29 / 46
志賀樹の正体
怒りからの⁉
しおりを挟む
無言で車は走っていく。
横顔をチラッと確認してみると、なんだか怒っているような気がしてならない。
「あ、あのどうしたのこの車?」
「……」
ブゥン――! 回転数があがり、スピードも増して高速道路へと入っていく。
しばらく一定のスピードで運転していると、彼が口を開いた。
「あの人は?」
「え? えっと、彼は漆田くんって言って、大学時代の知り合いよ」
嘘は言っていないけれど、なんだか不満そうな感じで聞いてくる。
「そうじゃなくて、恋人とか?」
私は少し迷って、素直に伝えることにした。
以前付き合っていたことや、今告白されたことなど、それを黙って彼は聞いてくれる。
ただ、私が断ったことを聞いたタイミングでアクセルを踏む力が弱まったのは感じ取れた。
「そっか、ならよかった……やっぱり紗香さんモテるから」
「いやいや、モテたことないわよ。彼以外恋人だっていたことなかったし……」
外を見ると、街の明かりが夜を彩っており、幻想的な世界を造っている。
志賀くんはそれ以降、また黙ってしまい、近くのインターチェンジで降りると海が見える丘の公園まで到着すると車を停めた。
「どうしたの?」
「降りてください」
またドアが上に開き、慣れない仕様に戸惑いつつ降りると、急に手をつながれる。
そして、そのまま公園の奥まで到着すると、志賀くんは私を向いてこう言ってきた。
「前、俺の気持ちを伝えましたけど、不満でした? そ、その他の男性と会うかもって思ったら居ても立っても居られなくなって会社からそのまま車で帰っていたら、二人を見かけて」
「え? ちょっと待って、何を言っているの?」
彼の言葉全てが理解できない、前に気持ちを伝えた? 会社からそのまま? いったい彼は何を言いたいのか全然理解できないでいる。
「何って、もう一度言いますか? 俺は……」
一瞬空気を飲み込み、まっすぐに私を見つめてくる。
この薄暗い常夜灯の灯りだけの世界でもはっきりと彼の頬が赤みを増しているのはわかった。
「紗香さんのことが好きです」
ドクンッ。 心臓が急激に動き出した。
きょろきょろと視界が揺らぎ、彼の顔をまともに見られない。
「そ、それってライクの意味で?」
何を私は言っているのか、この状況とタイミングでそんな意味であることはないってわかりきっているのに、馬鹿なの⁉
一日で二人の男性に告白なんて、誰もが経験するわけでもなく、むしろ滅多にないのでは? そんな余計なことばかりが頭の中をめぐっていく。
「ッ! そ、そんな訳ないじゃないですか!」
ガバっと抱きしめられ、優しい声が耳元で囁かれる。
「す、好きです。本当です。ずっと前から」
ずっと前から……? 疑問は残るけれど、彼から本音を聞けたのは素直に嬉しい。
徐々に私の気持ちが溢れていくのがわかる。 どうしよう、抑えられないかもしれない。
「ど、どうしたんですか?」
ホロホロと大人げなく涙を流してしまう。
だって、私だけだと思っていたのに、都合の良い抱けるだけの女性だって思われていたらそれでも我慢できるかもって考えていた時もあったけれど、やっぱり違う。
「わたし、キミより年上だよ?」
「だからなんですか? 紗香さんの魅力は年齢なんて関係ないと思いますけど」
抱きしめる腕に力がこもる。
私は顔を上げると、優しい顔がそこにはあった。
「本当に本当?」
その返事の代わりにキスをしてくれる。
今まで一番優しくてゆっくりとしたキスで、なんだろう心も満たされるような感覚になる。
「これでも信じてくれませんか?」
フルフルと首を横に振ると、今度は私から彼にキスをした。
先ほどとは違い、勢いも激しさも増して、それを受け入れてくれる。
長い口付けが終わると、お互いの額をくっつけながら会話をしていく、少し寒くなってきたが温かさばかりが私たちを包み込んでいた。
「えっと、こんな私だけど、よ、よろしくお願いいたします」
「紗香さんだったら、俺は全部OKですよ。安心してください」
いつの間にか当たり前になった志賀くんの香りが、鼻を刺激する。
ちょっとのことでも、こんなにもドキドキしてしまうなんて……。
私たちは名残惜しそうに離れると、また車へと戻っていく。
鍵が開けられ、乗り込むとエンジンが始動する。
「こ、これって志賀くんの?」
「ん? あぁ、そうですね。自分のです。ちょっと頑張ったご褒美にって思って購入しました」
頑張ったご褒美⁉ アルバイトで買えるような金額でないのは、私だって理解していた。
詳しく聞こうとすると、彼はただニコニコとするばかりで何も答えてくれない。
ただ「帰りますか」と言って、私たちの家を目指して走り出していった。
***
これから、延々とイチャイチャタイムです。
よろしくお願いいたします。
