私の守護者

安東門々

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呻る双腕重機は雪の香り

第一波 極秘! 鋼鉄の双腕 ⑥

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「確かに、言われてみるとそうですよね……。 申し訳ございませんでした」

 丁寧に頭を下げてくれる彼に、私は慌てて自分の我がままであると伝える。
 
「いえ、お嬢様の普段を暮らしをお守りするのが私の役目なのに、それを自ら壊すのは、やはりダメだと思います。 安心してください、私がおりますので」

 最後の言葉が凄く心強い。 それに明日は本を買う約束もしている。
 出遅れてしまうが、欲しい本はきっと手に入るだろう。
 しかし、気がかりなのはやはり、あの工事現場だがいったい何をやっているのだろうか?

 私は手元の電話を取ると、使用人を数名呼び出した。

「お待たせいたしましたお嬢様、いかがなさいましたか?」
 
 爺が若い男女二人をつれてきてくれた。
「爺、大変申し訳ないのだけど、あそこで工事をしているのは見えて?」

「工事ですか? いや、気が付きませんでした」
 
 自分がミスしたような素振りを見せるが、気が付かなくて当たり前だ。
 私だって気が付けたのは奇跡に近く、もしかすると気が付いていなかった可能性すらある。

「大丈夫、責めているわけではなくて、あの工事現場を少しだけ偵察してくれる? ちょっと気になって」

「さようですか? 確かにこの時期にあの規模を行うのは珍しいですね。暖かい地域ならいざ知らず、このような雪深くなる地域では――」

 爺は後ろに控えていた男女二人に視線で合図を送ると、二人は軽く頭を下げて部屋を出ていった。
「もしや、あやつらの可能性でも?」

 爺は心配そうに蒲生さんに聞いている。

「可能性の云々で言うと、グレーですね。 お嬢様が申されたようにこの時期にしては珍しいうえに、先ほどから一切動きを見せておりません。 気がかりなのは大きな倉庫と道路を確保している点ですね。 何かを運び入れる気でもあるのかと」

 何かを運ぶ? いったいあの規模の倉庫に何を運ぶのだろうか。

「かなり大きいものですね。 誘導員も用意しています。 きっと今晩あたりにでも運ぶつもりなのでしょう」

「ならば、先手を打ってみるのは?」

 爺が提案してくれるが、具体的な案はださなかった。

「先手が打てるのが望ましいですが、難しいでしょうね。 相手が本当にASHINAなのかもわからないうえに、正規の工事なのかもしれない。 不用意に動いては、こちらにスキができるので、静観しかないでしょうね。」

 確かに、このまま本当に工事が始まれば私たちの取り越し苦労というわけで、誰にも害はおよばない。
 爺もあたまを抱えて心配そうにしている。
 
「守るというのは難しいのです。 相手は用意周到に準備をすすめて攻めてきます。 それをその場で防ぐのが我々の仕事です」

 つまり、常に相手が有利という状況下で私を守っていかなければならないということになる。
 最悪命に係わる可能性もあり得るかもしれない。
 そう思うと、急に喉が渇いてきた。

 それに、まだ蒲生さんには言っていないが、あそこの道は私のいつもの通学路になっている。
 普段通りのならば間違いなくあの道を通る。 そのことを伝えなければと思っていると、爺の携帯電話に着信が入った。

「はい、もしもし……。 あぁ、わかったご苦労さま、早く温かいところに戻りなさい」
 
 きっと、先ほどの二人からの報告だろう。 行動が早くて助かる。
 
「失礼いたしました。 それで先ほどの二人に様子を見てもらいましたが、なにやらかなり大きな車が用意されているそうです」

「大きな車?」
 
「はい、具体的な名前まではわかりませんが、おそらく重機などを運ぶためのトラックかと思います」

 重機を運ぶためならば、工事現場にあって不思議ではない。
 むしろ当たり前の光景だ。 しかし、それをあえて言ってくるのには訳あるのではないだろうか?
 そう考えていると、爺は更に言葉を続けてくる。

「それだけなら、違和感は無かったのですが、そのトラックに積まれているモノが黒い布のようなモノで覆われおり確認できなかったそうです」

「黒い布? 既に運ばれていたのか⁉」

「そのようで、かなりの大物で詳細を確認したくとも警備員と思われる人に、停められ引き返しえてきたそうです」
 

 
 
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