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元カレ
協力的
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それから、案の定微妙な反応を貰った朝礼の後は正直言うと仕事がまるで進まない。
原因はハッキリしている。 元カレが朝から変なことを言ってこなければ大丈夫だったのに、本当に困る。
タンタンタンと、キーボードをタップする音にリズム感が無く、何度もバックスペースキーを押してしまう。
「もう、本当に集中!」
自らに気合を入れ、デスクの引き出しに入れておいたお気に入りのクッキーを取り出して食べ始める。
あまり甘くなく、噛み応えがある感じが好きでしっとりとしたクッキーより断然すきだった。
渇いた口にジャスミン茶を流し込んで気持ちを整えていく、ちらっと時計を確認すると、既に十時を過ぎておりこんままだと残業確定の速度だった。
(このまま残業しちゃおうかしら……)
なんだか、一気にやる気が失せていく。くるくるとスクロールボタンを操作していると、後ろから声がかけられる。
「あれ、神薙さん珍しくやる気ない系ですか?」
「ん? あぁ、沖田くんおはよう。ちょっとね」
「こりゃ、夜には嵐かもしれませんね」
ぐびびびっと、微糖の缶コーヒーを飲んでいた。
さすがにブラックはあきらめたのか、いや、そもそもブラックがカッコいいという幻想はどこからきているのか不思議でならない。
「失礼ね、私だって、たまにはやる気の一つや二つ無くなったりするわよ」
「えぇ⁉ 係長やる気ないんですか?」
ガバっと沖田くんの肩に手毬さんがのっかかってきた。
ブファっと缶コーヒーを吹き出しそうになる沖田くん、あ、この構図面白いかも……他の人の色恋沙汰ってなぜか楽しく見えてしまうのは、なぜだろうか?
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、ちょっとねそんな日もあるってことよ」
彼女は何か考える素振りをすると、ポンと納得したような顔になりこっそり耳打ちしてくる。
「任せてください」
「??」
固まったままの沖田くんをよそに、デスクへと戻っていく。
すると、数分後になぜか企画部全員から部内メールが届き開いて確認してみると、こう書かれていた。
『係長! お仕事、少しこちらにまわしてください』
『自分、余裕あります少しなら問題ないので、辛いときは頼ってください』
『神薙さん、実はですね筋肉について最近悟りを開いたんですが……』
約一名意味不明な文面がいるが、いや、このタイミングでなぜこうも全員協力的なのだ⁉
私はちょろっと残業して、今晩の約束を断ろるための口実が欲しいだけなのに、みんなの顔を見るとにっこりと笑ってくれる。
うぅ、私は幸せ者だけど、だけど!! 今日でなくても良いじゃない。
全員の好意が悲しいなんて、罰が当たってしまうかもしれない。
ここは素直に頼ることにしよう、そして同時に私の残業は無事になくなったことを意味している。
「いつも、これぐらいやる気があると助かるんだけど……」
つい本音が漏れてしまう、一応HPでお店の情報を軽く集めてみると高評価が多くその点だけは楽しみだった。
自分があのとき断っておけば、なんて思ったけれど、こう相手に言われると断れない性格は損だってわかっているけれど、どうしても変わらない部分でもあった。
「そうだ、忘れないうちに」
カバンからスマートフォンを取り出して、志賀くんへメッセージを送っておく。
なんだかちょっと嫌な気持ちが残ってしまうが、今日限りだと思って送信ボタンを押した。
せっかく皆が協力してくれるなら、きっちりと仕事を終わらせておくべきだ。
私は意識を切り替えて、パソコンに向かって集中していく。
「あ、そういえば、一応買っておくかな」
もう少しで、例の日が近づいてきているので、お昼にでもコンビニに行く必要がある。
私は別に辛いほうではないけれど、大変なことには変わりない。
ついでに、数店の化粧品も買おうかと思ったけれど、今晩のことを考えると荷物は少ないほうが良いので、今度の休日に買い出しに行こう。
「そういえば、あんまり家から出ないかもしれないわね」
数回外でご飯なんかは食べたが、基本的に休日はお互い外に出ないのであまり想い出がなかった。
今度から少し外に出る回数を増やせないかな? なんて、考えてしまう。 車の免許もあるみたいだし、二人で遠出なんかも……ハッ⁉
自分が無意識に県外の温泉地を検索しており、慌てて窓を閉じて仕事に戻る。
「もう、自分が信じられない」
どんどん知らないうちに惹かれており、自覚してからはその気持ちはさらに膨らんでいく一方で、どうにかして彼の気持ちを知りたいと思ってしまう。
もし、仮にダメならちょっと立ち直れないかもしれないけれど、このまま曖昧な関係でいるのは無理かもしれない。
「よっし、一つ完成っと」
エンターキーを押して、課長へメール送信すると次に企画の予算に目を通していく。
削るところ、増やすところなど様々やることはあった。
