私の守護者

安東門々

文字の大きさ
上 下
51 / 54
最終章 私の守護者

私の守護者 ⑥

しおりを挟む
 ASHINAの重斗が権力と財力にものを言わせて、すぐに出て来たを知ったのは、あの日から一週間後だった。

「そう、でも一週間はいたのね」

「えぇ、一週間いたようで」

「ずいぶんと待遇がよかったんじゃい?」

「それはもちろん、高級ホテル並みかと」

 もちろん、そんなわけはないと信じているが、あの人ならやりかねない。  
 しかし、彼がいてくれれば今後狙われる可能性は極めて低いだろう。
 
 そして今日は父に私たちは呼ばれていた。

「お待たせいたしました」

「なに? お父様」

 渋い顔をしながら、座るように促してくれる。
 一度、強めに咳ばらいをしながら淡々と語りだした。

「さて、蒲生くん……。 娘の警護、ご苦労」

「はい、ありがとうございます」

「それで、今後のASHINAの動向ではあるが、おそらく再び娘が狙われる可能性は限りなく低いであろう、よって君の今後の処遇を考えたい」

 ドクンッーー!

 心臓が飛び跳ねる。 何を言っているの? 彼の処遇? 
 横目で彼を確認してみるが、微動だにしていない。
 なんだかとても寂しい気持ちになった。

「これは、私の意見ではないが、君の存在を欲している人がいるそうだ。君の会社から連絡も入っている…。 ここまで面倒をかけて申し訳ないが、今後は元のよう……」

「まっ!」

 私が声を出そうとしたとき、部屋の扉が勢いよく開いた。

「その話! ちょっと待ったぁぁあ!」

 あまりの唐突さに、蒲生さんの顔も強張っている。
 そして、こんな派手な登場をする人を私はこの世界で一人しかしらない。

「お、お母さん⁉」

「ハロー皆さん、急にごめなさいねぇ」

「急になんで‼」

 父がうろたえる。
 蒲生さんは、どうしてよいのかわからず私と母を交互にみるしかできないでいた。

「だって、彼との契約更新をしないってことでしょ? それはちょっとあんまりじゃないの?」

 そう言って、母は彼の隣まで歩いて行く。
 こう言ってはなんがら、母は凄くスタイルもよく美人だとおもう、いつも口癖で「あの人に似なくてよかった♪」と私に言ってくる。
 もちろん、あの人とは父のことであるが。

「どれどれ……。 へぇ、ふむふむ」

 ジロジロと蒲生さんの全身を見ていく。

「あ、あの何か?」

「よし! 合格! 文句なしのイケメン、しかも運動神経も抜群ときた。これは私の夢がまた一つ叶いそうね」

「ば、バカなことを言うな! 何を考えている⁉」

 今まで以上に狼狽しだしたお父様、それをニタニタと見つめる母。

「あら、あなただって理解しているのでは? ASHINAの御曹司が綺麗さっぱり諦めてくれるっていう文言を本当に信じるの? そして、娘を守り切れるのは、現状彼だけよ」

 そう言って、蒲生さんを振り向くとニッコリと微笑む。

「この顔と愛か……。 す、すごいのが誕生しそうね」

 キラーン。
 母の瞳が怪しく光りだし、背後に威圧感のようなモノが見えだしてきた。

「し、しかし。 い、イケメンはぁ」

 何を先ほどから言っているのだこの二人は、なにか根本的に違う次元の話のように思えたてくる。
 
「だまらっしゃい! もうあなたは引っ込んでて!」

 グチグチとこちらに聞こえないようにつぶやく父に対し、母一喝しその場を鎮めた。

「そうそう、なら今から契約を破棄してちょうだい、代わりに私個人があなたと契約するは、えっと…」

「蒲生 盛矢です」

「そうそう、盛矢くん、それで構わないでしょ?」

「え、えっと、それは個人的にという意味合いですか?」

「そう言ってるじゃない、あぁ、大丈夫あなたの会社の社長には私から言っとくから安心して、彼、私には逆らえないから」

 ぐふふふふと、不敵に笑う母。
 なんだか、彼女が現れてから世界の進む時間の感覚が早くなったように思える。

「え、そ、それでは、私は具体的になにをすれば?」

 未だに理解が追いついていない蒲生さん、大丈夫だ私も理解できていない。

「そ、それはあまりにも横暴なのでは?」

 お父様が何か必死に伝えようとしていが、母はついに聞く耳すらもたない。

「何を? そうね。 私と契約していただけるなら、今後、未来永劫! 娘の専属ボディーガードをやっていただきたいの、それこそ病める時も、健やかなときも」

 なぜ、口角が下がりだらしのない顔になるのか!
 セリフの端に含みのある単語が混ざっているのも気になる。

 それでも、母の申し出は凄く嬉しかった。
 純粋に、彼と一緒にいられるのを私は喜んでいる。

「どう? 愛と盛矢くん、異論はあるかしら?」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俯く俺たちに告ぐ

青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】 仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。 ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が! 幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

猫の先生は気まぐれに~あるいは、僕が本を読む理由

中岡 始
青春
中学生の陽向の前に、ある夜突然現れたのは、一匹のキジトラ猫。 「やっと開けたか」 窓を叩き、堂々と部屋に入り込んできたその猫は、「トラ老師」と名乗り、陽向にだけ言葉を話す不思議な存在だった。 「本を読め。人生がちょっとはマシになるかもしれんぞ」 そんな気まぐれな言葉に振り回されながらも、陽向は次第に読書の魅力に気づき始める。 ただの文字の羅列だったはずの本が、いつしか新しい世界の扉を開いていく。 けれど、物語のような劇的な変化は、現実には訪れないはずで──。 「現実の中にも、物語はある」 読書を通して広がる世界。 そして、陽向とトラ老師の奇妙な関係の行方とは。 これは、一人の少年と一匹の猫が織りなす、終わりのない物語の始まり。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

俺は決してシスコンではないはず!〜周りはシスコンと言うが、ただたんに妹が可愛すぎるだけなのだが?〜

津ヶ谷
青春
 東條春輝は私立高校に通う2年生だった。 学校では、書道部の部長を務め、書の世界でも、少しずつ認められてきていた。  プロのカメラマンを父に持ち、1人で生活することの多かった春輝。 そんな時、父の再婚が決まった。 春輝は特に反対せず、父の再婚を受け入れた。  新しい母は警察官僚で家にほとんど帰らないが、母の連子である新しい妹は人見知りな所があるが、超絶美少女だった。  ほとんど家に帰らない両親なので春輝は新しい妹、紗良とのほぼ2人暮らしが幕を開ける。  これは、兄妹の甘々な日常を描いたラブコメディ。

処理中です...