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転生したけれど……
夢絵空事
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外側から変える? 自国を憂いて変えていこうとするも、邪魔が多いので外に出て仲間を集っているということなのだろうか?
だとすると、彼も私たちと同じ志を持っている可能性が高い、若干の違いはあるだろうが概ね向いている方角は一緒のはずだろう。
「そうなの、それで? 私を助けてどうするつもりだったの?」
「簡単な話、俺たちは以前からレイナに目をつけていた。本来なら式典を狙って救い出す手筈だったのがな、でも想像以上に腕がたつとみる」
私を狙っていた? どういうつもりなのだろうか、正直圧倒的な戦力増強になるような人ではないし、ソマリがいたからある程度は闘えるが以前は本当に何もできなと言っても過言でない。
「俺たちには象徴たる人物が必要だった。それは俺ではダメだ、この国を貪ってきた血筋ではなく神や民に愛され人々の心の拠り所になり得る人物が……」
「それが私ということなの?」
こくりと頷く、でも疑問が残る。
聖女を象徴にしたてたい気持ちは理解できるが、なぜ【私】でなければいけないのだろう? 率直な疑問を彼に訊いてみた。
「ん? あぁ、一応聖女の人柄は調べさせてもらっていた。悪く思わないでくれ、それでレイナは歴代の聖女たちとは違い、利権に欲がなく勤勉でどことなく雰囲気も違ったらしい。だから、俺たちは決めていたんだレイナをって」
利権云々に関して言えば、ずっと小さいころから聖女のあり方について学んできたので、殆ど傀儡化しているなんて思いもしなかった。
本来は幼い頃より聞かされ、お城にも出入りし皆がその甘い蜜の虜になっているそうなのだが、私だけは違ったようで家の外にも出してもらえない。
もしかすると、私を守っていた? 誰が? なんのために? 次々に疑問が浮かんでくるが、今は話を進めなければならい。
「つまり、私を反政府軍の形だけの象徴に使いたいということなのかしら?」
「おいおい、それは随分な言い方だな、まぁ大筋は逸れていない。だが、俺たちが望むのは更に先だ」
更に先――それを言ったラバルナは外を見て月の光に顔を照らしていく。
淡く、神秘的な光が窓から入ってくると火の灯りと混ざり合い彼の瞳を彩り、その揺れる真珠のような輝きの奥には何を描いているのだろうか?
「誰もが聖女を知っており、聖女を嫌っている。だが、ここに本来の役目を担った存在が現れるとする。それは救いであり希望でもある。だから俺たちは立ち上がる。これを待っていたんだ……この砂漠を照らす存在が現れるのをそれがレイナ――キミだ」
グッと立ち上がると私に近寄ってくる。
私も立ち上がろうとすると、ぐらっと倒れそうになってしまった。
「おっと、大丈夫か?」
がつっと抱きかかえられる形で彼に受け止められてしまう。
武骨な感じの鍛えらられた身体に、少し汗の匂いと砂の香りが混ざっており、なんとも不思議な感じのする香りだった。
「ご、ごめんなさい」
「いいんだ、疲れただろう? 少し休め、すまない呼び止めてしまって」
自力で歩けることを告げると、私を部屋へと案内してくれる女性を呼んでその場を離れる。
少し粗末だが、ベッドと布団はあるようで私はそこに倒れるように横になった。
正直言うと、立っているのも辛いほど疲弊してきっており、今にも目が閉じてしまいそうだった。
「象徴ね……」
結局、私という存在を利用したいだけなのかもしれない。
だけど、今はそれで良いんだ……だって、この世界を救えるのなら多少腑に落ちないことでもやれるきがする。
それに、私一人ではどのみち無理だったろう、一気に大勢の仲間ができたことで希望が見えてきた。
「見ていないさいよ」
あのいけ好かない元婚約者の顔面に拳をお見舞いすることを考えると、体に力がこもる。
私は起き上がることもできずに、そのまま一気に眠りの世界へと向かっていく。
『レイナ、おやすみなさい』
「ソマリ……う、ん……お、やす、み……」
***
その頃、イスファ聖教国のお城では今まで無いほど慌ただしい状況になっていた。
「クソッ! あの女生かしちゃおかねぇ! ムカつくムカつく」
イライラと周りの人に当たり散らしている男性の前には、白髪でありながら威厳を兼ね備えた人物が座っている。
「うろたえるな息子よ、民には式典は中止し代わりの聖女を今探させている。もう少し待て」
「代わりなんざ欲しくねぇよ! 俺はあの女と兄貴の首が欲しい! オヤジも今まで見過ごしきたが、今回ばかりは許さねぇぞ」
「ふむ、確かに今まで息子だからと言って、多少のことは目を瞑ってきたが我が国を追放になった聖女を助け、国家の転覆を企てているというなら話は別だ。ラバルナよ……今をもって息子の縁を切る! 彼の物は国家反逆者として手配せよ‼ よいか、このイスファ聖教国を何としてでも存続させるのだ、飾りだけの聖女と世の中を知らぬアホどもを殺せ、良いか殺すのだぁ!」
多くの兵たちが準備を始める。
