年下の男の子に懐かれているうえに、なぜか同棲することになったのですが……

安東門々

文字の大きさ
上 下
36 / 46
志賀樹の正体

素直になろうよ!

しおりを挟む
「つ、疲れた……」

 家に帰ると彼の靴が無いことを確認してから言葉を発する。
 ふぅっと、一息つきながら靴を抜いて家に入ると鞄を玄関に置いたままソファーに座って休んでしまう。

「本当に勘弁してほしい」

 朝に変なテンションで囲まれてしまい、その日のリズムを崩してしまい結果としてその後は誰も聞いてこなかったけれども、妙に意識してしまい疲れてしまった。
 こんなことに慣れていないだけなのかもしれないが、本当にみんな好きね……。
 今日は少し遅くなるという連絡をもらっていたので、なにか簡単な料理を作ろうかと思ったけれど、体がダルくて動かない。
 
「何にしようかしら」

 確か冷凍庫にサーモンがあったから、ムニエルにしようかな? なんてことを考えていると、だんだんと瞼が重くなっていくのがわかる。
 ダメ、まだ月曜日なのにこの調子じゃ! 気合をいれて目を開けようとしても、体に力が入らない。
 ついには、甘い誘惑に負けてしまいゴロンと寝転がってしまう。

「ちょっとだけね」

 十分程度休むつもりで目を閉じる。
 しばらく感じたことのない疲労感に、体素直に眠っていく。

***

 なにか優しい感触が頬に伝わってくる。
 ぽうっと熱をもつ大きく細い手が私の髪を撫でてくれた。
 だけど、その愛しい気配が遠のく感じがして私は慌てて目を覚ますと目の前には誰もいなかった。

「ゆ、夢?」

 まだうまく思考できない脳で周囲の状況を確かめようとしたとき、背後から抱きしめられる。

「おはようございます紗香さん」
 
 聞きなれた私の恋人の声が首筋にかかると、安心感と心地よさに満たされていく。

「樹くん?」

「疲れているんですか? もう少し休んでてください」

「え?」

 私は部屋の時計を確認してみると、帰宅してから随分と眠っていたようだ。
 一気に目が覚めていく、まだ何も用意されていない食卓……急いで準備をしようと立ち上がろうとしたとき、抱きしめられている腕にグッと力が入り、私はそのまま座らされた。

「言ったじゃないですか、もう少し休んでてくださいって」

 耳に優しいキスをされる。
 それだけで、ゾクゾクと全身が軽く震えてしまう。
 そっと、彼が離れていってしまう、名残惜しさが増してしまいキッチンに向かおうとするのを引き留める感じで袖を掴んでしまった。

「?」

 不思議そうな顔で見つめられてしまう。
 ど、どうしよう……この後なんて言えばよいのかわからない。
 むしろ、私がこんな行動するなんて自分でも考えられなかった。
 
「あぁ、なるほど」

 納得したような顔になると、今度は正面から抱きしめてくれる。
 少し力強く、そして体重も先ほどよりあずけられていた。
 私はそれを受け止めるような感じで背もたれに埋まっていく。

「俺もずっとこうしていたいです」

「そ、そうね……こんなに心地よいなんて思わなかったな」

 軽く鼻で笑われてしまう、だけど本当のことなのだから仕方がない。
 結局その日は、買っておいた非常食用のレトルトカレーで済ませることになってしまったが、ギリギリまでお互いを確かめ合えていた。
 年上の女性に甘えられるのってどうなのだろうか? ちょっと『甘える』という行為がどうやったらよいのかわからない時もあったし、年齢のことを考えると、大胆になれなかった。
 だけど、段々と素直になっていく私がいて、それを受け止めてくれる存在もいる。

「威厳ってもうないか」

 歯磨きをしながらボソッと呟いてしまう。
 この部屋で同居を開始したときは、大人を演じることに一生懸命になっていたこともあったけれど、結局私もまだまだってことなのかもしれない。
 
「もうね、ここまで来たらあとは素直にならいとダメね」

 たぶん、今はこんなにも幸せでいられるけれど、確実に喧嘩をしたり苦しい場面も訪れるに決まっている。
 だけど、それらを乗り越えていくと更に二人の絆は深まっていくと思っていた。
 そのときに、素直になれないで耐えてばかりいると必ずどこかで破裂してしまう。

 だから、素直になろう……嫌なことも大好きなことも彼に伝えていくと決めた。

「紗香さんまだ寝ないんですか?」

 後ろから話しかけれられる。
 口をすすいで一緒に部屋に戻ると、いつものように抱き合って眠ろうとするが、帰ってくるなり眠ってしまって眠気がやってこなかった。
 
「ねぇ、明日って早い?」

「明日は、たしか講義が昼からなのでその前に一度会社に寄りたいと思っています」

「つまり、そんなに早くないってこと?」

 コクリと頷いてくれたので、私はゴソゴソと樹くんの下半身に手を伸ばすとちょっと硬くなったソレに触れた。

「ちょ、ちょっと紗香さん?」

「ん? だっていつもこうして寝ていると熱もってて辛そうだと思って」

 別にそんな雰囲気にならなくとも、勝手に反応してしまうらしく男性って不便ねと思わずにはいられない。
 さすがにまだ生理は終わっていないので、本番はできないけれど手や口を使ってスッキリはさせてあげられるかもしれなかった。

「い、イインデスカ?」

「なんでカタコトなのよ? でも、毎晩これだと大変でしょ?」

「そ、それは……紗香さんが一緒だからですよ。その香りとか鼻に入ってきたりすると、その……えぇっと……」

 なんだろう、タジタジする感じが可愛い。
 こ、これが年上の余裕というヤツなのか? なんか違う気もするけれど、いつも翻弄されているのでこんな時ぐらいはリードさせてほしかった。
 それに、私と一緒だからなんて嬉しいじゃない? お布団から出ると寒いので私は潜り込んでいって彼のズボンをおろすとむわっと熱が一気に解放されていく。

「さ、紗香さん……ッ!!」

 もう何度目になるか、すっかり弱いところを把握しているので大丈夫。
 先ほどもっと素直になろうって決めたけれど、行動も大胆になれた気がする。
 恋人の顔は見えないけれど、ビクビクと伝わってくる感覚を楽しみながら行為は続けていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...