私の守護者

安東門々

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呻る双腕重機は雪の香り

第一波 極秘! 鋼鉄の双腕 ⑤

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 お互いの食事を終えると、こんどこそ午後の読書の時間だ。
 とりあえず一番上の本を手に取って読み始める。
 古典と言っても、古典すぎる気もするが、まずは一ページ目を読んでみる。

 最高の生物と対をなす最強の生物を模しているタイトルに、政治哲学の分野としては有名すぎる一冊。
 手にした私の指はなぜか静かに震えている気がした。

 蒲生さんは何をしているのかと思えば、また目を閉じて瞑想をしている。
 油断しきった感じがするが、私が少しでも動くと右目の瞼がピクリと動いているので、気はずっと張ったままなのだろう。
 疲れてしまうのではないかと思うが、そこはプロとして人の命を守っているのだから気を抜くことはできないだろう。

 そう思っていると、この時期にしては珍しく小雨が降り始めていた。
 いつもは、緩い雪になりそうな外気温だが今日の小雨は冷たく痛そうな雰囲気で、見ているだけで凍えそうになる。

 そう思って窓の外を見ていると、家の近くの工業区画で急に工事を始めている場所があった。
 もうすぐ雪が降り始める。 そうなっては工事は思うようには進まないので、普通ならばこの時期は工事は行わい。

「うるさいですね」

 外に気をとられていた私は、彼の声に驚いて急いで振り返った。
 すると、蒲生さんは目を開けて私と同じ窓の外を見ている。

「あれは何か予定があるんですか?」

「あれ」とは、おそらく工事のことだろう。
 
「私は特に聞いていないけど、そもそもあそこは三春私たちは関わっていないから、詳細は不明よ。 けれども、金曜日に通学したときは何もお知らせらしい看板は無かった」

 ゆっくり立ち上がると、胸ポケットから小さな双眼鏡を取り出し外を見始める。
 しばらく観察していると、彼の息で少しガラスが曇りだしていく。

「動きが変です……。 作業しているような感じではないですね」

「変?」

「はい、誰も作業に取り掛かろうとしませんね。 入念に人が入らないように柵などは設置していますが」

 双眼鏡をしまうと、こちらに向き直って近寄ってくる。

「お嬢様、念のため明日の学園はお休みになられては?」

 そう言われる気がした。 しかし、こればかりは答えは「NO」だ。

「それはダメ、せっかく小学校から皆勤賞だもん、学園でももちろん狙っているの」

 答えに対し彼は、困ったような表情になる。
  
「しかし、もし外の工事がASHINAの仕業だった場合は……‼」

「そうかもしれないけど、これだけはダメ、それに逃げていても解決しないし、私には蒲生さんがいるんでしょ?」

 私の普段の生活が壊されていく、それこそASHINAの思う壺かもしれない。
 だから、今日の本は我慢するが学園生活まで我慢するのはできなかった。
 あんな人に狂わされるなんて、絶対に嫌だった。

 それに、私には蒲生さんがいる。 きっと守ってくれるとなぜか今の段階から信じれた。

「私を全力で守ってくださるのでしょ?」

 一応目に力を入れて聞いてみる。 しかし、彼は私を更に強い眼差しで見つめ返してくる。
 思わず、逸らしそうになるのを堪えた。

 
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