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奇妙な暮らしのスタート
ルール
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「うんっしょ」
自分の荷物を運び入れ終える。
今、大げさに「うんっしょ」って表現してみたが、実際の私が持ち運んだ荷物は少ない。
なんとか会社に事情を説明し、お給料を現金で前もって貰えたので必要なものは揃えられた。
ありがとうございます経理部長様……。
「随分と少ないな」
後ろから声をかけられる。
「あ、いっくん」
いっくんと呼んで慌てて口を塞いでしまう。
「良いよ、いっくんで。むしろそっちのほうが私は嬉しい」
この間のスーツ姿とは違い、細身の体系にセンスの良い部屋着で自分の荷物を運んでいた。
三人で決めた部屋、全員の会社からも近いという凄い偶然と、そこそこ広い部屋がそろっており、入居可能時期もバッチリですぐに決めることができた。
「ありがとう、私のためにここまでしてくれるなんて」
「いや、勘違いするな。私は今でも愛夏さんをすぐに連れていきたい。だけど、それはあなたも望んでいないし、新発田くんに対しても卑怯だ。あくまで公平にと言ったのは私なのだから」
その真面目さは変わっていない。
そして、優しさもあの頃のままだ。 そして、不意に今すぐ連れていきたいとかサラッと言われると、どう返事をしたらよいのかわからない。
「それじゃ、これ部屋の鍵」
「あ、ありがとう」
使い慣れない家の鍵とは違った質感に戸惑いを覚えてしまう。
しかも、私だけではなくそれも家族以外の人と一緒に住むなんて今まで考えもしなかった。
大切にしまうと、自分の部屋を見渡してみる。
本当に何もない、あるのは小さな化粧ポーチと大急ぎで買った仕事着に数着の私服程度と、かなり心もとない。
二人は私に支援を申し出てくれてたが、それはお断りした。
「遠慮なく言ってくれてよいのに」
「うんん、大丈夫。食べるのにも困らないしちょっと贅沢しなければすぐに元通りの生活になると思うから、それに……」
視線の先には、怖いお兄さんたちに頼み込んで、なんとか家族の遺影だけ回収できた。
『これは金にならんから、良いぞ』
これで、心細くないと思える。
遺影に手をあわせて、これからの無事を祈るとユウの気配がしてきた。
「おろ? 先輩どうもっす……ってオッサンもいたんすか」
「随分と失礼だね、まぁこの生活を円滑にするためにも、その乱雑な性格をどうにかしないといけないな」
ユウの印象は違っており、私が大学時代のころはもっと人懐っこく、口調も優しい感じだったのに幼馴染の前だと変わっていた。
人との距離感が絶妙で、可愛い感じのする人だと思っていたが今になって思うのは、いっくんに話しかけているときの口調のほうがスムーズで違和感がなかった。
「それでは、それぞれの部屋のことが落ち着いたら一旦集まってミーティングでもしませんか?」
「ミーティング? 何を話し合うというんだい?」
私は今後の生活で必要なルールを決めようと告げると、納得してくれたのか頷いてくれる。
それから、各々の準備を終わらせて集合という形になったが、何度も説明しているように私の荷物は殆どない。
手持ち無沙汰でブラブラしながら二人の姿を見てみることにした。
「いっくんは……昔はもっと華奢でナヨナヨしたイメージあったけど……」
私より三つ年上だったと思うので、今で二十九歳になっているはずだった。
がっちりとした背中に、あまり身長は変わらなかったはずなのに、おそらく百八十は越えているだろう。
人は変われるって良くいうけれど、変わりすぎな気もしないわけでもない。
「でも、あの頃と変わっていないのは」
私が久しぶりに会っても彼だと気づけたのは、あの瞳があの頃と変わっていないためだ。
イジメられてメソメソしていたいっくんを慰めていると、うるっとした綺麗な瞳に見つめられる。
凄く印象的で、今まで忘れていたのに想い出がフィードバックしてきた。
今度は大学の後輩に視線を移して観察してしまう。
「大人っぽくなったなぁ」
私が四回生のときに入学してきたから、たぶん今で二十三歳ぐらいだと思う。
人懐っこくて、コロコロと表情を変える感じが子猫っぽくて、顔のつくりと相まって年上の女性たちに大人気だった。
私が参加していた演劇サークルに参加しており、そこで仲良くなったけど……まさかプロポーズされるなんて思わない。
「自分を変えたいからか」
彼がサークルに参加した理由を聞いてとき不思議に思ったときがある。
少し照れながら「自分を変えたくて」なんて言われるなんて思わない、でも楽しそうに演劇に打ち込む彼は素敵だと感じた。
私は花もなければ、演技力無かったから裏方に徹していたけれど、それはそれで凄く楽しくて良い想い出になっている。
