私の守護者

安東門々

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田村兄妹

ニューフェイス ⑥

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 一通り会話を終えて、彼が部屋を出ていくと同時に食事の時間を告げるベルがなった。
 しかし、私はその場から動くことができずに、高鳴る鼓動を必死に抑えようとしている。

 蒲生さんの言葉がずっと耳に残る。

『私は、あなたを絶対お守りいたします』

 仕事だということは、百も承知であるがそれでも、まっすぐに見つめられながら言われると、自然と頬が熱くなるのが感じられた。
 
「なに? 自分がわからない」

 わからないことだらけだった。 ASHINAに狙われるようになったことも、学園で変な二人に絡まれることも、なぜ彼の言葉にこれほど動揺するのかも、全てがかわらない。
 それでも、確実に言えることはこの「わからない」日常が好きになりつつある。

 もちろん、怪我をさせてしまった人もたくさんいる。
 それでも、帰って予習をして習い事をしながらも、淡泊な学園生活を三年間送る予定だったのが、一瞬で別の世界へときてしまった。
 
 流れる時計の秒針の音は、ズレることなく永遠と時を刻み続ける。
 それは、前にしか進まない。 昨日の失敗を取り返したいと思う事はあっても、必ず明日はもっとよくなるようにと願う。

 だから私は、この変わってしまった日常に対し、もっとよくしようと思う。
 そのためには、彼の存在は不可欠であり要でもある。

 ペンダントを取り出して、カランコエを指で優しくなぞる。
 彼から頂いた大切なお守り、これがあるから私は平然と学園生活を送れるような気がする。
 
 白馬の王子さまに小さな女の子が憧れる時期がくるのはわかる。
 しかし、まさか私を守ってくれる騎士ナイトが現れるとは思っていなかった。

「人生、何が起きるのか本当にわからない」

 ぼんやりと呟くが、部屋のぬくんだ空気に吸い込まれていく私の言霊は、少しだけ熱をもっているように思えた。
 そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされる。

「お嬢様? 具合でも悪いのですか?」

 爺が心配して、わざわざ迎えにきてくれた。
 人にあまり迷惑をかけたくないのに、寒い廊下を無駄に歩かせてしまった。
 自分の頬を軽くパンパンと二回叩き、気合を入れると返事をする。

「ごめんなさい、今いきます!」

 私の元気な声を聞いた爺は、心配がなくなったのか「お待ちしております」とだけ、告げると来た道を戻っていった。
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