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雪どけに咲く花は黄色
おんせん⁉ ⑧
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栞奈が変なことを呟くと、同時に抱きしめられた腕に力がこめられる。
「いや、もう無理……。 反則、どんだけ可愛いのよ」
鮎子も力を入れてくる。 正直とても苦しい。
「く、苦しい」
それでも私を解放する気配がまるで感じられない、無理やり引き離すと頬を赤くしながら小動物を愛でる人のような瞳で見つめられる。
その後は無言で頭を栞奈に撫でられ、鮎子にはお茶を淹れてもらい一言「大丈夫だよ」とだけ言われた。
その一言がとても心強く、私の心に空いた穴はいつの間にかすっぽりと埋まる。
それからは、いつも通りの三人に戻り終始笑いの絶えない空間でいることができた。
性格も趣味もバラバラな私たちが集まって、楽しいコミュニケーションを築いていけている。
一週間に読む本の数は激減したが、友だちと呼べる人は増え、家の人たちからは「お嬢様は明るくなられました」と言われるようになった。
悪戯で「以前は暗かったのですか?」と聞いているが、慌ててしまうので最近は控えている。
部屋の中が暖房で暖まりすぎ、頭の動きが鈍くなりだしたとき、栞奈が窓を全開にしながら告げた。
「よっし! ご飯食べに行こっか!」
時計を確認すると、もうすぐ集合時刻になる。
私の携帯端末にも蒲生さんからメッセージが入り、そろそろ迎えにくるそうだ。
一応浴衣の乱れなどを整え貴重品を金庫に預けると、廊下に出て彼を待つことにした。
「どうも皆さま」
隣の部屋から蒲生さんが出てくる。 凄く久しぶりにあったような気がするが、時間にするとそれほど経過していない。
しかし、こう旅館まで来てもスーツのままなのは、さすがにどうなのだろうか?
普段であればびっしと決まっており、とてもカッコいいのだが、ハッキリ言って旅館の中では異質な感じをうける。
「うわぁ、出たマジメくん」
「うーん、おかしい、いつもならイケメンなのになぜか今はイケメンに見えない」
私の心の内を代弁してくれているのか、二人が一斉に彼を口撃しだした。
「ちょっと、いきなりなんでしょうか⁉」
驚いた蒲生さんは自分の何がいけなかったのかを把握できずにアタフタしだした。
そんな慌てた姿など滅多にみられないので、珍しいと思いつつもなんだか、可愛らしくもある。
そんなやりとりをしているとき、別のフロアに泊まっていた会長も合流する。
「ひ! 酷い! ひどすぎる! 部屋を遠ざけただけでなく、妹へ愛のこもった誘いを無下にするなど、いったいどういった神経をしているんだ!?」
半泣き状態でトボトボと歩いて合流し、何か言っているが鮎子は気にもしていないようで、のんきに今日の夜のテレビ番組を調べていた。
そんなメンタルが強いはずの会長が折れそうになっているのを静観しつつ、私たちは食事をする場所へ赴いた。
会場はバイキング形式で、和食を主体としたメニューになっている。
しかし、テーブルには一人一人用につくられた鍋が置いてあり、そこにスタッフの人が私たちを座らせると火をつけてくれた。
「うむ、うまそうだ!」
いつのまに復活したのか、いつも通りの会長が大はしゃぎで食事を取にいこうとしている。
その後を鮎子が追いかけるかたちで離れていった。
「ちょっと! 子どもじゃないんだから、やめてってば!」
二人のやり取りをみていて、自然と笑いがおきる。
栞奈も大声で笑いたいのを堪えているのか、涙目になりながら口をおさえていた。
「ははは、田村さんのお二人はいつも賑やかで楽しいですね」
蒲生さんまでもが、つられて笑い出してしまう。
このなんとも言えない空気感が私を包んでくれている。
栞奈も食事をとりに席をたち、私たちは他の人が戻ってくるまで二人っきりにりなる。
「お嬢様、楽しいですか?」
「えぇ、凄く楽しい……。 こんな気持ち久しく感じてないかも」
「それは、よかったです。 最近のお嬢様はとても柔らかくなられました」
「それ、皆に言われるけど、以前の私はそんなに硬かったの?」
少し困った表情をする。 みんなそうだ、その後は決まって「いえ、けっしてそのようなことは」と続く。
「うーん、そうですね。 硬いというより表情があまりなかったようなきがします。もちろん喜怒哀楽はあったと思いますが、今のお嬢様はそれが顕著に表現できているのかと」
驚いた。 仏頂面の何も思わない人と思われていたが、そうでもなかったようで安心した。
確かにあまり感情というものを表に出せなかったのは当たっているかもしれない。
「今は私の感情が丸わかりってこと?」
「そうとまでは言っておりませんが、全体的にとても明るくなられたかと」
「それは、いいことなの?」