横顔をチラッと確認してみると、なんだか怒っているような気がしてならない。
「あ、あのどうしたのこの車?」
「……」
ブゥン――! 回転数があがり、スピードも増して高速道路へと入っていく。
しばらく一定のスピードで運転していると、彼が口を開いた。
「あの人は?」
「え? えっと、彼は漆田くんって言って、大学時代の知り合いよ」
嘘は言っていないけれど、なんだか不満そうな感じで聞いてくる。
「そうじゃなくて、恋人とか?」
私は少し迷って、素直に伝えることにした。
以前付き合っていたことや、今告白されたことなど、それを黙って彼は聞いてくれる。
ただ、私が断ったことを聞いたタイミングでアクセルを踏む力が弱まったのは感じ取れた。
「そっか、ならよかった……やっぱり紗香さんモテるから」
「いやいや、モテたことないわよ。彼以外恋人だっていたことなかったし……」
外を見ると、街の明かりが夜を彩っており、幻想的な世界を造っている。
志賀くんはそれ以降、また黙ってしまい、近くのインターチェンジで降りると海が見える丘の公園まで到着すると車を停めた。
「どうしたの?」
「降りてください」
またドアが上に開き、慣れない仕様に戸惑いつつ降りると、急に手をつながれる。
そして、そのまま公園の奥まで到着すると、志賀くんは私を向いてこう言ってきた。
「前、俺の気持ちを伝えましたけど、不満でした? そ、その他の男性と会うかもって思ったら居ても立っても居られなくなって会社からそのまま車で帰っていたら、二人を見かけて」
「え? ちょっと待って、何を言っているの?」
彼の言葉全てが理解できない、前に気持ちを伝えた? 会社からそのまま? いったい彼は何を言いたいのか全然理解できないでいる。
「何って、もう一度言いますか? 俺は……」
一瞬空気を飲み込み、まっすぐに私を見つめてくる。
この薄暗い常夜灯の灯りだけの世界でもはっきりと彼の頬が赤みを増しているのはわかった。
「紗香さんのことが好きです」
ドクンッ。 心臓が急激に動き出した。
きょろきょろと視界が揺らぎ、彼の顔をまともに見られない。
「そ、それってライクの意味で?」
何を私は言っているのか、この状況とタイミングでそんな意味であることはないってわかりきっているのに、馬鹿なの⁉
一日で二人の男性に告白なんて、誰もが経験するわけでもなく、むしろ滅多にないのでは? そんな余計なことばかりが頭の中をめぐっていく。
「ッ! そ、そんな訳ないじゃないですか!」
ガバっと抱きしめられ、優しい声が耳元で囁かれる。
「す、好きです。本当です。ずっと前から」
ずっと前から……? 疑問は残るけれど、彼から本音を聞けたのは素直に嬉しい。
徐々に私の気持ちが溢れていくのがわかる。 どうしよう、抑えられないかもしれない。
「ど、どうしたんですか?」
ホロホロと大人げなく涙を流してしまう。
だって、私だけだと思っていたのに、都合の良い抱けるだけの女性だって思われていたらそれでも我慢できるかもって考えていた時もあったけれど、やっぱり違う。
「わたし、キミより年上だよ?」
「だからなんですか? 紗香さんの魅力は年齢なんて関係ないと思いますけど」
抱きしめる腕に力がこもる。
私は顔を上げると、優しい顔がそこにはあった。
「本当に本当?」
その返事の代わりにキスをしてくれる。
今まで一番優しくてゆっくりとしたキスで、なんだろう心も満たされるような感覚になる。
「これでも信じてくれませんか?」
フルフルと首を横に振ると、今度は私から彼にキスをした。
先ほどとは違い、勢いも激しさも増して、それを受け入れてくれる。
長い口付けが終わると、お互いの額をくっつけながら会話をしていく、少し寒くなってきたが温かさばかりが私たちを包み込んでいた。
「えっと、こんな私だけど、よ、よろしくお願いいたします」
「紗香さんだったら、俺は全部OKですよ。安心してください」
いつの間にか当たり前になった志賀くんの香りが、鼻を刺激する。
ちょっとのことでも、こんなにもドキドキしてしまうなんて……。
私たちは名残惜しそうに離れると、また車へと戻っていく。
鍵が開けられ、乗り込むとエンジンが始動する。
「こ、これって志賀くんの?」
「ん? あぁ、そうですね。自分のです。ちょっと頑張ったご褒美にって思って購入しました」
頑張ったご褒美⁉ アルバイトで買えるような金額でないのは、私だって理解していた。
詳しく聞こうとすると、彼はただニコニコとするばかりで何も答えてくれない。
ただ「帰りますか」と言って、私たちの家を目指して走り出していった。
***
これから、延々とイチャイチャタイムです。
よろしくお願いいたします。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる