10 / 54
呻る双腕重機は雪の香り
第一波 極秘! 鋼鉄の双腕 ⑥
しおりを挟む
「確かに、言われてみるとそうですよね……。 申し訳ございませんでした」
丁寧に頭を下げてくれる彼に、私は慌てて自分の我がままであると伝える。
「いえ、お嬢様の普段を暮らしをお守りするのが私の役目なのに、それを自ら壊すのは、やはりダメだと思います。 安心してください、私がおりますので」
最後の言葉が凄く心強い。 それに明日は本を買う約束もしている。
出遅れてしまうが、欲しい本はきっと手に入るだろう。
しかし、気がかりなのはやはり、あの工事現場だがいったい何をやっているのだろうか?
私は手元の電話を取ると、使用人を数名呼び出した。
「お待たせいたしましたお嬢様、いかがなさいましたか?」
爺が若い男女二人をつれてきてくれた。
「爺、大変申し訳ないのだけど、あそこで工事をしているのは見えて?」
「工事ですか? いや、気が付きませんでした」
自分がミスしたような素振りを見せるが、気が付かなくて当たり前だ。
私だって気が付けたのは奇跡に近く、もしかすると気が付いていなかった可能性すらある。
「大丈夫、責めているわけではなくて、あの工事現場を少しだけ偵察してくれる? ちょっと気になって」
「さようですか? 確かにこの時期にあの規模を行うのは珍しいですね。暖かい地域ならいざ知らず、このような雪深くなる地域では――」
爺は後ろに控えていた男女二人に視線で合図を送ると、二人は軽く頭を下げて部屋を出ていった。
「もしや、あやつらの可能性でも?」
爺は心配そうに蒲生さんに聞いている。
「可能性の云々で言うと、グレーですね。 お嬢様が申されたようにこの時期にしては珍しいうえに、先ほどから一切動きを見せておりません。 気がかりなのは大きな倉庫と道路を確保している点ですね。 何かを運び入れる気でもあるのかと」
何かを運ぶ? いったいあの規模の倉庫に何を運ぶのだろうか。
「かなり大きいものですね。 誘導員も用意しています。 きっと今晩あたりにでも運ぶつもりなのでしょう」
「ならば、先手を打ってみるのは?」
爺が提案してくれるが、具体的な案はださなかった。
「先手が打てるのが望ましいですが、難しいでしょうね。 相手が本当にASHINAなのかもわからないうえに、正規の工事なのかもしれない。 不用意に動いては、こちらにスキができるので、静観しかないでしょうね。」
確かに、このまま本当に工事が始まれば私たちの取り越し苦労というわけで、誰にも害はおよばない。
爺もあたまを抱えて心配そうにしている。
「守るというのは難しいのです。 相手は用意周到に準備をすすめて攻めてきます。 それをその場で防ぐのが我々の仕事です」
つまり、常に相手が有利という状況下で私を守っていかなければならないということになる。
最悪命に係わる可能性もあり得るかもしれない。
そう思うと、急に喉が渇いてきた。
それに、まだ蒲生さんには言っていないが、あそこの道は私のいつもの通学路になっている。
普段通りのならば間違いなくあの道を通る。 そのことを伝えなければと思っていると、爺の携帯電話に着信が入った。
「はい、もしもし……。 あぁ、わかったご苦労さま、早く温かいところに戻りなさい」
きっと、先ほどの二人からの報告だろう。 行動が早くて助かる。
「失礼いたしました。 それで先ほどの二人に様子を見てもらいましたが、なにやらかなり大きな車が用意されているそうです」
「大きな車?」
「はい、具体的な名前まではわかりませんが、おそらく重機などを運ぶためのトラックかと思います」
重機を運ぶためならば、工事現場にあって不思議ではない。
むしろ当たり前の光景だ。 しかし、それをあえて言ってくるのには訳あるのではないだろうか?
そう考えていると、爺は更に言葉を続けてくる。
「それだけなら、違和感は無かったのですが、そのトラックに積まれているモノが黒い布のようなモノで覆われおり確認できなかったそうです」
「黒い布? 既に運ばれていたのか⁉」
「そのようで、かなりの大物で詳細を確認したくとも警備員と思われる人に、停められ引き返しえてきたそうです」
丁寧に頭を下げてくれる彼に、私は慌てて自分の我がままであると伝える。
「いえ、お嬢様の普段を暮らしをお守りするのが私の役目なのに、それを自ら壊すのは、やはりダメだと思います。 安心してください、私がおりますので」
最後の言葉が凄く心強い。 それに明日は本を買う約束もしている。
出遅れてしまうが、欲しい本はきっと手に入るだろう。
しかし、気がかりなのはやはり、あの工事現場だがいったい何をやっているのだろうか?
