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田村兄妹
ニューフェイス ③
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生徒会室へ案内され、ソファーに腰掛けるように促されると、私は腰を落ち着けた。
すると会長は手に持っていたお弁当を返し、自らは会長席へと座りお茶を飲みだし、引き出しから取り出した栄養ドリンクとサプリを同時に飲み込むと本を読み始めた。
「気にしないでください、兄はいつも昼はあれだけですから」
いつの間に横にきていたのだろうか、すぐそこに鮎子が立っており、優し気な微笑みをしながら私に淹れたてのほうじ茶を提供してくれる。
芳醇な香りが鼻を通って体全体を刺激し、思わず深く香りを吸い込んでしまう。
しかし、彼女の二面性を知っているので、素直に受け取れないが、あまりにも素敵な香りに思わず手を伸ばしてひと口飲んでみる。
「お、おいしい」
「よかった」
大きな瞳を閉じて喜びを表すと、私の正面に座り小さく可愛らしいお弁当箱を広げ食べ始める。
私も自分のを広げ箸で厚焼き卵を食べ、いなり寿司をひと口かじると、会長がこちらに向かって歩いてくる。
田村家は、この学園でもとびきり変わった会社を経営し、単純な会社の総面積でいうならば、日本屈指だろう。
一次産業と二次産業を組み合わせたり、六次産業に特に力を入れて次々にヒット商品を世に送り出している企業だ。
しかも、自社で一次産業から加工や商品化まで全て行えるのも強みの一つで、今はスーパーフードに力を入れていると聞いた。
おそらく、先ほどのサプリメントも彼の会社の商品であろう。
「ときに、愛くん」
「えっと、なんでしょうか会長」
少し学園の生徒の中では毛色が違う気がするが、圧倒的な支持を得て会長に就いた経歴もある。
物怖じしない性格に、リーダーシップ性が特に抜きんでていた。
しかし、そんな会長が今はなぜかよそよそしく、腕を後ろに組みながら頬を少しばかり染め、何かを言いたげな感じを籠らせていた。
「つかぬ事を伺うが……。 き、君は今ASHINAに狙われているという噂は本当かい?」
「えぇ、本当ですが、既に皆さんご存知のようなので、別に隠すことでもないのでハッキリ言います」
それを確認すると、また態度がよそよそしくなり、いつもの会長らしさが感じられず、こちらが調子を狂わされてしまう。
そんな様子を見ていた鮎子が大きなため息をつくと、ギロリと白馬会長を睨みつけると、ソファーに座らせ彼女が話し始めた。
「あぁんもう! 煮え切らないんだから! 黙って座ってて」
あの可愛らしい瞳を強張らせ、勢いよく白馬会長をソファーに座らせると、コホンと一回咳払いを終え、お弁当を食べながら私に言葉を投げかけてくる。
「食べながら失礼しますね。 愛さんも食べながらでけっこうなので」
私は頷くと、相手を見ながらお弁当を食べる。
「単刀直入にお聞きします。 今、あなたを警護しているのは 蒲生 盛矢という人物では間違いありませんか?」
急に蒲生さんの名前が出てきて驚いてしまう。 肉団子を掴んでいた箸が動かなくなってしまった。
懸念していたこの二人がASHINAと何らかの関りがあるのではないだろうか?
しかし、学園にまで手を伸ばしてくるとは思いもしなかった。
「あ、何か勘違いしているみたいですが、違いますからね。 私たちはASHINAとはまるっきり関りがありませんので、その点はご安心を。 むしろ私たちの管理するトマト事業に首ツッコんできてムカついているのに……」
ギリっと爪を強く噛む鮎子に、先ほどから座っていても上の空状態の会長、どちらが本当の本人なのか見当がつかない。
「そ、それで、なぜ彼の名を知りたいのですか?」
「そうね、敢えていうなら、あなたのような可憐な乙女を守護するナイトに興味があるってことぐらいね」
意味がわからない。 この学園には常日頃から護衛をつけている人も少なくないのに、なぜ私なのだろうか。
それに現状はASHINAとはうまくいっていない様子で、他に私に関与したがる理由も不明だ。
でも、一つだけ可能性がある。 それは、私に興味があるのではなく、彼に興味があるのではないだろうか。
確かに彼女は言った。 興味があることは私ではなく蒲生さんだと。
そう言われると、なぜか心の奥が嫌な空気で満たされるような感覚に陥っていく。
「だから、それはなぜですか? 理由をお聞きできない以上、私からも何もお答えできません」
「はぁ、そう言うと思ったよ。 だから、はい! 兄さんの出番だよ」
隣に座っている兄の背中を勢いよく叩き、立たせると目線で合図を送っている。
そして、白馬会長は大きく深呼吸をすると小さな声で私に言ってくる。
