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雪どけに咲く花は黄色
おんせん⁉ ④
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気持ちの良い夜に鏡を見ながら明日のスケジュールを確認する。
バスの時刻を記憶しながら、片手に携帯端末を持ってグループチャットで打ち合わせをしていた。
もう明日のことなので、今更変更はきかないのだが全員がソワソワとしており、興奮してなのかいつもより賑やかだ。
ドライヤーで髪をかわかしながら、流れる文字を追っていく。
会長は既に変なテンションになっており、ほぼ全員に無視されているが、それもこの流れの中ではよいスパイスになっている。
「ふふっ」
思わず笑いが漏れた。 去年の今頃の自分では考えられない出来事だ。
人と付き合うということをどこかで壁を作っていた。
確かに気を使う場面は増えたが、楽しさも増した。
蒲生さんに至っては、荷物の量が少なすぎる。
男性は少ないと聞いていたが、父でも一泊するなら小さなキャリーバッグが必要なのに、ショルダーバッグ一つなんて……。
大きな出来事が与えた小さな日常の変化は、今やはっきりと感じられるほど大きな流れになりつつある。
気は抜けないが、息抜きはしたかった。
凄く久しぶりに旅行に行くようなきがする。 以前は父と母とよく一緒に行っていたが、母が海外に赴くようになると、自然と回数は減っていき今では無いと表現してもよい。
この旅行の件を聞いた父は狂ったように「一緒にいくのぉ‼」と叫んだが無理なものは無理だ。
それに保護者は頼りになる蒲生さんが担当してくれるが、それが一番気がかりだと言っており、意味がわからない。
一通り話題が尽きると、自然と「おやすみ」を告げベッドに入り込む。
一度暖房器の電源を消したのを確認し、ペンダントにいつもより強めに願いを込め、眠ることにした。
「おはよう諸君!」
「おはようございます」
「おはよー」
待ち合わせ場所に早めに到着したが、どうやら私が一番最後のようで蒲生さんの運転する車高の低いスポーツカーから降りると、皆から挨拶してくれた。
「おはようございます。 すみません遅くなって」
「おはようございます。 私までお招きいただき感謝いたします」
こちらも挨拶を済ませ、談話をしながらバスを待つ。
蒲生さんは車の中から荷物を取り出すと、近くの有料パーキングへ車を置きに行く。
「ちょっと愛、申し訳ないんだけど櫛忘れてきちゃって、お風呂入り終わったら貸してくれない?」
栞奈が話しかけてくれた。
そう言えば、蒲生さんはスーツ姿だが他の人の制服以外の服を見るのは初めてのような気がする。
会長は上下ともデニムによくわからないがナメクジのような柄のコートを羽織り、足元は金色のスニーカーと個性が輝いている。
蒲生さんと会ってから、彼は終始緊張したような面持ちで、ロボットのような動きをしていた。
鮎子は季節に合わせたコーデで、彼女らしく可愛らしい感じがする。
ワンポイントのベレー帽がとても愛らしい。
栞奈は皆よりも若干薄着であるが、動きやすさを重視した組み合わせで、ブーツもお洒落で、機能性もしっかりとした靴である。
それに引き換え私はどう見えているのだろうか?
一応ネットの情報や本屋に寄ったときにこっそり買った雑誌を参考にしてきたが、似合っているのだろうか?