週間報告書に目を通し、修正点や改善点を部下に送ったりと、どんどんと仕事をこなしていく。
一度集中してしまえば、あっという間にお昼が待っていた。
原因はハッキリしている。 元カレが朝から変なことを言ってこなければ大丈夫だったのに、本当に困る。
タンタンタンと、キーボードをタップする音にリズム感が無く、何度もバックスペースキーを押してしまう。
「もう、本当に集中!」
自らに気合を入れ、デスクの引き出しに入れておいたお気に入りのクッキーを取り出して食べ始める。
あまり甘くなく、噛み応えがある感じが好きでしっとりとしたクッキーより断然すきだった。
渇いた口にジャスミン茶を流し込んで気持ちを整えていく、ちらっと時計を確認すると、既に十時を過ぎておりこんままだと残業確定の速度だった。
(このまま残業しちゃおうかしら……)
なんだか、一気にやる気が失せていく。くるくるとスクロールボタンを操作していると、後ろから声がかけられる。
「あれ、神薙さん珍しくやる気ない系ですか?」
「ん? あぁ、沖田くんおはよう。ちょっとね」
「こりゃ、夜には嵐かもしれませんね」
ぐびびびっと、微糖の缶コーヒーを飲んでいた。
さすがにブラックはあきらめたのか、いや、そもそもブラックがカッコいいという幻想はどこからきているのか不思議でならない。
「失礼ね、私だって、たまにはやる気の一つや二つ無くなったりするわよ」
「えぇ⁉ 係長やる気ないんですか?」
ガバっと沖田くんの肩に手毬さんがのっかかってきた。
ブファっと缶コーヒーを吹き出しそうになる沖田くん、あ、この構図面白いかも……他の人の色恋沙汰ってなぜか楽しく見えてしまうのは、なぜだろうか?
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、ちょっとねそんな日もあるってことよ」
彼女は何か考える素振りをすると、ポンと納得したような顔になりこっそり耳打ちしてくる。
「任せてください」
「??」
固まったままの沖田くんをよそに、デスクへと戻っていく。
すると、数分後になぜか企画部全員から部内メールが届き開いて確認してみると、こう書かれていた。
『係長! お仕事、少しこちらにまわしてください』
『自分、余裕あります少しなら問題ないので、辛いときは頼ってください』
『神薙さん、実はですね筋肉について最近悟りを開いたんですが……』
約一名意味不明な文面がいるが、いや、このタイミングでなぜこうも全員協力的なのだ⁉
私はちょろっと残業して、今晩の約束を断ろるための口実が欲しいだけなのに、みんなの顔を見るとにっこりと笑ってくれる。
うぅ、私は幸せ者だけど、だけど!! 今日でなくても良いじゃない。
全員の好意が悲しいなんて、罰が当たってしまうかもしれない。
ここは素直に頼ることにしよう、そして同時に私の残業は無事になくなったことを意味している。
「いつも、これぐらいやる気があると助かるんだけど……」
つい本音が漏れてしまう、一応HPでお店の情報を軽く集めてみると高評価が多くその点だけは楽しみだった。
自分があのとき断っておけば、なんて思ったけれど、こう相手に言われると断れない性格は損だってわかっているけれど、どうしても変わらない部分でもあった。
「そうだ、忘れないうちに」
カバンからスマートフォンを取り出して、志賀くんへメッセージを送っておく。
なんだかちょっと嫌な気持ちが残ってしまうが、今日限りだと思って送信ボタンを押した。
せっかく皆が協力してくれるなら、きっちりと仕事を終わらせておくべきだ。
私は意識を切り替えて、パソコンに向かって集中していく。
「あ、そういえば、一応買っておくかな」
もう少しで、例の日が近づいてきているので、お昼にでもコンビニに行く必要がある。
私は別に辛いほうではないけれど、大変なことには変わりない。
ついでに、数店の化粧品も買おうかと思ったけれど、今晩のことを考えると荷物は少ないほうが良いので、今度の休日に買い出しに行こう。
「そういえば、あんまり家から出ないかもしれないわね」
数回外でご飯なんかは食べたが、基本的に休日はお互い外に出ないのであまり想い出がなかった。
今度から少し外に出る回数を増やせないかな? なんて、考えてしまう。 車の免許もあるみたいだし、二人で遠出なんかも……ハッ⁉
自分が無意識に県外の温泉地を検索しており、慌てて窓を閉じて仕事に戻る。
「もう、自分が信じられない」
どんどん知らないうちに惹かれており、自覚してからはその気持ちはさらに膨らんでいく一方で、どうにかして彼の気持ちを知りたいと思ってしまう。
もし、仮にダメならちょっと立ち直れないかもしれないけれど、このまま曖昧な関係でいるのは無理かもしれない。
「よっし、一つ完成っと」
エンターキーを押して、課長へメール送信すると次に企画の予算に目を通していく。
削るところ、増やすところなど様々やることはあった。
週間報告書に目を通し、修正点や改善点を部下に送ったりと、どんどんと仕事をこなしていく。
一度集中してしまえば、あっという間にお昼が待っていた。
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