私の守護者

安東門々

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最終章 私の守護者

私の守護者 ④

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 中々複雑な品を頂戴してしまった……。
 あんな笑顔で言われると、なんとも返しようがない。
 けれども、彼からいただいた品というのは、これが初めてのような気がした。

 そう思って、黙ってそのペンギンを見ていると、なぜか凄く愛着がわいてくる。
 むしろ愛おしい。

 大切に鞄にしまい、このお店での買いものを終えると、足りないものを購入するため、車に乗ってホームセンターを目指してく。

 主要道路を進んでいたのに、なぜか横の細い道へ入る蒲生さん、私は不思議に思い、彼を見るといつになく真剣な表情になり、しきりにバックミラーで背後を気にしていた。
 
「さて、次はホームセンターですが、お嬢様……。 しっかりつかまっててください!」

「え⁉」

 ブワアッン‼ と、車のエンジン音が変わると、体が横に弾かれそうになるが、ぴっちりとしたシートがそれを防いでくれる。

「ちょ、ちょっと! どうしたのよ⁉」

「いや、気のせいかと思っておりましたが、気のせいではないですね! 間違いないですASHINAです!」

 ちらりと後ろを手鏡で確認すると、黒いセダンタイプの外車二台が、私たちを追って猛スピードで狭い道路を走ってくる。

「こっちはラリー車です。 任せてください」

「言っている意味がわからないけど、任せるわ」

 ブレーキとギアを上手に扱い、急角度な角を曲がる。
 それに慌てたように着いてくる車は、ドンドンと引き離されていく。

「やった!」

「いえ、まだ油断できません、お嬢様は警察へ連絡を!」

 私が鞄から携帯端末を取り出そうとしたとき、衝撃が走った。

「きゃぁ‼」

「グッ!」

 助手席側の車のサイドミラーが破損し、車体にも大きな傷ができた。
 後ろにいる二台だけかと思っていたが、違法改造したバイクが数台、周りを囲んでいる。
 後ろに乗っていた人が、交差点を過ぎるタイミングでレンガを投げてきたのだ。

「なんて人たちなの⁉」

「それよりも、あのバイク派手な見てくればかりに目がいきますが、相当よく改造されています。しかも乗り手も上手い!」

 狭い道では、小回りのきくバイクが有利だと言い出した。

「どうするの? 大きな道路に出る?」

「いや、おそらく見た感じだと主要道路へ抜ける場所は網を張られているかと、しくじった! まんまと狭い場所に誘われた」

 苛立ちを隠さずに運転を続ける彼は、おもむろにシートの横につくられたポケットに手を入れるとあるものを取り出すが、それを見た私は思わず驚いてしまう。

「そ、それって……」

「残念ながら偽物ですよ」

 黒く、重厚な光を反射させる銃がとりだされる。

「本物にしか見えないけれど……」

「本物だったらよかったんでしょうが、これは見栄だけの偽物です。勿論、本物も扱えますが、特殊案件だけです」

 ブーンっと運転席の窓を開けて外を確認しだしたかと思うと、銃を構えて撃ちだした。

 パシュッ、パッシュ!

 特殊な音が聞こえたかと思うと、こちらに向かってきていたバイクが急に止まった。

「う、撃てるじゃない!」

「実弾は撃てませんが、それなりの威力のある弾は撃てます。だけど、こうやってビックリさせる程度しかできません、きっと今は驚いて止まりましたが、今後は突っ込んでくるでしょう」

「そ、そんな、逃げきれるの?」

「任せてください!」

 ブォ―――ンっと車がうなりだし、更に狭い道へと入っていく。
 その後ろを複数のバイクが追ってくるが、先頭のバイクの後ろに乗っている人が拡声器を取り出して叫びだした。

『ごらぁ! 停まれ! いつまでも俺たちから逃れると思うなよ!』

 この生理的に受けつけない声には身に覚えがる。

「この声って、もしかして蘆名 重斗⁉」

「えぇ、親玉ね」

「そうですか、大将自ら登場というこうとは、相手は相当焦っていますね。この機会になんとかしましょう」

「なんとかって、いったいどうやって振り切るの?」

 サイドミラーを使って器用に後方に弾を撃つが、今度は相手は怯まずに進んでくる。

『は! そんな豆鉄砲なんざ痛くも痒くもねぇんだよ!』

 車の運転に集中し、ただひたすら道を進んでいく。
 
「そう言えば、この道って信号ないの!?」

「お気づきになられましたか? この区画は珍しく信号がない路地なんですよ。ただ、問題なのは道が極端に狭いことと、もうその区画が終わります!」

 目の前に点滅しだしている信号が見えてくる。
 それでも彼はスピードを緩めることなく、そのまま交差点へ侵入していった。
 私たちが過ぎた直後に、信号は赤に変わり、車が走り出し後続のバイクの集団をせきとめてくれる。

「お、終わったの?」

「まさか、これで引き下がってくれたら楽なんですがね!」

 大通りにでても、油断はできなかった。
 その間に、警察へ連絡を入れようとしたが、急に車が跳ね道路の脇に停車する。

「どうしたの?」

「いや、ちょっと、降りてください! 走りますよ!」

「えぇ!」

 シートベルトを無理やり外され、外に手を引かれながら駆け出していく。
 車をみると、後ろのタイヤがパンクしていた。
 
「これもあの人たちの仕業なの?」

「そうかもしれませんし、違うかもしれません、ただ言えるのは逃げなければ捕まるということです!」

 脇道にそれ、一度身を隠すとすぐに車の近くに大量のバイクが集結する音が聞こえだした。

「ちっ! まだそこまで遠くには行ってないぞ! 探し出せ!」

 ブウウン! と、音を響かせながら散っていく集団。

(やはり、近場に隠れて正解でしたね。あいつら散って戦力を分散させています。遠くに逃げたと思ったんでしょう)

 小声で彼が説明してくれた。
 しかし、状況は変わっていない。 
 追い詰められているのは私たちのほうなのだから。

(どうするの?)

(警察が来るまで持ちこたえます。連絡は私が入れておきましたが、到着までまだしばらくかかりそうです)

 いつの間に、先ほど胸ポケットに手を入れてゴソゴソとしていたのは、連絡をとっていたのか。
 すぐ後ろでバイクが通り過ぎていく。
 身を屈めて息を殺してやり過ごした。

 落ち着くために、彼から預かったペンダントを手に持つ。
 そう言えば、あのペンギンが初めてと思っていたが、出会ったばかりのころにこれを預かっていたのを思い出した。

 いつも肌身離さず持っているので、すでに私の体の一部でもある。
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