「……ない…ろ…か」
「は、はい?」
「一目、会わせてくれないだろうか――」
すると会長は手に持っていたお弁当を返し、自らは会長席へと座りお茶を飲みだし、引き出しから取り出した栄養ドリンクとサプリを同時に飲み込むと本を読み始めた。
「気にしないでください、兄はいつも昼はあれだけですから」
いつの間に横にきていたのだろうか、すぐそこに鮎子が立っており、優し気な微笑みをしながら私に淹れたてのほうじ茶を提供してくれる。
芳醇な香りが鼻を通って体全体を刺激し、思わず深く香りを吸い込んでしまう。
しかし、彼女の二面性を知っているので、素直に受け取れないが、あまりにも素敵な香りに思わず手を伸ばしてひと口飲んでみる。
「お、おいしい」
「よかった」
大きな瞳を閉じて喜びを表すと、私の正面に座り小さく可愛らしいお弁当箱を広げ食べ始める。
私も自分のを広げ箸で厚焼き卵を食べ、いなり寿司をひと口かじると、会長がこちらに向かって歩いてくる。
田村家は、この学園でもとびきり変わった会社を経営し、単純な会社の総面積でいうならば、日本屈指だろう。
一次産業と二次産業を組み合わせたり、六次産業に特に力を入れて次々にヒット商品を世に送り出している企業だ。
しかも、自社で一次産業から加工や商品化まで全て行えるのも強みの一つで、今はスーパーフードに力を入れていると聞いた。
おそらく、先ほどのサプリメントも彼の会社の商品であろう。
「ときに、愛くん」
「えっと、なんでしょうか会長」
少し学園の生徒の中では毛色が違う気がするが、圧倒的な支持を得て会長に就いた経歴もある。
物怖じしない性格に、リーダーシップ性が特に抜きんでていた。
しかし、そんな会長が今はなぜかよそよそしく、腕を後ろに組みながら頬を少しばかり染め、何かを言いたげな感じを籠らせていた。
「つかぬ事を伺うが……。 き、君は今ASHINAに狙われているという噂は本当かい?」
「えぇ、本当ですが、既に皆さんご存知のようなので、別に隠すことでもないのでハッキリ言います」
それを確認すると、また態度がよそよそしくなり、いつもの会長らしさが感じられず、こちらが調子を狂わされてしまう。
そんな様子を見ていた鮎子が大きなため息をつくと、ギロリと白馬会長を睨みつけると、ソファーに座らせ彼女が話し始めた。
「あぁんもう! 煮え切らないんだから! 黙って座ってて」
あの可愛らしい瞳を強張らせ、勢いよく白馬会長をソファーに座らせると、コホンと一回咳払いを終え、お弁当を食べながら私に言葉を投げかけてくる。
「食べながら失礼しますね。 愛さんも食べながらでけっこうなので」
私は頷くと、相手を見ながらお弁当を食べる。
「単刀直入にお聞きします。 今、あなたを警護しているのは 蒲生 盛矢という人物では間違いありませんか?」
急に蒲生さんの名前が出てきて驚いてしまう。 肉団子を掴んでいた箸が動かなくなってしまった。
懸念していたこの二人がASHINAと何らかの関りがあるのではないだろうか?
しかし、学園にまで手を伸ばしてくるとは思いもしなかった。
「あ、何か勘違いしているみたいですが、違いますからね。 私たちはASHINAとはまるっきり関りがありませんので、その点はご安心を。 むしろ私たちの管理するトマト事業に首ツッコんできてムカついているのに……」
ギリっと爪を強く噛む鮎子に、先ほどから座っていても上の空状態の会長、どちらが本当の本人なのか見当がつかない。
「そ、それで、なぜ彼の名を知りたいのですか?」
「そうね、敢えていうなら、あなたのような可憐な乙女を守護するナイトに興味があるってことぐらいね」
意味がわからない。 この学園には常日頃から護衛をつけている人も少なくないのに、なぜ私なのだろうか。
それに現状はASHINAとはうまくいっていない様子で、他に私に関与したがる理由も不明だ。
でも、一つだけ可能性がある。 それは、私に興味があるのではなく、彼に興味があるのではないだろうか。
確かに彼女は言った。 興味があることは私ではなく蒲生さんだと。
そう言われると、なぜか心の奥が嫌な空気で満たされるような感覚に陥っていく。
「だから、それはなぜですか? 理由をお聞きできない以上、私からも何もお答えできません」
「はぁ、そう言うと思ったよ。 だから、はい! 兄さんの出番だよ」
隣に座っている兄の背中を勢いよく叩き、立たせると目線で合図を送っている。
そして、白馬会長は大きく深呼吸をすると小さな声で私に言ってくる。
「……ない…ろ…か」
「は、はい?」
「一目、会わせてくれないだろうか――」
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