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雪どけに咲く花は黄色
おんせん⁉ ⑥
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テーブルに並べてあるお茶菓子の袋を切って中身を取り出し、一口食べながら鮎子の淹れてくれたお茶を飲む。
栞奈は何を思ってか、ずっと外を見てはボーと過ごしている。
「あなたも飲む?」
「ん? 遠慮しとく、これ以上カフェイン摂取するとトイレ近くなって」
「そう、ならいいけど、飲みたいときは遠慮せずに言ってね」
「OK、でもこうやって皆で旅行なんてちょっと前なんて考えられなかったよ」
それは私も思っていた。 自然と今は一緒にいるが、ほんの少し前までは赤の他人状態であったのだ。
「ま、私はずっと愛にラブコール送ってたけど、気付いてくれないもんなぁ」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになるのを慌てて手で押さえようとし、手に持っていた湯呑を落としてしまう。
そして、なぜか鮎子は座布団を抱きしめて栞奈の近くにスライディングをしながら耳を大きくしていた。
「ちょっと! その話を詳しく聞かせてくれぇ!」
息を荒くしながら瞳は血走っている。 それに対し冷静に応えだす栞奈、私はこぼしたお茶の片づけをしながら、彼女の話に耳を傾けていく。
「んーっと、まぁラブって言っても愛してるの意味じゃなくて、ずっとなかよくなりたいと思ってたんだよ」
それを聞いて明らかにテンションが下がる鮎子であったが、栞奈がどうして私と仲良くなりたいのかにも興味があるようで、黙って話を聞いていく。
「実は、一年のときクラスは違ったけど、学園祭のときにステージの手伝いをしたのを覚えてる?」
「え? う、うん覚えているよ」
「私もあそこにいたんだ」
知らなかった。 栞奈があの場にいたなんて、私は初めての学園祭をどうしても成功させたくて、一生懸命動いていたのを覚えている。
二年目の学園祭はとくにすることもなく、ゆっくりと過ごした記憶しかない。
「そうなの? 私、あのとき全然周り見れていなかったから、ちょっと覚えていないの、ごめんなさいね」
「いや、私もとくに愛に絡んでないからわからなくても不思議じゃないよ。 ただ、愛が凄く一生懸命に頑張っているから、なんだか自分も頑張ろうって思えてさ、常に元気を貰ってたの」
自分では、わからないことを行動で埋めようと一生懸命だった気はするが、彼女のにそう思われていたなんて思いしなかった。
「しかも可愛いし、勉強もできるって凄すぎて、でもあんだけ一生懸命ならそうかもって納得できた。 だから私も頑張ろうって思えって部活に打ち込めた」
栞奈が頑張れるキッカケを私がつくったようだけど、無自覚だったためどう反応してよいのか困る。
「で、せっかくだから友だちになりたい私は、それからちょくちょく挨拶だったり、クラス同じになってからは雑務とかで一緒にやるようにしてきたけど、全然こっちを向いてくれないからかなりショックだった」
悪戯っぽく微笑む彼女は近寄ってきて右手を差し伸べてくれる。
「でも、今こうして愛と一緒にいれるから、私は大満足!」
なんだか少し可笑しな物語だが、彼女が私を想ってくれていることは伝わった。
差し伸べられた右手を私の右手が握り返すと、じんわりと力が伝わってくる。
「その、ごめんなさい! 私ってば全然気が付かなくて」
「いやいや、あなたが謝る必要ないでしょ、栞奈がもっと素直なら手っ取り早かったのに」
お茶菓子をハグハグと食べながら鮎子が言ってくる。
その言葉に栞奈は「確かに」と言って二人は笑い出した。
荷物をほどくまえから大盛り上がりの女子部屋に対し、隣の部屋の蒲生さんやなぜか遠くの部屋の会長はどうやって過ごしているのだろうか。
「よっし、ご飯まで時間たっぷりあるからお風呂行こっか!」
鮎子の提案で私たちは揃って入浴の準備を整え温泉に向かって歩き出した。
大浴場の入口には温泉の効能が書かれた看板があり、効能をよく理解してから入っていく。
ここまで来る途中、気持ちよさそうに有料のマッサージ機で眠るおじいちゃんがいたり、休憩室で談話を楽しむ人がいたりと、とても雰囲気が柔らかく素敵だった。
鮎子の携帯端末に兄である白馬会長よりメッセージが入っているようだ。
「げ、本当に気持ち悪い」
心底嫌そうな表情になり私たちにメッセージの文面を見せてくれる。
『親愛なる妹へ。 お風呂にいくなら、一緒に行こうではないか!』
私は一人っ子なので、気持ちはわからないが鮎子が愛されていることは伝わってきた。
私の表情が思った感じと違ったのか、鮎子は不服そうに顔を膨らませて「何にも思わないの⁉」と問い詰めてくる。
栞奈は何を思ってか、ずっと外を見てはボーと過ごしている。
「あなたも飲む?」
「ん? 遠慮しとく、これ以上カフェイン摂取するとトイレ近くなって」
「そう、ならいいけど、飲みたいときは遠慮せずに言ってね」
「OK、でもこうやって皆で旅行なんてちょっと前なんて考えられなかったよ」
それは私も思っていた。 自然と今は一緒にいるが、ほんの少し前までは赤の他人状態であったのだ。
「ま、私はずっと愛にラブコール送ってたけど、気付いてくれないもんなぁ」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになるのを慌てて手で押さえようとし、手に持っていた湯呑を落としてしまう。
そして、なぜか鮎子は座布団を抱きしめて栞奈の近くにスライディングをしながら耳を大きくしていた。
「ちょっと! その話を詳しく聞かせてくれぇ!」
息を荒くしながら瞳は血走っている。 それに対し冷静に応えだす栞奈、私はこぼしたお茶の片づけをしながら、彼女の話に耳を傾けていく。
「んーっと、まぁラブって言っても愛してるの意味じゃなくて、ずっとなかよくなりたいと思ってたんだよ」
それを聞いて明らかにテンションが下がる鮎子であったが、栞奈がどうして私と仲良くなりたいのかにも興味があるようで、黙って話を聞いていく。
「実は、一年のときクラスは違ったけど、学園祭のときにステージの手伝いをしたのを覚えてる?」
「え? う、うん覚えているよ」
「私もあそこにいたんだ」
知らなかった。 栞奈があの場にいたなんて、私は初めての学園祭をどうしても成功させたくて、一生懸命動いていたのを覚えている。
二年目の学園祭はとくにすることもなく、ゆっくりと過ごした記憶しかない。
「そうなの? 私、あのとき全然周り見れていなかったから、ちょっと覚えていないの、ごめんなさいね」
「いや、私もとくに愛に絡んでないからわからなくても不思議じゃないよ。 ただ、愛が凄く一生懸命に頑張っているから、なんだか自分も頑張ろうって思えてさ、常に元気を貰ってたの」
自分では、わからないことを行動で埋めようと一生懸命だった気はするが、彼女のにそう思われていたなんて思いしなかった。
「しかも可愛いし、勉強もできるって凄すぎて、でもあんだけ一生懸命ならそうかもって納得できた。 だから私も頑張ろうって思えって部活に打ち込めた」
栞奈が頑張れるキッカケを私がつくったようだけど、無自覚だったためどう反応してよいのか困る。
「で、せっかくだから友だちになりたい私は、それからちょくちょく挨拶だったり、クラス同じになってからは雑務とかで一緒にやるようにしてきたけど、全然こっちを向いてくれないからかなりショックだった」
悪戯っぽく微笑む彼女は近寄ってきて右手を差し伸べてくれる。
「でも、今こうして愛と一緒にいれるから、私は大満足!」
なんだか少し可笑しな物語だが、彼女が私を想ってくれていることは伝わった。
差し伸べられた右手を私の右手が握り返すと、じんわりと力が伝わってくる。
「その、ごめんなさい! 私ってば全然気が付かなくて」
「いやいや、あなたが謝る必要ないでしょ、栞奈がもっと素直なら手っ取り早かったのに」
お茶菓子をハグハグと食べながら鮎子が言ってくる。
その言葉に栞奈は「確かに」と言って二人は笑い出した。
荷物をほどくまえから大盛り上がりの女子部屋に対し、隣の部屋の蒲生さんやなぜか遠くの部屋の会長はどうやって過ごしているのだろうか。
「よっし、ご飯まで時間たっぷりあるからお風呂行こっか!」
鮎子の提案で私たちは揃って入浴の準備を整え温泉に向かって歩き出した。
大浴場の入口には温泉の効能が書かれた看板があり、効能をよく理解してから入っていく。
ここまで来る途中、気持ちよさそうに有料のマッサージ機で眠るおじいちゃんがいたり、休憩室で談話を楽しむ人がいたりと、とても雰囲気が柔らかく素敵だった。
鮎子の携帯端末に兄である白馬会長よりメッセージが入っているようだ。
「げ、本当に気持ち悪い」
心底嫌そうな表情になり私たちにメッセージの文面を見せてくれる。
『親愛なる妹へ。 お風呂にいくなら、一緒に行こうではないか!』
私は一人っ子なので、気持ちはわからないが鮎子が愛されていることは伝わってきた。
私の表情が思った感じと違ったのか、鮎子は不服そうに顔を膨らませて「何にも思わないの⁉」と問い詰めてくる。
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