36 / 54
雪どけに咲く花は黄色
おんせん⁉ ③
しおりを挟む
家に帰り、詳細を蒲生さんにお伝えし終え、お風呂と食事を終えて部屋に戻ると、携帯端末にメッセージの着信を知らせるライトが点滅していた。
急いで内容を確認すると、栞奈からの返事で内容はこうだ。
『温泉! 行きたぁーい! ちょっと待ってて、明日監督に確認してみる』
なんとか、色よい返事を貰えてた。
これで旅行がもっと楽しみになり、無意識に自分の足をバタバタとさせていることに気が付くまで数分かかった。
一応週末の天気を確認すると、気温は低いが晴れてくれそうだ。
放射冷却によって朝は特に冷える。 念のため防寒対策はしっかりとしていこう。
まだ雪が多く残る山間部に自家用車を使わずに向かう。
なぜかとてもワクワクしてくる。 小さな冒険のようで、家族と行く旅行とは違った感じがした。
細かな備品を明日以降揃えるとして、せめて憂いを無くすために今まで以上に課題や生徒会の仕事をこなしていかなければならない。
なにか残したままでいると、とてもモヤモヤするたちなので、できるだけ心配事は減らしたかった。
しかし、脳裏に残るのはやはりASHINAの存在だが、ここ最近は何も音沙汰なしな状況なので、あまり心配しなくともよいのだろうか?
数分悩んだが、相手次第な要素が多すぎる。 せっかく楽しそうな旅になるのだ。
嫌なことは忘れて純粋に楽しみたい。
部屋の温度が高くなりだし、酸欠なのか頭がボーとしだしてきた。
最初はASHINAに狙われて大変な事態になったと思っていたが、どうやら私の人生において大きなターニングポイントになりそうだ。
「普通」を心がけてきていたが、以前の私が望んでいた環境ではなく、いつもそばには彼がいて、学園でも楽しく過ごせる友ができた。
きっと、神様が私に与えてくださったプレゼントであると考えている。
このプレゼントを私は大切にしたい。
蒲生さんに限っては、当初の距離感があまり変わらない気もするが、仕事なのだからと思う部分と、少し悲しいと思う部分もでてきた。
「何を考えているんだか……」
自分の「謎」な感情に対し、自問自答を繰り返した夜もあったが、結局夜中の二時まで結論は出ないまま寝てしまった。
「どうか、明日も良い日でありますように」
日課になりつつある彼から頂いたペンダントに願う日々。
これを身に着けてベッドに入るととても安心する。
それからの週末までの期間はとても充実していた。
不思議といつもより授業に集中でき、生徒会の雑務も終えることができた。
会長もいつもギリギリまで仕事をためておくが、今週はスムーズにこなし、鮎子に「いつもこれぐらいなら助かる」と小言を言われている。
栞奈も部活もちょうど休むということになり、無事に参加できるようだ。
学園の帰り道にネットで調べた旅行に必要な小物類の買い出しも無事に終わったので、週末を待つばかりとなりそうだ。
「ねぇ、部屋ってどうする? 一応三部屋予約したけど」
「三部屋⁉ なぜだ、女子陣と男子陣の二部屋でよかろう!」
敵意むき出しで鮎子に詰め寄る会長に、問答無用で腹部に突きを一撃、簡単に沈む会長を蔑んだ目で彼女が見下ろしている。
「はぁ? あんたは一人部屋、絶対出るな。 鍵かけとくし、トイレもお風呂も部屋についてあるから、もう旅館に到着したら一歩も部屋の外に出ないで、お願い」
「ぐ……。 な、なぜだ、マイシスターよ。 そこまで兄を嫌う」
「普段の行い」
もう、このやり取りに慣れた自分が恐ろしいが、鮎子は冗談でなく本当に白馬会長だけの部屋を用意しているに違いない。
女子部屋と蒲生さんは別としても、会長は少しだけかわいそう気がしないでもない。
「が、蒲生さんの寝顔を私は見る‼」
前言撤回、やはり部屋をわけていただこう。
それに、彼が他の人より先に寝るなど想像できなかった。
放課後の生徒会室はいつもより賑やかで、そこに部活を終えた栞奈も合流し、詳しい日程の確認や集合場所の説明などを鮎子が行ってくれる。
「へぇ、鮎子ってこういったの得意なんだ」
「そうね。 得意っていうより好きなのかも、父の会社の行事のスケージュール管理とかたまに手伝うしね」
「あぁ、妹が手伝ったときの社内ステーキ早食い選手権は燃えたな、もう一度やりたいものだ」
遠い目をしながら夕日を眺める会長を無視しながら、鮎子が説明を続けていく。
まだ二人の距離感に慣れていない栞奈は、苦笑いを浮かべながら横目で私に助けを求めてくるが、私だってどうすることもできない。
ただ一つ言えることは、会長は悲しんでなどいないということだ。
急いで内容を確認すると、栞奈からの返事で内容はこうだ。
『温泉! 行きたぁーい! ちょっと待ってて、明日監督に確認してみる』
なんとか、色よい返事を貰えてた。
これで旅行がもっと楽しみになり、無意識に自分の足をバタバタとさせていることに気が付くまで数分かかった。
一応週末の天気を確認すると、気温は低いが晴れてくれそうだ。
放射冷却によって朝は特に冷える。 念のため防寒対策はしっかりとしていこう。
まだ雪が多く残る山間部に自家用車を使わずに向かう。
なぜかとてもワクワクしてくる。 小さな冒険のようで、家族と行く旅行とは違った感じがした。
細かな備品を明日以降揃えるとして、せめて憂いを無くすために今まで以上に課題や生徒会の仕事をこなしていかなければならない。
なにか残したままでいると、とてもモヤモヤするたちなので、できるだけ心配事は減らしたかった。
しかし、脳裏に残るのはやはりASHINAの存在だが、ここ最近は何も音沙汰なしな状況なので、あまり心配しなくともよいのだろうか?
数分悩んだが、相手次第な要素が多すぎる。 せっかく楽しそうな旅になるのだ。
嫌なことは忘れて純粋に楽しみたい。
部屋の温度が高くなりだし、酸欠なのか頭がボーとしだしてきた。
最初はASHINAに狙われて大変な事態になったと思っていたが、どうやら私の人生において大きなターニングポイントになりそうだ。
「普通」を心がけてきていたが、以前の私が望んでいた環境ではなく、いつもそばには彼がいて、学園でも楽しく過ごせる友ができた。
きっと、神様が私に与えてくださったプレゼントであると考えている。
このプレゼントを私は大切にしたい。
蒲生さんに限っては、当初の距離感があまり変わらない気もするが、仕事なのだからと思う部分と、少し悲しいと思う部分もでてきた。
「何を考えているんだか……」
自分の「謎」な感情に対し、自問自答を繰り返した夜もあったが、結局夜中の二時まで結論は出ないまま寝てしまった。
「どうか、明日も良い日でありますように」
日課になりつつある彼から頂いたペンダントに願う日々。
これを身に着けてベッドに入るととても安心する。
それからの週末までの期間はとても充実していた。
不思議といつもより授業に集中でき、生徒会の雑務も終えることができた。
会長もいつもギリギリまで仕事をためておくが、今週はスムーズにこなし、鮎子に「いつもこれぐらいなら助かる」と小言を言われている。
栞奈も部活もちょうど休むということになり、無事に参加できるようだ。
学園の帰り道にネットで調べた旅行に必要な小物類の買い出しも無事に終わったので、週末を待つばかりとなりそうだ。
「ねぇ、部屋ってどうする? 一応三部屋予約したけど」
「三部屋⁉ なぜだ、女子陣と男子陣の二部屋でよかろう!」
敵意むき出しで鮎子に詰め寄る会長に、問答無用で腹部に突きを一撃、簡単に沈む会長を蔑んだ目で彼女が見下ろしている。
「はぁ? あんたは一人部屋、絶対出るな。 鍵かけとくし、トイレもお風呂も部屋についてあるから、もう旅館に到着したら一歩も部屋の外に出ないで、お願い」
「ぐ……。 な、なぜだ、マイシスターよ。 そこまで兄を嫌う」
「普段の行い」
もう、このやり取りに慣れた自分が恐ろしいが、鮎子は冗談でなく本当に白馬会長だけの部屋を用意しているに違いない。
女子部屋と蒲生さんは別としても、会長は少しだけかわいそう気がしないでもない。
「が、蒲生さんの寝顔を私は見る‼」
前言撤回、やはり部屋をわけていただこう。
それに、彼が他の人より先に寝るなど想像できなかった。
放課後の生徒会室はいつもより賑やかで、そこに部活を終えた栞奈も合流し、詳しい日程の確認や集合場所の説明などを鮎子が行ってくれる。
「へぇ、鮎子ってこういったの得意なんだ」
「そうね。 得意っていうより好きなのかも、父の会社の行事のスケージュール管理とかたまに手伝うしね」
「あぁ、妹が手伝ったときの社内ステーキ早食い選手権は燃えたな、もう一度やりたいものだ」
遠い目をしながら夕日を眺める会長を無視しながら、鮎子が説明を続けていく。
まだ二人の距離感に慣れていない栞奈は、苦笑いを浮かべながら横目で私に助けを求めてくるが、私だってどうすることもできない。
ただ一つ言えることは、会長は悲しんでなどいないということだ。
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冬の夕暮れに君のもとへ
まみはらまさゆき
青春
紘孝は偶然出会った同年代の少女に心を奪われ、そして彼女と付き合い始める。
しかし彼女は複雑な家庭環境にあり、ふたりの交際はそれをさらに複雑化させてしまう・・・。
インターネット普及以後・ケータイ普及以前の熊本を舞台に繰り広げられる、ある青春模様。
20年以上前に「774d」名義で楽天ブログで公表した小説を、改稿の上で再掲載します。
性的な場面はわずかしかありませんが、念のためR15としました。
改稿にあたり、具体的な地名は伏せて全国的に通用する舞台にしようと思いましたが、故郷・熊本への愛着と、方言の持つ味わいは捨てがたく、そのままにしました。
また同様に現在(2020年代)に時代を設定しようと思いましたが、熊本地震以後、いろいろと変わってしまった熊本の風景を心のなかでアップデートできず、1990年代後半のままとしました。
学校に行きたくない私達の物語
能登原あめ
青春
※ 甘酸っぱい青春を目指しました。ピュアです。
「学校に行きたくない」
大きな理由じゃないけれど、休みたい日もある。
休みがちな女子高生達が悩んで、恋して、探りながら一歩前に進むお話です。
(それぞれ独立した話になります)
1 雨とピアノ 全6話(同級生)
2 日曜の駆ける約束 全4話(後輩)
3 それが儚いものだと知ったら 全6話(先輩)
* コメント欄はネタバレ配慮していないため、お気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
イルカノスミカ
よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。
弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。
敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
PictureScroll 昼下がりのガンマン
薔薇美
青春
舞台は日本の温泉地にある西部開拓時代を模したテーマパーク『ウェスタン・タウン』。そこで催されるウェスタン・ショウのパフォーマーとタウンのキャストの群像劇。※人物紹介は飛ばして本編からでも大丈夫です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる