私の守護者

安東門々

文字の大きさ
上 下
4 / 54
私の日常

私の日常の崩壊

しおりを挟む
 屋敷の外からけたたましい音が鳴り響き、まるで空き缶の中を蚊の大軍が飛び交っているかのような、嫌な音だった。
 全員がその異音に気を取られていたが、一人だけ素早く私の近くに来てくれた人がいる。
 ふわっと近寄ったときに香ってきたのは、清涼感のあるアロマの香りで、不快な感じは一切しなかった。
 そして、思ったとおり一見細身に見えるが、筋肉質でしっかりと鍛えられている体で、私を庇うように前に出てくれる。

「お嬢様、私から決して離れないように」

 声だけが聞こえてくる。 後ろを振り返ることなく告げられたが、私を守るため、正面を向いたまま集中していた。
 
 しかし、外から聞こえる騒音は鳴りやまず、屋敷を取り囲むように広がっていく。
 お父様は現状を確かめるべく、外へ出ようとするが蒲生さんがそれをやめさせ、同行するかたちで外へと向かった。
 玄関では、多くの使用人が困ったような表情で一か所に集まり困惑している。
 
「何があった⁉」

「旦那様! 今しがた外で物騒な連中がお屋敷を取り囲んでおります」

「なに?」

 窓からゆっくりと外を確かめると、そこには原型がわからないほど改造されたバイクと車が何十台も連なって、グルグルと屋敷の周りを走っている。
 そして、その中でも異様に目立つ車があった。

 全面が金色で仕上げられ、黒いフィルムが全部のガラスに貼られているが、あの趣味の悪そうな改造に心当たりがあった。
 
「もしかしてASINA?」

 私が小声でつぶやくと、蒲生さんは内ポケットへそっと手を入れる。
 
「なに⁉ こうも大胆に嫌がらせをしてくるのか、バカなのか大胆なのか、わからないやつめ」

 あの金色の車が停まり、運転席から降りたのはやはり、蘆名重斗だった。

「おぉーい! 聞いているか! 俺を怒らせた報いをきっちり取らせてやる! 絶対にだ! 今日は俺の力の一部を見せただけだが、これからもっと凄いことがおこる。 楽しみにしとけよ!」

 捲し立てるように言葉を放つと、彼はそのまま車に乗り込んで走り去っていく、その後を追うように改造した車やバイクの集団が消えていった。

 完全にいなくなるのを確認すると、使用人たちはお互いの顔色を確認しながら仕事へ戻っていき、お父様も困惑した表情でこちらを見つめてきた。
 
「ふぅ……。 よもやここまでとは、顔は気にくわないが、腕を見込んで頼む。 私の娘を守ってやってくれ」

 その言葉を待っていたかのように、蒲生さんは丁寧にお辞儀気をする。

「謹んで、必ずお守りいたします!」
 
 顔を上げたとき、彼はなぜか喜んでいるかのような表情をしていた。
 そして、これが蒲生 盛矢とのファーストコンタクトであの蘆名 重斗との戦いの幕が上がった瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俯く俺たちに告ぐ

青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】 仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。 ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が! 幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

猫の先生は気まぐれに~あるいは、僕が本を読む理由

中岡 始
青春
中学生の陽向の前に、ある夜突然現れたのは、一匹のキジトラ猫。 「やっと開けたか」 窓を叩き、堂々と部屋に入り込んできたその猫は、「トラ老師」と名乗り、陽向にだけ言葉を話す不思議な存在だった。 「本を読め。人生がちょっとはマシになるかもしれんぞ」 そんな気まぐれな言葉に振り回されながらも、陽向は次第に読書の魅力に気づき始める。 ただの文字の羅列だったはずの本が、いつしか新しい世界の扉を開いていく。 けれど、物語のような劇的な変化は、現実には訪れないはずで──。 「現実の中にも、物語はある」 読書を通して広がる世界。 そして、陽向とトラ老師の奇妙な関係の行方とは。 これは、一人の少年と一匹の猫が織りなす、終わりのない物語の始まり。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

俺は決してシスコンではないはず!〜周りはシスコンと言うが、ただたんに妹が可愛すぎるだけなのだが?〜

津ヶ谷
青春
 東條春輝は私立高校に通う2年生だった。 学校では、書道部の部長を務め、書の世界でも、少しずつ認められてきていた。  プロのカメラマンを父に持ち、1人で生活することの多かった春輝。 そんな時、父の再婚が決まった。 春輝は特に反対せず、父の再婚を受け入れた。  新しい母は警察官僚で家にほとんど帰らないが、母の連子である新しい妹は人見知りな所があるが、超絶美少女だった。  ほとんど家に帰らない両親なので春輝は新しい妹、紗良とのほぼ2人暮らしが幕を開ける。  これは、兄妹の甘々な日常を描いたラブコメディ。

処理中です...