年下の男の子に懐かれているうえに、なぜか同棲することになったのですが……

安東門々

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同棲開始

ふっかふかのベッド

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 おかしなことになったわね。
 シャワーを浴びながら考えてみる。

「あの家具、全部この部屋に合わせていた。しかも、かなり有名なメーカーのばかり」

 彼は、いつもお世話になっている取引先の清掃のアルバイトをしているたしか……志賀しが たつきくんだったかな?
 そのステークホルダーによく私が行っているので、顔をあわせる機会が増えて、今では彼のほうから話しかけてきてくれた。

 ちょっと、子猫っぽいところもあって可愛いなぁ、なんて思っていたが、たしか今は大学四年生で、近々引っ越すてきなことを言っていたような?
 もしかすると、彼のご両親がお金持ちなのかもしれない。
 
「わ、わからない」

 細かいお湯がでてくるシャワーに、彼が選んだシャンプーとコンディショナーが置かれていた。
 洗顔用品は、少しだけ鞄に入れていたので、今日はそれで足りる。

「良い香り」

 少し枝毛の目立つ毛先を丁寧に洗っていく。
 心なしか、いつもより少しだけしっとりとしているような気がした。

「着替え……」

 一応、今日酔いつぶれれも良いように、着替えは持ってきてある。 
 ただし、下着だけだ。

「明日会社無いからって油断した」

 自分の働いた匂いが残っている服を着て寝るのは嫌だが、下着だけで過ごすのはもっと嫌だ。
 どうすればよいのか? 迷った私は、彼を呼んで仕方がなく服を貸してもらうことした。

「ここに置いておきますね」

 無言で返事をすると、急いでシャワーで体をいちど流してから浴室から出る。
 そこには、綺麗に畳まれた服が置かれており、タオルもあって、それで拭くと柔軟剤の柔らかな香りがしてきて、ちょっとだけ嗅いでしまった。

「はっ⁉ 何を私はしているの」

 周りを確認し、誰も見ていないことを確認して、そっと着替えてみると、細身であるものの、やはり男性。
 ぶかぶかな感じになぜかホットしてしまう。

 脱衣室から出ると、リビングで彼が待っていてくれている。

「あ、どうも」

「う、うん、ありがとう」

 かなり気まずい、やはり無理してでも帰るべきだった。
 
「あ、あの歯ブラシはここに、新品です。それにベッドもまだ俺寝ていないので、気にせずに」

「え、えぇありがとう、志賀くんはどこで寝るの?」

 私が名前を呼ぶと、少し驚いたのか、目を見開いてこちらを見つめてきた。

「なに?」

「いや、自分の名前覚えていてくれてたんですね」

 そんなこと? 一瞬忘れそうになっていたのは秘密だけれど、いつも伺うたびに話しかけてきてくれていたので、自然と覚えている。
 
「志賀くんこそ、私の名前覚えていたじゃない」

 彼のほうこそ、さっき凄く自然に私の名前を呼んでいる。
 いつも、社員証を首から下げているので、覚えていてくれたのだろうか? 自分から自己紹介をした記憶はない。

 髪の毛を乾かしながら、無言の時間が過ぎていく。
 なんだか落ち着かない、当たり前か今まで他人だったのが、急に一晩同じ部屋で過ごすのだから。
 結局彼は、ソファーで寝るそうで、私にベッドを譲ってくれた。

「そ、それじゃぁおやすみ、それとありがとう」

「?」

 ぼそっと言ったので、聞こえていないようで、急に恥ずかしくなり急いで寝室に入ると、見学の時に感じた雰囲気ではなく、すでに彼の色に染まっていた。

「なによ、微妙にセンスが良いじゃない」

 自分の部屋が殺風景過ぎるのもあるけれど、家具や寝具、細かいディティールまでこだわっている。
 ベッドもふかふかで、腰を掛けただけですごく上質な品だとわかってしまう。

「もしかして、本当にお金持ち? でも、なんでそれじゃあアルバイトなんて?」

 ふわっと、横になると、お酒も入っていないのに眠気が勝手にやってきた。
 何これ、す、ごく気持ちがいぃ……。

「でも、よく考えたら今って、男女二人だけよね?」

 急に緊張してきてしまう。
 今まで、混乱して意識していなかったが、彼って結構カッコいいし、男性なのよね?
 急に入ってきたらどうしよう、なんて考えてしまうが、部屋の鍵をかけようとしても体が既に動かないでいた。

「大丈夫よね? うん、それに彼だって、私のような人を異性って思わないだろうし」

 自分で言って落ち込みそうになるが、この気持ちの良いベッドが私の意識をどんどんと薄らせていく。
 
 …………。

 いつの間にか眠っていたのか、薄っすらと目が覚めてしまう。
 
(あれ? 灯り?)

 まだ、本格的に目が覚めていないようで、しっかりと扉は閉めていたと思っていたが、風で開いてしまったのかな?
 いや、そんなはずはない。

 そんなことを朦朧とした意識の中で考えていると、ドアが開き誰かが入ってきた。

(え? これって、もしかすると?)
 
 ぞくっと緊張してしまう。
 えぇ⁉ 嘘、そんなことってあり得るの?

 ぐっと、体をこわばらせて抵抗する準備をすると、彼は優しく私の隣に膝をつけると顔を近づけてきた。

(なになになになに⁉)

 もっと、ガバっとくるかと思ったが、予想外の行動に心臓が乱れていく。
 
「神薙さん……」

 思わず返事をしそうになりかけたが、堪えて寝たふりを続けていると、志賀くんの唇がそっと私の頬に触れた。
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