年下の男の子に懐かれているうえに、なぜか同棲することになったのですが……

安東門々

文字の大きさ
上 下
38 / 46
そしてこれから……

隠し事?

しおりを挟む
 冬が来た。 
 人は四季を楽しむ、もちろん私も楽しんでいたが今年は特別な予感がしてならない。
 それは、今台所でご機嫌で朝ご飯を作っている彼氏の存在が大きいが……。

「体が怠い」

 私が目覚めると同時に彼も起きて、抱きしめ合っていると唐突に私の体を愛し始めた年下の樹くん。
 そりゃ、男性は朝になると一部分が元気なのは私でも知っている知識だけど、起きぬけに抱かれる回数も増えていた。
 彼なりに考えているようで、今日のような祝日などは特に多い気がする。

「求められるのは嬉しいし、気持ちもよいんだけど」

 問題があるとするなら、その日の始まりで既に体が怠くなってしまう。
 朝の薄暗い部屋で混じり合うのは別の意味でも気持ちが良い。
 ついつい、抱かれてしまうが起きるのが億劫だった。

「うぅ、起きたくない」

 それでも、少し開いたドアの隙間から美味しそうな香りが漂ってくると、頑張って起きて部屋をでた。
 
「ちょうど完成しましたよ」

 スッキリ、爽やかな笑顔でお皿をテーブルに並べてくれている。
 ラフな格好でゆったりと座ると、出来立ての朝食が並ぶ。 お互いの好みは把握しており、目玉焼きに塩派な私の目の前には既に瓶が用意されている。

 すっかり寒くなった外、元々出たがらない私たちは寒さも味方し一日中部屋の中で過ごすことも多くなった。
 ただ、この寒さに感謝したい場面もある。 それは……。

「よっしょ」

 ぽすんっと床で本を読んでいる彼の隣に腕と腕が振れる距離で座ると、お互いの体重を預け合っていく。
 密着する回数が断然多い、夏は汗や匂いを気にしていたが、それが今はないのでスキをみてはこうして甘えてしまう。
 適当にスマートフォンを弄り、隣からは本をめくる音だけが聞こえてくる。

「紗香さん」

「ん? なに?」

「ソファー使わないんですか?」

「樹くんが座ったら使うかも」

 付き合った当初は甘え方というのが遠い過去すぎて、思い出せなく大胆になれなかった。 
 でも、しだいに自然体で彼に甘えることができている。

「そうですか、それじゃっ」

 スッと立つと急に寒くなってしまう。
 樹くんがソファーに座ると膝の上をポンポンと叩いて合図を送ってくれた。
 私はそれに誘われるまま恋人の膝の上に座る。

「重くない?」

「全然、むしろ軽いぐらいですよ」

 嘘でも嬉しい。
 でも、実際に重いって言われたらショックなのでこの質問は自分の体重が変化していない、または減っているときのみ使うことにしているのは、秘密だ。
 
 本をテーブルに置いて、私を見つめてきてくれる。
 私もスマートフォンを床に置いて見つめ返すと、額と額が当たるぐらいまで近づき相手の頬をムニムニとつまんでみた。

「悔しい、全然伸びない痩せすぎ」

ふぁやさかんさんやめふぇ紗香さんやめて

 くぅ、なんて整った顔なのだろうか。
 しかも脱ぐとほんのり筋肉もついているので、意外としっかりしている。
 この人を目の前にすると、ふと思う事があった。
 
 よく私のことを好きになってくれたと……自分に自信があるわけではないし、綺麗でも可愛くもない。
 でも、きっちりと【神薙 紗香】を好きでいてくれている。
 それだけで十分嬉しかった。

 時間を忘れて二人だけの空間を楽しむ、このトロトロとぬるやかな空気が私たちを見守ってくれている。
 
「ねぇ、クリスマスどうする?」

 カレンダーに目を向けると、クリスマスの日付を見つめる。
 
「あぁ、えっと……どうしましょうか?」

 どうしましょうかって、まぁ、私も具体的にって言われてもピンとこない。
 何もなく、いつものようにこの家で過ごしても別にこちらは問題なかった。

「何か予定あるの?」

「いや、特にないのですが……」

 歯切れの悪い返事に、なんだかモヤモヤする。

「なによ、煮え切らない返事ね」

「うんと、えっと……すみません」

 苦笑して逃げられてしまう。
 問い詰めても良いのだけど、なんだか詮索するのは気が引けた。
 珈琲淹れますねと、私をそっとよせて立ち会がるとキッチンへ行ってしまう。

「むむむ、何か怪しい」

 一瞬浮気? という考えが浮かんだけれども、そんな感じはしないのできっと別だろう。
 そんな感じがしないって、かなり曖昧な感覚だけど女性の勘ってかなり敏感なので私生活でちょっとでも違和感を見つけてしまう。
 でも、そういったことはないのでおそらく浮気ではないと思った。

「でも、何かを隠しているのは間違いないわね」

 かなり気になるけれども、本人が黙っているのでこちらから詮索するのは気が引けてしまう。
 ちょっと面倒な女性ヒトだって思われた嫌だし……せっかく幸せな日々を送れているのを自分から壊したいとは思わない。
 
「とりあえず、要観察かしら?」

 小声で自分に言い聞かせていると、ちょうど珈琲が運ばれてくる。
 良い香りに鼻がくすぐられてしまう。

「お待たせいたしました」

「美味しそう」

「どうぞ」

 笑顔で差し出される飲み物を受け取って口に含むと、ふわっと素敵な香りに満たされる。
 彼の隠し事がなにか気になるけれど、今はこの美味しい時間を味わうために会話に集中することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

処理中です...