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田村兄妹
ニューフェイス ⑦
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その日は、いつも通りに過ごせたと思う。
それでも、食事中に何度か横目で彼を見てしまうが百パーセント目が合う。
私を守るためなのだから、私を見ていても不思議ではないが、変に意識してしまっている自分が不思議でならない。
お風呂は邪念を掃うためにちょうどよかったのに、今ではいつも以上に念入りに手入れを行うようになってしまった。
概ね十五分は入浴時間が伸びている。
「つ、疲れる」
勝手に自分でそうしているのに、変な気疲れがでてきた。
思いっきり布団に寝転び、背伸びをしてリラックスする。
一応綺麗にしているつもりの爪を確認しながら、明日の授業で忘れていることはないかと思い返していると、一つ課題が出ていたことを思い出し急いで片付けるために机に向かう。
冬の空気が静かすぎるのか、暖房の音や鉛筆で文字を書くときの音が際立つ。
そのなんとも言えない空間が、勉強を捗らせてくれる。
あっという間に課題を終えると、何もすることが無くなり、いつもなら読書をするのだが、今日は疲れたので寝ることにする。
「おやすみなさい」
どこかで読んだことのある絵本のように、部屋を暗くしながら目を閉じる。
様々な記憶が私の脳内を駆け巡るが、ある一定のところで意識がなくなっていく。
次の日は、今までにないくらいに目覚めがよく。
起きてすぐに身支度が出来た。 顔もむくんでいない。 目の下のくまもなければ、お肌の調子もいいように思えた。
朝食はフレンチトーストに、ホットココアと温野菜のサラダで、爺が疲れている私を気遣って糖分の多い食事にしてくれたが、さすがに甘すぎるような気がした。
そして、彼は私との約束をきちんと守り、朝食時は来ないでいる。
今日も学園に向かうため、彼の案内で車に乗り込むと、ほどなくして校門が見えてくる。
しかし、今日はいつもより賑わっており、人だかりができていた。
「どうしたんですかね?」
「そうね。 いつもはもっと静かなのに」
蒲生さんの目つきが真剣になる。 もしかするとASHIANかもしれないと考えた彼は、運転手に一度スルーするように呼びかけようとしたとき、人ごみのなから手を振って私たちに合図をしてきた人がいた。
「え⁉ 会長と鮎子?」
満面の笑顔で手を振って挨拶してくれるのは、昨日の二人で私たちをまっているのだろう。
運転手がバックミラーで私たちを確認してくる。
蒲生さんは少し複雑な顔をしながら「停めてください」とだけ告げると、車は速度を落とし、いつもの停車位置にとまる。
なぜだろうか、ドアを開けるまえから疲れている。
むしろ、車のドアを開けたくないと思ったのは、これが初めてだ。
そして、窓の外には人ごみの中心にいた会長が瞳を輝かせ、出向いている。
覚悟を決めて、勢いよくドアを開けそうになるが蒲生さんはそれをやめさせた。
「お待ちください、私が先に外にでますので」
よくテレビとかでみるSPがドアを開けてくれるやつだろうか?
そして、今更になって気が付いたが集まっている人の割合が女性に偏っているのも気がかりだ。
彼は辺りを警戒しながらドアを開けると同時に、広がる黄色い声と携帯端末から発せられるフラッシュでいったい何がおきたのかと思った。
「うへぇ! 本当! 凄いカッコいい」
「ほほほほほ! 捗る! 捗る! 私の創作意欲が捗るわぁ!」
十人十色の反応をしているが、全体的に【カッコいい】が占めている。
まさか、彼の姿をみるためだけに学園の生徒は朝の貴重な時間を割いてまで、ここに集まったのだろうか?
それでも、食事中に何度か横目で彼を見てしまうが百パーセント目が合う。
私を守るためなのだから、私を見ていても不思議ではないが、変に意識してしまっている自分が不思議でならない。
お風呂は邪念を掃うためにちょうどよかったのに、今ではいつも以上に念入りに手入れを行うようになってしまった。
概ね十五分は入浴時間が伸びている。
「つ、疲れる」
勝手に自分でそうしているのに、変な気疲れがでてきた。
思いっきり布団に寝転び、背伸びをしてリラックスする。
一応綺麗にしているつもりの爪を確認しながら、明日の授業で忘れていることはないかと思い返していると、一つ課題が出ていたことを思い出し急いで片付けるために机に向かう。
冬の空気が静かすぎるのか、暖房の音や鉛筆で文字を書くときの音が際立つ。
そのなんとも言えない空間が、勉強を捗らせてくれる。
あっという間に課題を終えると、何もすることが無くなり、いつもなら読書をするのだが、今日は疲れたので寝ることにする。
「おやすみなさい」
どこかで読んだことのある絵本のように、部屋を暗くしながら目を閉じる。
様々な記憶が私の脳内を駆け巡るが、ある一定のところで意識がなくなっていく。
次の日は、今までにないくらいに目覚めがよく。
起きてすぐに身支度が出来た。 顔もむくんでいない。 目の下のくまもなければ、お肌の調子もいいように思えた。
朝食はフレンチトーストに、ホットココアと温野菜のサラダで、爺が疲れている私を気遣って糖分の多い食事にしてくれたが、さすがに甘すぎるような気がした。
そして、彼は私との約束をきちんと守り、朝食時は来ないでいる。
今日も学園に向かうため、彼の案内で車に乗り込むと、ほどなくして校門が見えてくる。
しかし、今日はいつもより賑わっており、人だかりができていた。
「どうしたんですかね?」
「そうね。 いつもはもっと静かなのに」
蒲生さんの目つきが真剣になる。 もしかするとASHIANかもしれないと考えた彼は、運転手に一度スルーするように呼びかけようとしたとき、人ごみのなから手を振って私たちに合図をしてきた人がいた。
「え⁉ 会長と鮎子?」
満面の笑顔で手を振って挨拶してくれるのは、昨日の二人で私たちをまっているのだろう。
運転手がバックミラーで私たちを確認してくる。
蒲生さんは少し複雑な顔をしながら「停めてください」とだけ告げると、車は速度を落とし、いつもの停車位置にとまる。
なぜだろうか、ドアを開けるまえから疲れている。
むしろ、車のドアを開けたくないと思ったのは、これが初めてだ。
そして、窓の外には人ごみの中心にいた会長が瞳を輝かせ、出向いている。
覚悟を決めて、勢いよくドアを開けそうになるが蒲生さんはそれをやめさせた。
「お待ちください、私が先に外にでますので」
よくテレビとかでみるSPがドアを開けてくれるやつだろうか?
そして、今更になって気が付いたが集まっている人の割合が女性に偏っているのも気がかりだ。
彼は辺りを警戒しながらドアを開けると同時に、広がる黄色い声と携帯端末から発せられるフラッシュでいったい何がおきたのかと思った。
「うへぇ! 本当! 凄いカッコいい」
「ほほほほほ! 捗る! 捗る! 私の創作意欲が捗るわぁ!」
十人十色の反応をしているが、全体的に【カッコいい】が占めている。
まさか、彼の姿をみるためだけに学園の生徒は朝の貴重な時間を割いてまで、ここに集まったのだろうか?
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