上 下
2 / 28
奇妙な暮らしのスタート

再会

しおりを挟む
「?」

 じゃりっと音がするが、一人ではなく複数のような気がした。
 またあの怖い人たちだろうか? これ以上何を私から奪っていくのだろう? そう思って、睨めながら顔をあげるとそこには意外な人たちの姿があった。

「え?」

「おいおいどうした? そんな酷い顔をして」

「先輩大丈夫ですか? 探しましたよ」

 懐かしい姿に思わず固まってしまう。 

「もしかして? い、いっくん? それと、ユウ?」

 社会人なりたてのようなパリッとしたシャツに爽やかな鼻筋に、透き通るような瞳が印象的な大学の後輩の新発田しばた勇士ゆうしと、いかにも高級そうな腕時計とセンスのよいスーツにキリっとした顔のラインと知的な表情が印象的だが、どこか面影があって思い出すことができた。
 
 昔、隣に住んでいた幼馴染の柿崎かきざきいずみ、いつもイジメられてメソメソしていた印象があって、護ってあげなくちゃ! なんて、年下の私が思っていた時期もあった。
 
「懐かしいな、元気? とは、言えそうもないが大丈夫か?」

「先輩、どうしたんすか? 困ったことがあったら俺になんでも言ってください!」

 二人の声が被る。 そして、にらみ合う

「なんすかオッサン、先輩の何なんすか」

「初対面の人に対しオッサンとは随分と失礼じゃないのかな? キミこそ愛夏さんとどういった関係があるというのだい?」

 バチバチと見えない火花を散らす二人、こちらはどうしてよいのかわからずとりあえず声をかけることにした。

「え、えっと、二人とも久しぶり……急にどうしたのかな?」

 苦笑しながら、二人の間に入るように会話を投げ込むと、にらみ合いを辞めてこちらを見つめてくれた。
 そして、なぜか二人で照れながら咳ばらいを一つすると、再度同時に声を発した。

「愛夏さん結婚しましょう」
「先輩、結婚しましょう」

「「は⁉」」

「へ?」

 
 
『拝啓 天国のお祖母ちゃん、お祖父ちゃんへ』

 家と財産を失った日、なぜか大学の後輩と幼馴染にプロポーズを受けました。


「な、なに言ってるんすかオッサン! 先輩は俺と結婚するんですよ」

「ふっ、何を言うのかと思ったら、愛夏さんは私と結婚すると約束しているのだ」

 明らかに喧嘩腰のユウと冷静に見せて、こめかみに【怒りマーク】が浮き出ているいっくん。
 双方譲らない感じで、プロポーズを受けた私を置いて行っていた。

「あ、あのぁ……」

 なんとか声を出そうとするが、二人はまた別の何かで盛り上がっている。

「愛夏さんは昔、私と婚約していたのだ」

「はぁ? 何言ってんすか? 先輩は俺と約束してくれてたんですよ」

 どうしよう……どちらも覚えていない。
 私はいったいいつ、彼らと結婚の約束をしたのだろうか?
 いつまでも、収拾がつかない感じがするので無理やり間に入って、とりあえず二人の話を聞くことにした。

「覚えていない? ま、まさか……」
「まぢっすか……けっこうショックす」

 落胆する二人、落ち込んでいるときにいきなり再会したかと思ったら、コロコロと表情が変わる感じのイメージが無かったのは二人とも共通していたイメージだったが、どうやら違うようだ。

「ご、ごめんなさい。えっと……急にそう言われても全然覚えていないの、それに今は――」

 私の現状を説明すると、急に心配そうに私を見つめだした後輩と幼馴染。
 その優しい瞳に心なしか鼓動が早くなる。

「そうだったのか、愛夏さん……辛かったでしょう。それならそうと早く言ってください我が家に案内します」
「は⁉ だから、なんでそうなるんだってばよ!! 先輩、俺と一緒に来てください。狭い場所ですが不自由はさせません」

 いっくんが手を掴むと、ユウも空いている片方の手を掴んでくる。
 またお互いにらみ合って、私を自分の方へと寄せよはじめた。

「いっ、痛いッ!」

 段々と力が入って、無理やりな感じに思わず声を漏らしてしまう。
 私の言葉に反応し、急いで手を離してくれたが困り果てた顔をしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

処理中です...