もちろん、ユウは一生懸命さとイケメンにより初期から様々な役を担っていた。
自分の荷物を運び入れ終える。
今、大げさに「うんっしょ」って表現してみたが、実際の私が持ち運んだ荷物は少ない。
なんとか会社に事情を説明し、お給料を現金で前もって貰えたので必要なものは揃えられた。
ありがとうございます経理部長様……。
「随分と少ないな」
後ろから声をかけられる。
「あ、いっくん」
いっくんと呼んで慌てて口を塞いでしまう。
「良いよ、いっくんで。むしろそっちのほうが私は嬉しい」
この間のスーツ姿とは違い、細身の体系にセンスの良い部屋着で自分の荷物を運んでいた。
三人で決めた部屋、全員の会社からも近いという凄い偶然と、そこそこ広い部屋がそろっており、入居可能時期もバッチリですぐに決めることができた。
「ありがとう、私のためにここまでしてくれるなんて」
「いや、勘違いするな。私は今でも愛夏さんをすぐに連れていきたい。だけど、それはあなたも望んでいないし、新発田くんに対しても卑怯だ。あくまで公平にと言ったのは私なのだから」
その真面目さは変わっていない。
そして、優しさもあの頃のままだ。 そして、不意に今すぐ連れていきたいとかサラッと言われると、どう返事をしたらよいのかわからない。
「それじゃ、これ部屋の鍵」
「あ、ありがとう」
使い慣れない家の鍵とは違った質感に戸惑いを覚えてしまう。
しかも、私だけではなくそれも家族以外の人と一緒に住むなんて今まで考えもしなかった。
大切にしまうと、自分の部屋を見渡してみる。
本当に何もない、あるのは小さな化粧ポーチと大急ぎで買った仕事着に数着の私服程度と、かなり心もとない。
二人は私に支援を申し出てくれてたが、それはお断りした。
「遠慮なく言ってくれてよいのに」
「うんん、大丈夫。食べるのにも困らないしちょっと贅沢しなければすぐに元通りの生活になると思うから、それに……」
視線の先には、怖いお兄さんたちに頼み込んで、なんとか家族の遺影だけ回収できた。
『これは金にならんから、良いぞ』
これで、心細くないと思える。
遺影に手をあわせて、これからの無事を祈るとユウの気配がしてきた。
「おろ? 先輩どうもっす……ってオッサンもいたんすか」
「随分と失礼だね、まぁこの生活を円滑にするためにも、その乱雑な性格をどうにかしないといけないな」
ユウの印象は違っており、私が大学時代のころはもっと人懐っこく、口調も優しい感じだったのに幼馴染の前だと変わっていた。
人との距離感が絶妙で、可愛い感じのする人だと思っていたが今になって思うのは、いっくんに話しかけているときの口調のほうがスムーズで違和感がなかった。
「それでは、それぞれの部屋のことが落ち着いたら一旦集まってミーティングでもしませんか?」
「ミーティング? 何を話し合うというんだい?」
私は今後の生活で必要なルールを決めようと告げると、納得してくれたのか頷いてくれる。
それから、各々の準備を終わらせて集合という形になったが、何度も説明しているように私の荷物は殆どない。
手持ち無沙汰でブラブラしながら二人の姿を見てみることにした。
「いっくんは……昔はもっと華奢でナヨナヨしたイメージあったけど……」
私より三つ年上だったと思うので、今で二十九歳になっているはずだった。
がっちりとした背中に、あまり身長は変わらなかったはずなのに、おそらく百八十は越えているだろう。
人は変われるって良くいうけれど、変わりすぎな気もしないわけでもない。
「でも、あの頃と変わっていないのは」
私が久しぶりに会っても彼だと気づけたのは、あの瞳があの頃と変わっていないためだ。
イジメられてメソメソしていたいっくんを慰めていると、うるっとした綺麗な瞳に見つめられる。
凄く印象的で、今まで忘れていたのに想い出がフィードバックしてきた。
今度は大学の後輩に視線を移して観察してしまう。
「大人っぽくなったなぁ」
私が四回生のときに入学してきたから、たぶん今で二十三歳ぐらいだと思う。
人懐っこくて、コロコロと表情を変える感じが子猫っぽくて、顔のつくりと相まって年上の女性たちに大人気だった。
私が参加していた演劇サークルに参加しており、そこで仲良くなったけど……まさかプロポーズされるなんて思わない。
「自分を変えたいからか」
彼がサークルに参加した理由を聞いてとき不思議に思ったときがある。
少し照れながら「自分を変えたくて」なんて言われるなんて思わない、でも楽しそうに演劇に打ち込む彼は素敵だと感じた。
私は花もなければ、演技力無かったから裏方に徹していたけれど、それはそれで凄く楽しくて良い想い出になっている。
もちろん、ユウは一生懸命さとイケメンにより初期から様々な役を担っていた。
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