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一途な幼馴染は嫌いですか? いっくんのターン

やきとり

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「さて、不思議に思っているかもしれませんが、ここは私のお店ですよ」

 椅子に腰を落ち着けさせ、キョロキョロと店内を見渡していると草井さんが答えてくれた。

「えぇ⁉ す、凄くないですか?」
「凄くはありませんよ。実は、前の社長に相談していたんですよ。自分のお店を持ちたいって」

 自分のお店を持ちたい。
 私も一瞬考えたことがあったけど、実際に行動に移す人は少ない。
 
「そうなんですか! おめでとうございます。夢が叶いましたね」

 私の言葉に対し、嬉しそうな顔になる草井さん、でもなんでいっくんがここにいるのだろうか?
 その質問をしようとすると、今度は彼が答えてくれた。

「引継ぎのときにね、この会社に多大な貢献をしてくれた草井さんのサポートをしてくれって頼まれていたんだ。それで、ちょうどここが空いていたので家賃も安いから初期投資が低くて良いのでは? と、持ちかけたんだよ」

「そうですね、本当に助かりました。柿崎社長にはスポンサーにもなっていただきましたので」

 スポンサー? つまり、このお店を出店するさいに資金を出したということなのだろうか?
 チラッといっくんを見ると、なぜか恥ずかしそうに顔を背けてしまう。

「このお店が上手くいったら、私の会社の社員も多く利用するだろうし、メリットがあると思ったまでだよ」

 それを聞いてまた笑顔になる草井さん、あぁ……なるほど、ただ単純に彼は善意で草井さんに協力しているのだろう、確かにただの善意で行動できる人は少ない。
 
「な、なんだその目は! しっかり回収させていただきますからね草井さん‼」

「はい、もちろんですとも」

 二人のやりとりがおかしくて、私はついつい笑ってしまう。
 最初は堪えていたけれど、ぷっと声が出ると抑えるのが無理になった。

「直江さんはなぜ笑うんだ!?」

「ちょっと社長と草井さんのやり取りがあまりにも微笑ましくて」

 グッとまた顔を隠すいっくん、それをいつものようにニコニコと眺めている草井さん、なんだろう……この雰囲気は私にとって凄く居心地のよい世界だと思えた。

「それで、直江さん何か食べていきますか?」
「いいんですか?」
「もちろん、これから社長と一緒に料理のアイディアを練るところでしたので、お酒も少ないですがありますので、どうぞ」

 いっくんの顔色をうかがうために、視線を向けるとヤレヤレといった表情で頷いてくれる。
 やったー! 草井さんの料理が食べられる‼

 ウキウキしながら少し待っていると、コトリと美味しそうな香りと一緒に運ばれてきた焼き鳥が目の前に置かれる。

「うわぁ――! 美味しそう♪」

 私は丁寧に手をあわせて「いただきます」と言ってから食べてみる。
 まずはネギまだ、しかも塩が私は大好きでネギの甘さと炭の良い香りがあわさっていて凄く美味しい。

「ん~‼ 美味しいです!」

「そうですか、良かったです」
「そうだろ? 私も食材選びを手伝ったのでな! こういった基本的な料理が美味しいと嬉しいだろ?」

 私は頷きながら、出されたビールをひと口飲み込んでいく、口の中がさっぱりすると、またひと口食べた。
 どうしよう……止まらないかも。

「お、おい! 何か感想とかないのか?」
「社長、いいじゃないですか、こう黙々と食べてくれるのが感想ですよ」

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