夜はお祝いよぉ! ひゃっほー! 式は海外がいいなぁ」

 クルクルと舞う母に、机を涙で濡らす父。 
 私は左手でペンダントを撫でた。

 刻まれた花の名前は【カランコエ】花言葉は。

【幸福を告げる】

 そして。

【あなたを守る】
しおりを挟む

処理中です...