私は手元の電話を取ると、使用人を数名呼び出した。
「お待たせいたしましたお嬢様、いかがなさいましたか?」
爺が若い男女二人をつれてきてくれた。
「爺、大変申し訳ないのだけど、あそこで工事をしているのは見えて?」
「工事ですか? いや、気が付きませんでした」
自分がミスしたような素振りを見せるが、気が付かなくて当たり前だ。
私だって気が付けたのは奇跡に近く、もしかすると気が付いていなかった可能性すらある。
「大丈夫、責めているわけではなくて、あの工事現場を少しだけ偵察してくれる? ちょっと気になって」
「さようですか? 確かにこの時期にあの規模を行うのは珍しいですね。暖かい地域ならいざ知らず、このような雪深くなる地域では――」
爺は後ろに控えていた男女二人に視線で合図を送ると、二人は軽く頭を下げて部屋を出ていった。
「もしや、あやつらの可能性でも?」
爺は心配そうに蒲生さんに聞いている。
「可能性の云々で言うと、グレーですね。 お嬢様が申されたようにこの時期にしては珍しいうえに、先ほどから一切動きを見せておりません。 気がかりなのは大きな倉庫と道路を確保している点ですね。 何かを運び入れる気でもあるのかと」
何かを運ぶ? いったいあの規模の倉庫に何を運ぶのだろうか。
「かなり大きいものですね。 誘導員も用意しています。 きっと今晩あたりにでも運ぶつもりなのでしょう」
「ならば、先手を打ってみるのは?」
爺が提案してくれるが、具体的な案はださなかった。
「先手が打てるのが望ましいですが、難しいでしょうね。 相手が本当にASHINAなのかもわからないうえに、正規の工事なのかもしれない。 不用意に動いては、こちらにスキができるので、静観しかないでしょうね。」
確かに、このまま本当に工事が始まれば私たちの取り越し苦労というわけで、誰にも害はおよばない。
爺もあたまを抱えて心配そうにしている。
「守るというのは難しいのです。 相手は用意周到に準備をすすめて攻めてきます。 それをその場で防ぐのが我々の仕事です」
つまり、常に相手が有利という状況下で私を守っていかなければならないということになる。
最悪命に係わる可能性もあり得るかもしれない。
そう思うと、急に喉が渇いてきた。
それに、まだ蒲生さんには言っていないが、あそこの道は私のいつもの通学路になっている。
普段通りのならば間違いなくあの道を通る。 そのことを伝えなければと思っていると、爺の携帯電話に着信が入った。
「はい、もしもし……。 あぁ、わかったご苦労さま、早く温かいところに戻りなさい」
きっと、先ほどの二人からの報告だろう。 行動が早くて助かる。
「失礼いたしました。 それで先ほどの二人に様子を見てもらいましたが、なにやらかなり大きな車が用意されているそうです」
「大きな車?」
「はい、具体的な名前まではわかりませんが、おそらく重機などを運ぶためのトラックかと思います」
重機を運ぶためならば、工事現場にあって不思議ではない。
むしろ当たり前の光景だ。 しかし、それをあえて言ってくるのには訳あるのではないだろうか?
そう考えていると、爺は更に言葉を続けてくる。
「それだけなら、違和感は無かったのですが、そのトラックに積まれているモノが黒い布のようなモノで覆われおり確認できなかったそうです」
「黒い布? 既に運ばれていたのか⁉」
「そのようで、かなりの大物で詳細を確認したくとも警備員と思われる人に、停められ引き返しえてきたそうです」
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俯く俺たちに告ぐ
凜
青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】
仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。
ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が!
幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。
猫の先生は気まぐれに~あるいは、僕が本を読む理由
中岡 始
青春
中学生の陽向の前に、ある夜突然現れたのは、一匹のキジトラ猫。
「やっと開けたか」
窓を叩き、堂々と部屋に入り込んできたその猫は、「トラ老師」と名乗り、陽向にだけ言葉を話す不思議な存在だった。
「本を読め。人生がちょっとはマシになるかもしれんぞ」
そんな気まぐれな言葉に振り回されながらも、陽向は次第に読書の魅力に気づき始める。
ただの文字の羅列だったはずの本が、いつしか新しい世界の扉を開いていく。
けれど、物語のような劇的な変化は、現実には訪れないはずで──。
「現実の中にも、物語はある」
読書を通して広がる世界。
そして、陽向とトラ老師の奇妙な関係の行方とは。
これは、一人の少年と一匹の猫が織りなす、終わりのない物語の始まり。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

俺は決してシスコンではないはず!〜周りはシスコンと言うが、ただたんに妹が可愛すぎるだけなのだが?〜
津ヶ谷
青春
東條春輝は私立高校に通う2年生だった。
学校では、書道部の部長を務め、書の世界でも、少しずつ認められてきていた。
プロのカメラマンを父に持ち、1人で生活することの多かった春輝。
そんな時、父の再婚が決まった。
春輝は特に反対せず、父の再婚を受け入れた。
新しい母は警察官僚で家にほとんど帰らないが、母の連子である新しい妹は人見知りな所があるが、超絶美少女だった。
ほとんど家に帰らない両親なので春輝は新しい妹、紗良とのほぼ2人暮らしが幕を開ける。
これは、兄妹の甘々な日常を描いたラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる