私の守護者

安東門々

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雪どけに咲く花は黄色

おんせん⁉ ③

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 家に帰り、詳細を蒲生さんにお伝えし終え、お風呂と食事を終えて部屋に戻ると、携帯端末にメッセージの着信を知らせるライトが点滅していた。
 急いで内容を確認すると、栞奈からの返事で内容はこうだ。

『温泉! 行きたぁーい! ちょっと待ってて、明日監督に確認してみる』

 なんとか、色よい返事を貰えてた。
 これで旅行がもっと楽しみになり、無意識に自分の足をバタバタとさせていることに気が付くまで数分かかった。

 一応週末の天気を確認すると、気温は低いが晴れてくれそうだ。
 放射冷却によって朝は特に冷える。 念のため防寒対策はしっかりとしていこう。
 まだ雪が多く残る山間部に自家用車を使わずに向かう。
 
 なぜかとてもワクワクしてくる。 小さな冒険のようで、家族と行く旅行とは違った感じがした。
 細かな備品を明日以降揃えるとして、せめて憂いを無くすために今まで以上に課題や生徒会の仕事をこなしていかなければならない。

 なにか残したままでいると、とてもモヤモヤするたちなので、できるだけ心配事は減らしたかった。
 しかし、脳裏に残るのはやはりASHINAの存在だが、ここ最近は何も音沙汰なしな状況なので、あまり心配しなくともよいのだろうか?

 数分悩んだが、相手次第な要素が多すぎる。 せっかく楽しそうな旅になるのだ。
 嫌なことは忘れて純粋に楽しみたい。

 部屋の温度が高くなりだし、酸欠なのか頭がボーとしだしてきた。
 最初はASHINAに狙われて大変な事態になったと思っていたが、どうやら私の人生において大きなターニングポイントになりそうだ。

 「普通」を心がけてきていたが、以前の私が望んでいた環境ではなく、いつもそばには彼がいて、学園でも楽しく過ごせる友ができた。
 きっと、神様が私に与えてくださったプレゼントであると考えている。

 このプレゼントを私は大切にしたい。 
 蒲生さんに限っては、当初の距離感があまり変わらない気もするが、仕事なのだからと思う部分と、少し悲しいと思う部分もでてきた。

「何を考えているんだか……」

 自分の「謎」な感情に対し、自問自答を繰り返した夜もあったが、結局夜中の二時まで結論は出ないまま寝てしまった。

「どうか、明日も良い日でありますように」

 日課になりつつある彼から頂いたペンダントに願う日々。
 これを身に着けてベッドに入るととても安心する。

 それからの週末までの期間はとても充実していた。
 不思議といつもより授業に集中でき、生徒会の雑務も終えることができた。 

 会長もいつもギリギリまで仕事をためておくが、今週はスムーズにこなし、鮎子に「いつもこれぐらいなら助かる」と小言を言われている。
 栞奈も部活もちょうど休むということになり、無事に参加できるようだ。

 学園の帰り道にネットで調べた旅行に必要な小物類の買い出しも無事に終わったので、週末を待つばかりとなりそうだ。

「ねぇ、部屋ってどうする? 一応三部屋予約したけど」

「三部屋⁉ なぜだ、女子陣と男子陣の二部屋でよかろう!」

 敵意むき出しで鮎子に詰め寄る会長に、問答無用で腹部に突きを一撃、簡単に沈む会長を蔑んだ目で彼女が見下ろしている。

「はぁ? あんたは一人部屋、絶対出るな。 鍵かけとくし、トイレもお風呂も部屋についてあるから、もう旅館に到着したら一歩も部屋の外に出ないで、お願い」

「ぐ……。 な、なぜだ、マイシスターよ。 そこまで兄を嫌う」

「普段の行い」

 もう、このやり取りに慣れた自分が恐ろしいが、鮎子は冗談でなく本当に白馬会長だけの部屋を用意しているに違いない。
 女子部屋と蒲生さんは別としても、会長は少しだけかわいそう気がしないでもない。

「が、蒲生さんの寝顔を私は見る‼」

 前言撤回、やはり部屋をわけていただこう。
 それに、彼が他の人より先に寝るなど想像できなかった。
 放課後の生徒会室はいつもより賑やかで、そこに部活を終えた栞奈も合流し、詳しい日程の確認や集合場所の説明などを鮎子が行ってくれる。

「へぇ、鮎子ってこういったの得意なんだ」

「そうね。 得意っていうより好きなのかも、父の会社の行事のスケージュール管理とかたまに手伝うしね」

「あぁ、妹が手伝ったときの社内ステーキ早食い選手権は燃えたな、もう一度やりたいものだ」

 遠い目をしながら夕日を眺める会長を無視しながら、鮎子が説明を続けていく。
 まだ二人の距離感に慣れていない栞奈は、苦笑いを浮かべながら横目で私に助けを求めてくるが、私だってどうすることもできない。
 ただ一つ言えることは、会長は悲しんでなどいないということだ。

 
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