上 下
37 / 44
イフリートの泉を解放せよ

扉を開け

しおりを挟む
「うぎゃああ!」

 また誰かがやられた。
 ファルス隊も苦戦している。
 ゼイニさんたちの弓隊もこれ以上は援護ができないだろう……だけど、砦からの増援は無くなり戦況は膠着状態だったが、ついに彼が道を開いた。

「おしゃぁ! 俺様の出番だな」

 ラバルナが率いる重装部隊、足は遅いがその装備と練度は教王国の正規兵を凌ぐと言っても過言ではない。

「よっし! レイナ隊も相手を押すわよ、神話世界の遺物を我らが砂漠から追い出しやりましょう!!」

 指笛を吹くと、私のジャマルが現れてそれに乗ると、今度はサーベルを構えて全体を指揮し始める。
 たった二十体そこらの敵にこれだけ苦戦するなんて信じられない、戦場の真ん中をラバルナ隊が突撃し途中で魔人を狩り始めた。

「よお、随分数が減っているじゃないか、さすがだな」

「えぇ、でも一番美味しいところはもっていくのね」

「当たり前だろ、それが楽しいんだからな」

 お互い小さく笑うと、戦場に戻っていく。
 ラバルナ隊が合流したことで、ファルス隊も生き返り魔人たちを砦に追いつめていった。
 最後の一体を倒すと、門をこじ開ける。

「この砦の門は三つある。二つ目まで突破できたが三つ目で籠られたが、おそらく魔人の封印もその近くだろう」

 バンッ! 魔人たちが閉じた扉をこじあけると、兵たちが一斉に入り込む。
 しかし、敵の存在は確認できなかった。

「主……魔人どもがおりませんぞ」

「おかしい、先ほどまで外であれだけ抵抗したのに、急になぜだ?」

 注意深く進むと、第二の門が見えてこれもなんの抵抗もなくこじ開けられた。

「?」

 周りの兵たちも何が起きているのか困惑しはじめる。
 
「まさか、全部倒しちまったのか?」

 それはない、魔人の目的はおそらくイフリートを消すこと……⁉

「まさか、砦の外で戦ったのは私たちを足止めするための部隊? 本命のイフリートを倒すまでの時間稼ぎってことだとしたら?」

「おっと、それはマズイな……もしイフリートが消されこの砦に施された封印が一気に解放されてみろ……周りは魔人だらけになっちまうぞ!」

 それを聞いたファルス隊が一気に動き出した。
 ジャマルを巧みに駆使し、奥へと突き進んでいく。
 私たちもその後をついていく、そして最深部へと到着すると多くの魔人が待ち構えていた。

「レイナ様、どうやらまだ封印は解かれていないようですな!」
「えぇ、でも急ぎましょう」

 二十体ほどの敵が最後の門の前で雄たけびをあげて威嚇していくる。
 だが、もう誰も恐れない――イフリートは消させない!!

「レイナ! 行け、ここは俺たちがなんとかする。足の速い兵を連れて行くんだ。この先は細くなっている多くの兵は通れない」

 後方からラバルナ隊も到着し、砦の前は大混雑してしまう。
 一騎当千の魔人たちが武器を構えて突撃してくる。
 盾を構えたファルス隊がそれを受け止めて、戦闘が開始された。

「わかった! それじゃあ誰かついてきくれるかしら?」

 私の呼びかけに応えた人を率いていく、血路は全員が開いてくれる。
 
「扉は自らの力で開くもの、閉ざされた門は壊せないなんて誰が決めた?」

 ラバルナがサーベルを構えて突撃を命じる。
 一斉に動き出した兵たちが魔人たちを追い詰めていく。

「レイナ隊、動くわよ。これから建物の中に入る。気を付けて」

 ファルス隊が前で奮戦し、ついに門の目の前に到着する。
 
「こじ開けろ! そして進めぇぇ!!」

 ドンッドンッ。
 バゴンッ!!