そう言えば、蒲生さんも今朝会ったとき何も言ってくれなかったのは、もしかすると変だからなのか……。
一気に不安になり、手鏡で確認してみるが客観的に観れないので確認のしようがなかった。
栞奈と会話をしつつも内心焦りを覚えた私は、半分会話を聞いていない状態が続いてしまう。
「ねぇ、大丈夫?」
「え⁉」
栞奈が心配そうな顔を私を覗き込んでくる。
「もしかして、熱でもある?」
彼女のひんやりとした手のひらが、私のおでこに触れる。
なんとも心地の良い感じが私の不安を取り除いてくれた。
「うん、熱はなさそうだけど、具合悪いなら無理しないほうがいいよ」
「大丈夫、ちょっと不安なことがあって」
「不安? あぁ、ASHINAなら気にしないでいいんじゃない? 蒲生さんもいるし」
私の服装がどうとか言い出せないが、純粋に心配してくれる彼女の優しさがとても嬉しかった。
バスの時刻を記憶しながら、片手に携帯端末を持ってグループチャットで打ち合わせをしていた。
もう明日のことなので、今更変更はきかないのだが全員がソワソワとしており、興奮してなのかいつもより賑やかだ。
ドライヤーで髪をかわかしながら、流れる文字を追っていく。
会長は既に変なテンションになっており、ほぼ全員に無視されているが、それもこの流れの中ではよいスパイスになっている。
「ふふっ」
思わず笑いが漏れた。 去年の今頃の自分では考えられない出来事だ。
人と付き合うということをどこかで壁を作っていた。
確かに気を使う場面は増えたが、楽しさも増した。
蒲生さんに至っては、荷物の量が少なすぎる。
男性は少ないと聞いていたが、父でも一泊するなら小さなキャリーバッグが必要なのに、ショルダーバッグ一つなんて……。
大きな出来事が与えた小さな日常の変化は、今やはっきりと感じられるほど大きな流れになりつつある。
気は抜けないが、息抜きはしたかった。
凄く久しぶりに旅行に行くようなきがする。 以前は父と母とよく一緒に行っていたが、母が海外に赴くようになると、自然と回数は減っていき今では無いと表現してもよい。
この旅行の件を聞いた父は狂ったように「一緒にいくのぉ‼」と叫んだが無理なものは無理だ。
それに保護者は頼りになる蒲生さんが担当してくれるが、それが一番気がかりだと言っており、意味がわからない。
一通り話題が尽きると、自然と「おやすみ」を告げベッドに入り込む。
一度暖房器の電源を消したのを確認し、ペンダントにいつもより強めに願いを込め、眠ることにした。
「おはよう諸君!」
「おはようございます」
「おはよー」
待ち合わせ場所に早めに到着したが、どうやら私が一番最後のようで蒲生さんの運転する車高の低いスポーツカーから降りると、皆から挨拶してくれた。
「おはようございます。 すみません遅くなって」
「おはようございます。 私までお招きいただき感謝いたします」
こちらも挨拶を済ませ、談話をしながらバスを待つ。
蒲生さんは車の中から荷物を取り出すと、近くの有料パーキングへ車を置きに行く。
「ちょっと愛、申し訳ないんだけど櫛忘れてきちゃって、お風呂入り終わったら貸してくれない?」
栞奈が話しかけてくれた。
そう言えば、蒲生さんはスーツ姿だが他の人の制服以外の服を見るのは初めてのような気がする。
会長は上下ともデニムによくわからないがナメクジのような柄のコートを羽織り、足元は金色のスニーカーと個性が輝いている。
蒲生さんと会ってから、彼は終始緊張したような面持ちで、ロボットのような動きをしていた。
鮎子は季節に合わせたコーデで、彼女らしく可愛らしい感じがする。
ワンポイントのベレー帽がとても愛らしい。
栞奈は皆よりも若干薄着であるが、動きやすさを重視した組み合わせで、ブーツもお洒落で、機能性もしっかりとした靴である。
それに引き換え私はどう見えているのだろうか?
一応ネットの情報や本屋に寄ったときにこっそり買った雑誌を参考にしてきたが、似合っているのだろうか?
そう言えば、蒲生さんも今朝会ったとき何も言ってくれなかったのは、もしかすると変だからなのか……。
一気に不安になり、手鏡で確認してみるが客観的に観れないので確認のしようがなかった。
栞奈と会話をしつつも内心焦りを覚えた私は、半分会話を聞いていない状態が続いてしまう。
「ねぇ、大丈夫?」
「え⁉」
栞奈が心配そうな顔を私を覗き込んでくる。
「もしかして、熱でもある?」
彼女のひんやりとした手のひらが、私のおでこに触れる。
なんとも心地の良い感じが私の不安を取り除いてくれた。
「うん、熱はなさそうだけど、具合悪いなら無理しないほうがいいよ」
「大丈夫、ちょっと不安なことがあって」
「不安? あぁ、ASHINAなら気にしないでいいんじゃない? 蒲生さんもいるし」
私の服装がどうとか言い出せないが、純粋に心配してくれる彼女の優しさがとても嬉しかった。
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