私の守護者

安東門々

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私の日常

日常 ③

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 家までの移動中に私は、一緒に来ていただいた運転手へメールでお父様と帰ると伝えた。
 言わないと、ずっと同じ場所で待っているだろう。
 すぐに返事はきて『了解いたしました』と一言書かれている。
 
 家の門が見えてくると、そこに一台の車が停まっていた。
 パッと見は小さい感じがするが、ドアが二枚しかない車で、灰色にメタリックが映えるカッコいい車だった。

「お? もう着いているのか、仕事が早いのは良いことだ」
 
 こちらの車を確認したのか、運転席ドアが開くと細身で長身の男性が降りてくる。
 黒いスーツにサングラスをしているので、はっきりと確認できないが整った顔立ちに、若干の癖がある髪の毛を清潔的にまとめている。
 そして、シャープな体つきだがしっかりとした肩幅は鍛える証拠だった。

 その男性を見たお父様は、なぜかポケットから出したハンカチを噛みだしてる。
 これは良くイライラしたときに行う行動で、よくお母さまに叱られていた。
 最近は見なかったが、こう至近距離でみると親ながらちょっと離れたくなってしまう。

「ぐぬぬぬぬ……。 イケメンはダメだって言ったのに!」

 意味の分からない言葉を狭い車内で叫ぶのはやめていただきたい。
 そんなお父様の変な行動に苦笑いしながら車を走らせていくと、長身の彼は瞳を隠していたサングラスを取ってこちらに向かって頭を下げてきた。

 あまり大きいとは言えない眼をしているが、それでもキリっとした感じがし、冷たいような印象もうけるかもしれないが、表情は柔らかいように見えた。

 車が停まると同時に、後部座席のお父様は勢いよく飛び出していき黒いスーツの彼に向かって何かを叫びながら近づいていく。

 お互い何を喋っているのか聞こえてこないが、お父様に捲し立てられて困っている顔をしていた。
 私は再度ため息を吐くと、車から降りて二人の傍へ向かって歩いていく。

 それを最初に確認したのは、終始苦笑いをしていた彼だった。
 こちらを見つけると、一瞬小さな瞳が僅かに大きくなったような気がする。

 しかし、一瞬のことですぐに表情を元に戻すと私に向かって深々と頭を下げてきた。
 どこかで見たことのあるような気がしたが、それがどこなのかハッキリとは思い出せない。
 そもそも、私の気のせいの可能性もあるので「どこかでお会いしましたか?」などとは聞かないでおこう。
 
 
  私の後を音もなくついてくるのは、少し怖い気がするが頼もしくもあり、安心感がついてくるような感じがする。
 お父様は先頭を歩いているが、三歩進たびにこちらを睨んでくるので、ちっとも進まない。
 こちらと言うよりも、後ろの男性をと言ったほうがよいだろう。
 
 お父様のお仕事部屋へ着くと、正面のデスクへ腰を下ろすと、私を近くに読んだ。
 男性はドアの付近で、立ったまま待っている。

「あぁ……、 えっと、あれだ。 そう言えば名前を聞いていなかったね」
 
 少しばつが悪そうな顔をしたお父様だったが、すぐに表情を元に戻した。

「はい、ご挨拶が遅くなり大変失礼いたしました。 私の名前は蒲生がもう 盛矢もりやと申します。 お嬢様を必ずお守りいたします」

 薄々は気が付いていたが、やはり私を心配して身辺警護の人をつけてくれたのだろう。
 私はあえて驚かず、静かに頭を下げた。 それにあわせて蒲生さんも頭を下げてくれる。

「わかった蒲生くん、私たちの自己紹介は省かせてもらう、きみはこちらの情報を知っているだろうからね。そして、ちょっと待ってくれ」

 そう言ってお父様はポケットから携帯電話を取り出すと、誰かに掛け始めた。
 
「あぁ……。 私だ、言ったことと違うぞ、誰がイケメンで好青年を寄越せと言ったんだ! 腕はよくて老獪な人とかいなかったの⁉ ねぇ⁉ 聞いてる?」
 
 この場にいる全員に聞こえる声で、何か意味のわからないことを言っているが、私は感じる。
 意味をわかってはダメだと。
 それから、私たちに背中を向けて小声で話し始めること数分、ようやく会話は終わり、頭を抱えたお父様がもう一度こちらに向き直った。

「ふぅ、蒲生くんの上司に聞いたよ。 腕は社内で一番なうえに、今回の件は自ら立候補したそうだね? そして、今回のような相手に対応できるのは君だけということで間違いないかい?」

「はい、僭越ながら私に任せていただきたく、お願いいたしました」

「立候補した理由を聞いてもいいかね?」

 お父様の瞳が鋭くなった。 こんな表情をした父を私はみたことがなかった。
 私は蒲生さんとお父様を交互に見比べていると、少し息を吸い込んだかのように彼は呼吸をした。
「理由は私を……」

 彼が言葉を発しようとしたとき、外が一気に騒がしくなった。

「な! 何事だ⁉」


 

 

 

 
 
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