20 / 46
元カレ
突然の再会
しおりを挟む
あの飲み会以降、いたって平和な日々を過ごしており、心配していた手毬さんに関しては仕事に行くと志賀くんのことはあまり覚えていなかったようだ。
「確かに誰か居たような気がしますが、まっちょじゃなかったですよね?」
彼女の男性を覚える基準があまりにも疑問視されるため、とりあえずもう放っておくことしする。
墓穴は掘らないようにしなければならない、それでも私と彼の関係性は少しは変わった感じがした。
そんな頻繁にとは言わないけれど、体を重ねることもあり家の雰囲気も今までよりも柔らかい感じがしてきている。
最初は早く部屋が空かないかと思っていたが、慣れてしまえば全然大丈夫だったし……そ、それに好きな人と同じ空間に居るのは悪くない。
「でも、本当にいいのかしら?」
告白なんて甘ったるいことは言わないまでも、やはりお互いの気持ちは確かめ合いたいと思うのはダメだろうか?
だが、思っていても行動に移せないでいるのは私の年齢もそうだが、今の関係性が一気に壊れてしまいそうで怖かった。
そんなことを考えていると、次第に季節は移り替わっていき寒さが増してきたように思える。
仕事に行く用の靴を秋ようにコッソリ変えると私は家を出た。
「行ってらっしゃい」
「うん、樹くんも今日はテストなんでしょ? 頑張って」
いつからか、志賀くんと呼ぶとムッとされることが多くなり、今ではお互い下の名前で呼び合っている。
私としては、ベッドの時に下の名前で呼ばれていたのはちょっと特別な気がして、なんとなく良いなぁって思っていたが、変だろうか?
彼は今働いている会社にアルバイトから正社員としての雇用が決まっていたので、就職活動は滞りなく終わり残すは卒業だけという状況であった。
「さて、頑張らなくちゃ」
私も自分に気合を入れて出社する。
今日は新規のお客様から直接連絡を受けて私が行く日でもあった。
「もう! 何やっているのよ」
営業の肥田さんが、数日前に私に頭を下げてきた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
病院のベッドで平謝り状態の肥田さん、ベテランの営業さんで成績も悪くない彼がまさかぎっくり腰で動けなくなり、この案件をこちらに頼めないかとお願いされてしまう。
もちろん、他の営業さんにまわせないのかと聞いても、急すぎて予定が合わずに無理と断られてしまったようだ。
だからって、なんで私なのよ⁉ 今は、営業の仕事はあまりせず企画部の仕事を頑張っていたが、半分以上営業部のままである。
「はぁ、わかった。肥田さんの頼みなら……でも、もし失敗しても恨まないでね」
「恨むなんて、それに僕より神薙さんが行ったほうが契約率高いから、むしろ安心しているほどだよ」
「ダメよ、そんな他力本願じゃぁ」
「いやいや、本音だよだから早く営業部に戻っ……」
「だから無理よそれは」
私は彼から資料を受け取ると、お見舞いの品を置いて部屋から出て行く。
嬉しそうにフニフニとしたお腹の上に食べ物を置いて食べ始める姿を見ていると、肥田さんのお願いは断りにくくなってしまう魔法があった。
「ほんと、あの人だけのスキルよね」
階段を降りていき、外にでると蒸し暑さの奥にスッと冷たい風を感じた。
もう少しで秋かと思うと、どうにかこの暑い夏を乗り切れそうで安心する。
それから、今日まで私は準備を整えて連絡を受けた会社に向かっている。
「ここね」
そこまで大きな会社ではないけれど、少数精鋭を売りとしており資本金以上にしっかりとした体制を築いていた。
本業はベトナムやタイなどへ車関係の輸出がメインだけど、今は手広く様々な商材扱うようになっているようで、会社のホームページには求人情報も掲載されていた。
「よし、行くか」
腕時計で時刻を確認し、一階の受付に挨拶すると奥に通されて待っている間にプレゼンの準備を整えていく。
「す、すみません、お待たせいたしました」
背後から人が慌てて入ってくると、私の前にくる。
「いえいえ、全然まっ……」
思わず言葉に詰まってしまう、それは相手も同じだったようで、私以上に驚いていた。
「も、もしかして紗香?」
「え、えぇ……久しぶりね」
