9 / 54
呻る双腕重機は雪の香り
第一波 極秘! 鋼鉄の双腕 ⑤
しおりを挟む
お互いの食事を終えると、こんどこそ午後の読書の時間だ。
とりあえず一番上の本を手に取って読み始める。
古典と言っても、古典すぎる気もするが、まずは一ページ目を読んでみる。
最高の生物と対をなす最強の生物を模しているタイトルに、政治哲学の分野としては有名すぎる一冊。
手にした私の指はなぜか静かに震えている気がした。
蒲生さんは何をしているのかと思えば、また目を閉じて瞑想をしている。
油断しきった感じがするが、私が少しでも動くと右目の瞼がピクリと動いているので、気はずっと張ったままなのだろう。
疲れてしまうのではないかと思うが、そこはプロとして人の命を守っているのだから気を抜くことはできないだろう。
そう思っていると、この時期にしては珍しく小雨が降り始めていた。
いつもは、緩い雪になりそうな外気温だが今日の小雨は冷たく痛そうな雰囲気で、見ているだけで凍えそうになる。
そう思って窓の外を見ていると、家の近くの工業区画で急に工事を始めている場所があった。
もうすぐ雪が降り始める。 そうなっては工事は思うようには進まないので、普通ならばこの時期は工事は行わい。
「うるさいですね」
外に気をとられていた私は、彼の声に驚いて急いで振り返った。
すると、蒲生さんは目を開けて私と同じ窓の外を見ている。
「あれは何か予定があるんですか?」
「あれ」とは、おそらく工事のことだろう。
「私は特に聞いていないけど、そもそもあそこは三春は関わっていないから、詳細は不明よ。 けれども、金曜日に通学したときは何もお知らせらしい看板は無かった」
ゆっくり立ち上がると、胸ポケットから小さな双眼鏡を取り出し外を見始める。
しばらく観察していると、彼の息で少しガラスが曇りだしていく。
「動きが変です……。 作業しているような感じではないですね」
「変?」
「はい、誰も作業に取り掛かろうとしませんね。 入念に人が入らないように柵などは設置していますが」
双眼鏡をしまうと、こちらに向き直って近寄ってくる。
「お嬢様、念のため明日の学園はお休みになられては?」
そう言われる気がした。 しかし、こればかりは答えは「NO」だ。
「それはダメ、せっかく小学校から皆勤賞だもん、学園でももちろん狙っているの」
答えに対し彼は、困ったような表情になる。
「しかし、もし外の工事がASHINAの仕業だった場合は……‼」
「そうかもしれないけど、これだけはダメ、それに逃げていても解決しないし、私には蒲生さんがいるんでしょ?」
私の普段の生活が壊されていく、それこそASHINAの思う壺かもしれない。
だから、今日の本は我慢するが学園生活まで我慢するのはできなかった。
あんな人に狂わされるなんて、絶対に嫌だった。
それに、私には蒲生さんがいる。 きっと守ってくれるとなぜか今の段階から信じれた。
「私を全力で守ってくださるのでしょ?」
一応目に力を入れて聞いてみる。 しかし、彼は私を更に強い眼差しで見つめ返してくる。
思わず、逸らしそうになるのを堪えた。
とりあえず一番上の本を手に取って読み始める。
古典と言っても、古典すぎる気もするが、まずは一ページ目を読んでみる。
最高の生物と対をなす最強の生物を模しているタイトルに、政治哲学の分野としては有名すぎる一冊。
手にした私の指はなぜか静かに震えている気がした。
蒲生さんは何をしているのかと思えば、また目を閉じて瞑想をしている。
油断しきった感じがするが、私が少しでも動くと右目の瞼がピクリと動いているので、気はずっと張ったままなのだろう。
疲れてしまうのではないかと思うが、そこはプロとして人の命を守っているのだから気を抜くことはできないだろう。
そう思っていると、この時期にしては珍しく小雨が降り始めていた。
いつもは、緩い雪になりそうな外気温だが今日の小雨は冷たく痛そうな雰囲気で、見ているだけで凍えそうになる。
そう思って窓の外を見ていると、家の近くの工業区画で急に工事を始めている場所があった。
もうすぐ雪が降り始める。 そうなっては工事は思うようには進まないので、普通ならばこの時期は工事は行わい。
「うるさいですね」
外に気をとられていた私は、彼の声に驚いて急いで振り返った。