王を中心にどす黒い渦が広がりだしていく、それは遠く離れた砂漠を飲み込む勢いで月の光も通さぬほど深い闇であった。
だとすると、彼も私たちと同じ志を持っている可能性が高い、若干の違いはあるだろうが概ね向いている方角は一緒のはずだろう。
「そうなの、それで? 私を助けてどうするつもりだったの?」
「簡単な話、俺たちは以前からレイナに目をつけていた。本来なら式典を狙って救い出す手筈だったのがな、でも想像以上に腕がたつとみる」
私を狙っていた? どういうつもりなのだろうか、正直圧倒的な戦力増強になるような人ではないし、ソマリがいたからある程度は闘えるが以前は本当に何もできなと言っても過言でない。
「俺たちには象徴たる人物が必要だった。それは俺ではダメだ、この国を貪ってきた血筋ではなく神や民に愛され人々の心の拠り所になり得る人物が……」
「それが私ということなの?」
こくりと頷く、でも疑問が残る。
聖女を象徴にしたてたい気持ちは理解できるが、なぜ【私】でなければいけないのだろう? 率直な疑問を彼に訊いてみた。
「ん? あぁ、一応聖女の人柄は調べさせてもらっていた。悪く思わないでくれ、それでレイナは歴代の聖女たちとは違い、利権に欲がなく勤勉でどことなく雰囲気も違ったらしい。だから、俺たちは決めていたんだレイナをって」
利権云々に関して言えば、ずっと小さいころから聖女のあり方について学んできたので、殆ど傀儡化しているなんて思いもしなかった。
本来は幼い頃より聞かされ、お城にも出入りし皆がその甘い蜜の虜になっているそうなのだが、私だけは違ったようで家の外にも出してもらえない。
もしかすると、私を守っていた? 誰が? なんのために? 次々に疑問が浮かんでくるが、今は話を進めなければならい。
「つまり、私を反政府軍の形だけの象徴に使いたいということなのかしら?」
「おいおい、それは随分な言い方だな、まぁ大筋は逸れていない。だが、俺たちが望むのは更に先だ」
更に先――それを言ったラバルナは外を見て月の光に顔を照らしていく。
淡く、神秘的な光が窓から入ってくると火の灯りと混ざり合い彼の瞳を彩り、その揺れる真珠のような輝きの奥には何を描いているのだろうか?
「誰もが聖女を知っており、聖女を嫌っている。だが、ここに本来の役目を担った存在が現れるとする。それは救いであり希望でもある。だから俺たちは立ち上がる。これを待っていたんだ……この砂漠を照らす存在が現れるのをそれがレイナ――キミだ」
グッと立ち上がると私に近寄ってくる。
私も立ち上がろうとすると、ぐらっと倒れそうになってしまった。
「おっと、大丈夫か?」
がつっと抱きかかえられる形で彼に受け止められてしまう。
武骨な感じの鍛えらられた身体に、少し汗の匂いと砂の香りが混ざっており、なんとも不思議な感じのする香りだった。
「ご、ごめんなさい」
「いいんだ、疲れただろう? 少し休め、すまない呼び止めてしまって」
自力で歩けることを告げると、私を部屋へと案内してくれる女性を呼んでその場を離れる。
少し粗末だが、ベッドと布団はあるようで私はそこに倒れるように横になった。
正直言うと、立っているのも辛いほど疲弊してきっており、今にも目が閉じてしまいそうだった。
「象徴ね……」
結局、私という存在を利用したいだけなのかもしれない。
だけど、今はそれで良いんだ……だって、この世界を救えるのなら多少腑に落ちないことでもやれるきがする。
それに、私一人ではどのみち無理だったろう、一気に大勢の仲間ができたことで希望が見えてきた。
「見ていないさいよ」
あのいけ好かない元婚約者の顔面に拳をお見舞いすることを考えると、体に力がこもる。
私は起き上がることもできずに、そのまま一気に眠りの世界へと向かっていく。
『レイナ、おやすみなさい』
「ソマリ……う、ん……お、やす、み……」
***
その頃、イスファ聖教国のお城では今まで無いほど慌ただしい状況になっていた。
「クソッ! あの女生かしちゃおかねぇ! ムカつくムカつく」
イライラと周りの人に当たり散らしている男性の前には、白髪でありながら威厳を兼ね備えた人物が座っている。
「うろたえるな息子よ、民には式典は中止し代わりの聖女を今探させている。もう少し待て」
「代わりなんざ欲しくねぇよ! 俺はあの女と兄貴の首が欲しい! オヤジも今まで見過ごしきたが、今回ばかりは許さねぇぞ」
「ふむ、確かに今まで息子だからと言って、多少のことは目を瞑ってきたが我が国を追放になった聖女を助け、国家の転覆を企てているというなら話は別だ。ラバルナよ……今をもって息子の縁を切る! 彼の物は国家反逆者として手配せよ‼ よいか、このイスファ聖教国を何としてでも存続させるのだ、飾りだけの聖女と世の中を知らぬアホどもを殺せ、良いか殺すのだぁ!」
多くの兵たちが準備を始める。
王を中心にどす黒い渦が広がりだしていく、それは遠く離れた砂漠を飲み込む勢いで月の光も通さぬほど深い闇であった。
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