「良い悪いではなく、お嬢様が楽しまれているのが嬉しいのです」
「?」
楽しむ、確かに楽しいし先ほどもそれが終わると思うと、とたんに悲しくなってしまった。
「いや、もう無理……。 反則、どんだけ可愛いのよ」
鮎子も力を入れてくる。 正直とても苦しい。
「く、苦しい」
それでも私を解放する気配がまるで感じられない、無理やり引き離すと頬を赤くしながら小動物を愛でる人のような瞳で見つめられる。
その後は無言で頭を栞奈に撫でられ、鮎子にはお茶を淹れてもらい一言「大丈夫だよ」とだけ言われた。
その一言がとても心強く、私の心に空いた穴はいつの間にかすっぽりと埋まる。
それからは、いつも通りの三人に戻り終始笑いの絶えない空間でいることができた。
性格も趣味もバラバラな私たちが集まって、楽しいコミュニケーションを築いていけている。
一週間に読む本の数は激減したが、友だちと呼べる人は増え、家の人たちからは「お嬢様は明るくなられました」と言われるようになった。
悪戯で「以前は暗かったのですか?」と聞いているが、慌ててしまうので最近は控えている。
部屋の中が暖房で暖まりすぎ、頭の動きが鈍くなりだしたとき、栞奈が窓を全開にしながら告げた。
「よっし! ご飯食べに行こっか!」
時計を確認すると、もうすぐ集合時刻になる。
私の携帯端末にも蒲生さんからメッセージが入り、そろそろ迎えにくるそうだ。
一応浴衣の乱れなどを整え貴重品を金庫に預けると、廊下に出て彼を待つことにした。
「どうも皆さま」
隣の部屋から蒲生さんが出てくる。 凄く久しぶりにあったような気がするが、時間にするとそれほど経過していない。
しかし、こう旅館まで来てもスーツのままなのは、さすがにどうなのだろうか?
普段であればびっしと決まっており、とてもカッコいいのだが、ハッキリ言って旅館の中では異質な感じをうける。
「うわぁ、出たマジメくん」
「うーん、おかしい、いつもならイケメンなのになぜか今はイケメンに見えない」
私の心の内を代弁してくれているのか、二人が一斉に彼を口撃しだした。
「ちょっと、いきなりなんでしょうか⁉」
驚いた蒲生さんは自分の何がいけなかったのかを把握できずにアタフタしだした。
そんな慌てた姿など滅多にみられないので、珍しいと思いつつもなんだか、可愛らしくもある。
そんなやりとりをしているとき、別のフロアに泊まっていた会長も合流する。
「ひ! 酷い! ひどすぎる! 部屋を遠ざけただけでなく、妹へ愛のこもった誘いを無下にするなど、いったいどういった神経をしているんだ!?」
半泣き状態でトボトボと歩いて合流し、何か言っているが鮎子は気にもしていないようで、のんきに今日の夜のテレビ番組を調べていた。
そんなメンタルが強いはずの会長が折れそうになっているのを静観しつつ、私たちは食事をする場所へ赴いた。
会場はバイキング形式で、和食を主体としたメニューになっている。
しかし、テーブルには一人一人用につくられた鍋が置いてあり、そこにスタッフの人が私たちを座らせると火をつけてくれた。
「うむ、うまそうだ!」
いつのまに復活したのか、いつも通りの会長が大はしゃぎで食事を取にいこうとしている。
その後を鮎子が追いかけるかたちで離れていった。
「ちょっと! 子どもじゃないんだから、やめてってば!」
二人のやり取りをみていて、自然と笑いがおきる。
栞奈も大声で笑いたいのを堪えているのか、涙目になりながら口をおさえていた。
「ははは、田村さんのお二人はいつも賑やかで楽しいですね」
蒲生さんまでもが、つられて笑い出してしまう。
このなんとも言えない空気感が私を包んでくれている。
栞奈も食事をとりに席をたち、私たちは他の人が戻ってくるまで二人っきりにりなる。
「お嬢様、楽しいですか?」
「えぇ、凄く楽しい……。 こんな気持ち久しく感じてないかも」
「それは、よかったです。 最近のお嬢様はとても柔らかくなられました」
「それ、皆に言われるけど、以前の私はそんなに硬かったの?」
少し困った表情をする。 みんなそうだ、その後は決まって「いえ、けっしてそのようなことは」と続く。
「うーん、そうですね。 硬いというより表情があまりなかったようなきがします。もちろん喜怒哀楽はあったと思いますが、今のお嬢様はそれが顕著に表現できているのかと」
驚いた。 仏頂面の何も思わない人と思われていたが、そうでもなかったようで安心した。
確かにあまり感情というものを表に出せなかったのは当たっているかもしれない。
「今は私の感情が丸わかりってこと?」
「そうとまでは言っておりませんが、全体的にとても明るくなられたかと」
「それは、いいことなの?」
「良い悪いではなく、お嬢様が楽しまれているのが嬉しいのです」
「?」
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