すると、蒲生さんは目を開けて私と同じ窓の外を見ている。
「あれは何か予定があるんですか?」
「あれ」とは、おそらく工事のことだろう。
「私は特に聞いていないけど、そもそもあそこは三春は関わっていないから、詳細は不明よ。 けれども、金曜日に通学したときは何もお知らせらしい看板は無かった」
ゆっくり立ち上がると、胸ポケットから小さな双眼鏡を取り出し外を見始める。
しばらく観察していると、彼の息で少しガラスが曇りだしていく。
「動きが変です……。 作業しているような感じではないですね」
「変?」
「はい、誰も作業に取り掛かろうとしませんね。 入念に人が入らないように柵などは設置していますが」
双眼鏡をしまうと、こちらに向き直って近寄ってくる。
「お嬢様、念のため明日の学園はお休みになられては?」
そう言われる気がした。 しかし、こればかりは答えは「NO」だ。
「それはダメ、せっかく小学校から皆勤賞だもん、学園でももちろん狙っているの」
答えに対し彼は、困ったような表情になる。
「しかし、もし外の工事がASHINAの仕業だった場合は……‼」
「そうかもしれないけど、これだけはダメ、それに逃げていても解決しないし、私には蒲生さんがいるんでしょ?」
私の普段の生活が壊されていく、それこそASHINAの思う壺かもしれない。
だから、今日の本は我慢するが学園生活まで我慢するのはできなかった。
あんな人に狂わされるなんて、絶対に嫌だった。
それに、私には蒲生さんがいる。 きっと守ってくれるとなぜか今の段階から信じれた。
「私を全力で守ってくださるのでしょ?」
一応目に力を入れて聞いてみる。 しかし、彼は私を更に強い眼差しで見つめ返してくる。
思わず、逸らしそうになるのを堪えた。
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俯く俺たちに告ぐ
凜
青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】
仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。
ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が!
幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。
猫の先生は気まぐれに~あるいは、僕が本を読む理由
中岡 始
青春
中学生の陽向の前に、ある夜突然現れたのは、一匹のキジトラ猫。
「やっと開けたか」
窓を叩き、堂々と部屋に入り込んできたその猫は、「トラ老師」と名乗り、陽向にだけ言葉を話す不思議な存在だった。
「本を読め。人生がちょっとはマシになるかもしれんぞ」
そんな気まぐれな言葉に振り回されながらも、陽向は次第に読書の魅力に気づき始める。
ただの文字の羅列だったはずの本が、いつしか新しい世界の扉を開いていく。
けれど、物語のような劇的な変化は、現実には訪れないはずで──。
「現実の中にも、物語はある」
読書を通して広がる世界。
そして、陽向とトラ老師の奇妙な関係の行方とは。
これは、一人の少年と一匹の猫が織りなす、終わりのない物語の始まり。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

俺は決してシスコンではないはず!〜周りはシスコンと言うが、ただたんに妹が可愛すぎるだけなのだが?〜
津ヶ谷
青春
東條春輝は私立高校に通う2年生だった。
学校では、書道部の部長を務め、書の世界でも、少しずつ認められてきていた。
プロのカメラマンを父に持ち、1人で生活することの多かった春輝。
そんな時、父の再婚が決まった。
春輝は特に反対せず、父の再婚を受け入れた。
新しい母は警察官僚で家にほとんど帰らないが、母の連子である新しい妹は人見知りな所があるが、超絶美少女だった。
ほとんど家に帰らない両親なので春輝は新しい妹、紗良とのほぼ2人暮らしが幕を開ける。
これは、兄妹の甘々な日常を描いたラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる