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後輩くんは愛したい、愛されたい 新発田 勇士のターン

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 好き、その言葉を言うとき一瞬ドキッと心臓が跳ねた。
 好き、好き、好き……ラブとライク、今回はライクの意味を強めて言ってみたが吐き出された言葉はラブとライクの境目のような感じがした。

『す、好きなんすか⁉』

「違う違う、えっと……」

『えぇ、違うんすか?』

 なんだがめんどくさくなってきた。
 だけど、彼の声の感じからして本気では落ち込んでいないようで、私から好きと言われたことが単純に嬉しいと教えてくれた。

『本当にすみませんでした。おやすみなさい先輩』

 優しいおやすみを言ってドアから離れて気配が無くなった。
 私はそのまま背中をドアにつけて考えてしまう、いっくんみたいにお金は無いけれど優しくていつも笑顔な後輩、もし彼と一緒にいられるならきっと毎日楽しいだろう。
 それに、意外と手先も器用な一面や仕事ができるという部分も知れたのは大きいかもしれない。

「って、私何を考えているのよ」

 ふっとユウと結婚した場合を想像してしまった。
 地味だけど、しっかりとしたアパートの一室で仕事帰りを待つ私の姿。
 少し早く帰宅して料理をしていた。そんな場面が浮かんできてしまう。

「ダメダメダメダメ!」

 ぶんぶんと頭を振って妄想を散らしていく、今この場の雰囲気で流されてはダメ。
 もっと真剣に考えないと失礼だし、それにいっくんのことも気になっている。

「はぁ、もう疲れそう」

 主に精神面がキツイ、普段はあまり感じることがないがちょっと油断すると二人の優しさと愛に溺れてしまいそうになる。
 
「寝よう、そうだ! 寝よう」

 ツカツカと敷いた布団に入り込み、目を閉じる。
 ユウの微笑んだ顔が浮かんでくる、大学時代に知り合った大切な後輩で今は会社の同僚でもあった。

「人生、本当に何があるのか不思議よね」

 布団を口元まで持ってきて何も考えないようにしていると、眠気がやってくる。
 そのとき、玄関の方で僅かに人の気配がした。

(あ……いっくん帰ってきたんだ)

 私たちを気遣ってくれ、抜き足差し足で廊下を歩いていく。
 そして、さっとお風呂へと向かっていった。
 一度寝返りをうって深呼吸をしてゆっくりと力を抜いていくと、全身の電源が切れたように私は眠り世界へと移っていく。

 

***

「先輩! 先輩! 大丈夫ですか?」

「えぇ? ユウ何言っているのよ! ほら、もっと飲みなさい」

 あれ? なんだろう夢かしら?
 懐かしい感じのする光景に思わず叫びたくなる。だって、ここは私たちが大学時代によく利用していた居酒屋なのだから。
 そこで、友だちとユウの三人で飲んでいるときで、私は飲み過ぎて途中から記憶がまったくなかった。

「もう必要ないっすから、先輩はほら水飲んでくださいよ」

 このとき、友だちはたしかトイレか何かに行って二人きりだったんだよね。
 まぁ、その友だちも本当はユウを狙っていて私にセッティングをお願いしてきたのだが……。

「えへへへへ、優しいね。ユウと結婚する人は幸せだなぁ」

「……」

 はぁ⁉ 私なんてこと言っているのよ。これ夢よね? だって、私はすごく意識がしっかりしていて、目の前の私はべろんべろんになってて……うわ、なんだか気持ち悪くなってきた。
 ドッペルゲンガーを見つけたときって、こんな感じなのかもしれない。

「それじゃぁ、先輩は俺となら結婚してくれますか?」

 ユウが緊張した感じで聞いてきた。
 それに対し私はケラケラと笑いながら「OKOK! もちろんよ!!」と言って笑っている。
 かなりたちの悪い絡み方で以後注意しよう……。

「絶対、迎えにいきますから……」

 ぐにゃぐにゃと酔っ払いテーブルで寝始めた私の頬にキスをするユウ、そしてすぐ後に友だちが戻ってきた。

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