 軽く、安っぽいつくりの門は簡単に開かれ、中には教王国兵の亡骸が床を埋め尽くしていた。
 酷い……だけど、このままではこれ以上の悲劇が世界を襲ってしまう。
 
「レイナ隊行くわよ!!」

 奥から数体の魔人が出てくるが、ファルスさんが横を通っていく。

「この老兵、レイナ様の刃となりますぞ!」
 
 石斧をひらりとかわし、左腕を斬りつけた。
 叫喚が聞こえ、それに続くようにファルス隊が魔人と対峙した。

「ファルスさんありがとう!」

 目で合図を送ってくる彼らに対し、私たちは一気に奥へと進んでいく。
 次第に血の匂いが遠のいていき、カビと埃に混ざる魔人独特の香りが強くなっていった。

「気を付けましょう」

 十人ほどで建物の中を進んでいく、正直いうと天井はかなり低く敵は身動きがかなり取りづらいだろう。
 所々、ぶつかって破損した家具や装飾を目印に進んでいくと、目的地に自然と辿り着いてしまう。

「止まって!!」

 通路の先から風が通り始める。
 それは冷たく、かなり湿り気をおびていた。

(近い?) 
 
 剣を構えて静かに進んでいくと、奥に洞窟の入り口が見える。
 中に入ると、苔が生えた階段が下へと続いていた。

「気を引き締めて行くわよ。大丈夫、あとからラバルナたちも駆け付けてくれるから」

 私たちは生唾を飲み込んで洞窟へと足を踏み入れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

異世界、肺だけ生活

魔万寿
ファンタジー
ある夏の日、 手術で摘出された肺だけが異世界転生!? 見えない。 話せない。 動けない。 何も出来ない。 そんな肺と、 生まれたての女神が繰り広げる異世界生活は チュートリアルから!? チュートリアルを過去最短記録でクリアし、 本番環境でも最短で魔王に挑むことに…… パズルのように切り離された大地に、 それぞれ魔王が降臨していることを知る。 本番環境から数々の出会いを経て、 現実世界の俺とも協力し、 女の子も、異世界も救うことができるのか…… 第1ピース目で肺は夢を叶えられるのか…… 現実世界では植物人間の女の子…… 時と血の呪縛に苦しむ女の子…… 家族が魔王に操られている女の子…… あなたの肺なら誰を助けますか……

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
ファンタジー
「アリーゼ=ホーリーロック。お前をカトリーナ教会の聖女の任務から破門にする。話しは以上だ。荷物をまとめてここから立ち去れこの「異端の魔女」が!」 カトリーナ教会の聖女として在籍していたアリーゼは聖女の証である「聖痕」と言う身体のどこかに刻まれている痣がなくなり、聖魔法が使えなくなってしまう。 それを同じカトリーナ教会の聖女マルセナにオイゲン大司教に密告されることで、「異端の魔女」扱いを受け教会から破門にされてしまった。そう聖魔法が使えない聖女など「いらん」と。 でもアリーゼはめげなかった。逆にそんな小さな教会の聖女ではなく、逆に世界を旅して世界の聖女になればいいのだと。そして自分を追い出したこと後悔させてやる。聖魔法?そんなの知らないのです!と。 そんなアリーゼは誰よりも「本」で培った知識が豊富だった。自分の意識の中に「世界書庫」と呼ばれる今まで読んだ本の内容を記憶する能力があり、その知識を生かし、時には人類の叡知と呼ばれる崇高な知識、熟練冒険者のようなサバイバル知識、子供が知っているような知識、そして間違った知識など……旅先の人々を助けながら冒険をしていく。そうこれは世界中の人々を助ける存在の『聖女』になるための物語。 ※追放物なので多少『ざまぁ』要素はありますが、W主人公なのでタグはありません。 ※基本はアリーゼ様のほのぼの旅がメインです。 ※追放側のマルセナsideもよろしくです。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...