なんてこった、この人口が多い場所で再度巡り合うなんて考えもしなかった。
当時と違い、清潔感のある短髪に幼さが抜けてしっかりとした印象になり、すっと整った顎のラインと優しそうな瞳は今でも変わっていない。
一応お互いの名刺交換をするが、私は彼の名前を知っていて、当然彼も私の名前を知っているし、携帯電話番号のところを見ると当時と変わらない番号が記載されている。
「どうも、改めまして有限会社 ハイルーフの海外担当の漆田 恭平です」
笑顔で挨拶されてしまう。 私も名刺に書かれている通りに自己紹介をすると席に座ってメモ帳を取り出した。
ど、どうしよう……かなり気まずい、相手はそれほど気にしていないようだけれど、まさか大学時代に付き合っていた人とこんなところで再会するなんて、神様どんな悪戯よ。
「確かに誰か居たような気がしますが、まっちょじゃなかったですよね?」
彼女の男性を覚える基準があまりにも疑問視されるため、とりあえずもう放っておくことしする。
墓穴は掘らないようにしなければならない、それでも私と彼の関係性は少しは変わった感じがした。
そんな頻繁にとは言わないけれど、体を重ねることもあり家の雰囲気も今までよりも柔らかい感じがしてきている。
最初は早く部屋が空かないかと思っていたが、慣れてしまえば全然大丈夫だったし……そ、それに好きな人と同じ空間に居るのは悪くない。
「でも、本当にいいのかしら?」
告白なんて甘ったるいことは言わないまでも、やはりお互いの気持ちは確かめ合いたいと思うのはダメだろうか?
だが、思っていても行動に移せないでいるのは私の年齢もそうだが、今の関係性が一気に壊れてしまいそうで怖かった。
そんなことを考えていると、次第に季節は移り替わっていき寒さが増してきたように思える。
仕事に行く用の靴を秋ようにコッソリ変えると私は家を出た。
「行ってらっしゃい」
「うん、樹くんも今日はテストなんでしょ? 頑張って」
いつからか、志賀くんと呼ぶとムッとされることが多くなり、今ではお互い下の名前で呼び合っている。
私としては、ベッドの時に下の名前で呼ばれていたのはちょっと特別な気がして、なんとなく良いなぁって思っていたが、変だろうか?
彼は今働いている会社にアルバイトから正社員としての雇用が決まっていたので、就職活動は滞りなく終わり残すは卒業だけという状況であった。
「さて、頑張らなくちゃ」
私も自分に気合を入れて出社する。
今日は新規のお客様から直接連絡を受けて私が行く日でもあった。
「もう! 何やっているのよ」
営業の肥田さんが、数日前に私に頭を下げてきた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
病院のベッドで平謝り状態の肥田さん、ベテランの営業さんで成績も悪くない彼がまさかぎっくり腰で動けなくなり、この案件をこちらに頼めないかとお願いされてしまう。
もちろん、他の営業さんにまわせないのかと聞いても、急すぎて予定が合わずに無理と断られてしまったようだ。
だからって、なんで私なのよ⁉ 今は、営業の仕事はあまりせず企画部の仕事を頑張っていたが、半分以上営業部のままである。
「はぁ、わかった。肥田さんの頼みなら……でも、もし失敗しても恨まないでね」
「恨むなんて、それに僕より神薙さんが行ったほうが契約率高いから、むしろ安心しているほどだよ」
「ダメよ、そんな他力本願じゃぁ」
「いやいや、本音だよだから早く営業部に戻っ……」
「だから無理よそれは」
私は彼から資料を受け取ると、お見舞いの品を置いて部屋から出て行く。
嬉しそうにフニフニとしたお腹の上に食べ物を置いて食べ始める姿を見ていると、肥田さんのお願いは断りにくくなってしまう魔法があった。
「ほんと、あの人だけのスキルよね」
階段を降りていき、外にでると蒸し暑さの奥にスッと冷たい風を感じた。
もう少しで秋かと思うと、どうにかこの暑い夏を乗り切れそうで安心する。
それから、今日まで私は準備を整えて連絡を受けた会社に向かっている。
「ここね」
そこまで大きな会社ではないけれど、少数精鋭を売りとしており資本金以上にしっかりとした体制を築いていた。
本業はベトナムやタイなどへ車関係の輸出がメインだけど、今は手広く様々な商材扱うようになっているようで、会社のホームページには求人情報も掲載されていた。
「よし、行くか」
腕時計で時刻を確認し、一階の受付に挨拶すると奥に通されて待っている間にプレゼンの準備を整えていく。
「す、すみません、お待たせいたしました」
背後から人が慌てて入ってくると、私の前にくる。
「いえいえ、全然まっ……」
思わず言葉に詰まってしまう、それは相手も同じだったようで、私以上に驚いていた。
「も、もしかして紗香?」
「え、えぇ……久しぶりね」
なんてこった、この人口が多い場所で再度巡り合うなんて考えもしなかった。
当時と違い、清潔感のある短髪に幼さが抜けてしっかりとした印象になり、すっと整った顎のラインと優しそうな瞳は今でも変わっていない。
一応お互いの名刺交換をするが、私は彼の名前を知っていて、当然彼も私の名前を知っているし、携帯電話番号のところを見ると当時と変わらない番号が記載されている。
「どうも、改めまして有限会社 ハイルーフの海外担当の漆田 恭平です」
笑顔で挨拶されてしまう。 私も名刺に書かれている通りに自己紹介をすると席に座ってメモ帳を取り出した。
ど、どうしよう……かなり気まずい、相手はそれほど気にしていないようだけれど、まさか大学時代に付き合っていた人とこんなところで再会するなんて、神様どんな悪戯よ。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺以外、こいつに触れるの禁止。
美和優希
恋愛
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の高校二年生の篠原美姫は、誰もが憧れる学園のヒメと称されている。
そんな美姫はある日、親の都合で学園屈指のイケメンのクラスメイト、夏川広夢との同居を強いられる。
完璧なように見えて、実は男性に対して人の何倍も恐怖心を抱える美姫。同居初日からその秘密が広夢にバレてしまい──!?
初回公開・完結*2017.01.27(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2019.11.27
表紙イラストは、イラストAC(sukimasapuri様)のイラスト素材に背景と文字入れを行い、使用させていただいてます。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガールズ!ナイトデューティー
高城蓉理
ライト文芸
【第三回アルファポリスライト文芸大賞奨励賞を頂きました。ありがとうございました】
■夜に働く女子たちの、焦れキュンお仕事ラブコメ!
夜行性アラサー仲良し女子四人組が毎日眠い目を擦りながら、恋に仕事に大奮闘するお話です。
■第二部(旧 延長戦っっ)以降は大人向けの会話が増えますので、ご注意下さい。
●神寺 朱美(28)
ペンネームは、神宮寺アケミ。
隔週少女誌キャンディ専属の漫画家で、画力は折り紙つき。夜型生活。
現在執筆中の漫画のタイトルは【恋するリセエンヌ】
水面下でアニメ制作話が進んでいる人気作品を執筆。いつも担当編集者吉岡に叱られながら、苦手なネームを考えている。
●山辺 息吹(28)
某都市水道局 漏水修繕管理課に勤務する技術職公務員。国立大卒のリケジョ。
幹線道路で漏水が起きる度に、夜間工事に立ち会うため夜勤が多い。
●御堂 茜 (27)
関東放送のアナウンサー。
紆余曲折あり現在は同じ建物内の関東放送ラジオ部の深夜レギュラーに出向中。
某有名大学の元ミスキャン。才女。
●遠藤 桜 (30)
某有名チェーン ファミレスの副店長。
ニックネームは、桜ねぇ(さくねぇ)。
若い頃は房総方面でレディースの総長的役割を果たしていたが、あることをきっかけに脱退。
その後上京。ファミレスチェーンのアルバイトから副店長に上り詰めた努力家。
※一部を小説家になろうにも投稿してます
※illustration 鈴木真澄先生@ma_suzuki_mnyt
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる