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魔法の試験じゃないのか?

蒼き聖騎士

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「だ、誰だ⁉」

 男の一人がこちらに気がつき振り向くと、一瞬全員の視線が彼女から逸れた。そのタイミングを逃さずに蒼き聖騎士ブルー・パラディンが行動を開始する。
 まずは、一撃で手前にいたデモゴルゴンのカス以下を仕留めると、そのまま突きを男の腹部に命中させ気絶させる。
 一連の動作にスキがあまりないのは、凄いことだと思う。続けざまに横にいたミノタウロスのカス以下も一撃で沈めると、ガキっと男の足の骨を折り、こちらに気が付いた相手が振り返る前にデモゴルゴンは倒され、男の腕はとられバキバキと嫌な音が聞こえてくると同時に、悲鳴があがった。

「ぎゃぁぁ――!」
「うぐぅぅっ……」

 激痛に悶える二人、気絶して泡をぶくぶく口からだして空を見え下ている男、なるほどこちらが手助けすしなくともこうなっていたわけか、しかし、あの召喚された聖騎士は正直今までの存在とは違い、聖なる力をまとっているように思えた。

「おっと、いらないお世話だったかな?」
「いいえ、助かったわ。相手の気を逸らしてくれたから当初の予定よりも随分とスムーズに倒せたから」
「それは良かった」

 俺たちが会話をしていると、腕を折られた男は聖騎士から離れ逃げようとする。それを追いかけようと彼女が命令を出そうとしたとき、俺は静止をかける。

「ちょっと! 邪魔よ。逃げられちゃうじゃない!」
「まぁ、せっかく登場したんだ。少しは俺の見せ場もって!」

 こちらの言葉を聞かずに、横を聖騎士が通り過ぎていき、あっさり追いつくとそのまま無事だった方の肩を外し、地面に倒してしまう。

「何か言ったかしら?」
「いや、何も」

 ふんっと、鼻で僅かに笑われ彼女はそのまま去っていく、とんだ茶番だ。
 どうやら、自らを囮にし敵をおびき寄せたようで召喚した存在もかなり強い。強いと言っても俺の爪に傷を負わせるほどの実力はないのはわかるが、賊の頭領を除き今まで圧倒的な強さを持っている。

「おっと、時間が無かったんだ!」

 追いかけて話でも聞こうかと思ったが、三人を捕縛してさっさと消えてしまう。こちらも時間が無いのでとにかく今は試験会場に戻ることが最優先だった。
 それに、先ほど試験のことを言っていたのでもしかすると会場で出会えるかもしれない。

「さて、行きますか」

 周囲を確認し、足に魔力を集中させ一気にジャンプすると建物の屋根にのぼりそのまま上を渡っていく。
 試験会場に到着すると、欠員補充に応募している人が大勢たむろしていた。

「さすが、王立魔法学園の試験か……随分と人気があるな」

 アイリスの話を聞くに、この学園を卒業できれば仕事には困らないと言っていたし、成績が優秀なら国の仕事にも就ける可能性があるというので、毎年応募者は殺到しているらしい。
 それに合格できた彼女は凄いと言えるだろう、まぁ、俺が惚れた女性なのだから当たり前かもしれない。そんなことを思っていると全員中に入るように指示がだされた。

 ゾロゾロと中に入っていくと、細かい説明が開始される。一応ここは闘技場ということで観客席が設けられ、一番目立つ場所で今回の試験を監督する人たちがいるらしいが、何かの魔法で見えないくなっている。
 だが、俺の空間把握魔法によれば10名程度の人間の気配が感じられた。しかも、そのうち一人は先ほどの少女だろう……それに、この魔力波動の感じからすると兵士のような人間が大半を占めている。

「ふむ、不穏な感じしかしないが、とりあえずは合格せねばなるまい」

***
「シリーア、今回の試験に本当にそいつは現れるのか?」
「えぇ、お父様。先ほど捕縛したやつらからの情報でも間違いありません」

 私たちが半年前から追っている、違法魔石……純度が七十パーセントを越えている魔石は王立魔法師団レベルの魔法使いでしか作れない。しかも、それは国家事業などを行うときに使われる代物、それが流れているということはほぼあり得ない。ならば、それをもっているのは違法に製造された粗悪な方法で無理やり純度を高められた魔石であるのは間違いない。

「しかし参ったな、噂が本当ならこの試験、死人がでるかもしれぬな」
「はい、そのために私たちが待機しております。押収した魔石の中には純度七十パーセントを越えるものはありませんでした」
「だが、そのクラスの魔石を裏で購入できる存在……限られているがおそらく貴族だろう」
「この最後の試験には、どうしても合格したい貴族の方々もおられます。どんな手段を用いても」

 もし、本当にそんなモノを生身の人間が使えば必ず暴走してしまう、もしかするとここに待機している私たちでも勝てない可能性すらあった。

***

 試験の内容は簡単で、応募した人たちが直接闘うということだった。
 ルールとしては、相手を傷つけたり死なせるのはダメで、基本的には魔法や召喚獣を用いてのバトルということのみ、トーナメント式で上位3名が合格できるらしい。
 
「さて、この場には我を楽しませられる存在はおるのかな?」

 最後に申し込んだこともあり、最後の試合になっている。それまではゆっくりと休ませてもらおう。特に疲れてはいないが、この退屈な戦闘をずっと見ているのは辛かった。

 だが、気になるのはあの観覧席以外にも隠れた人間たちが数名いることだろう、先ほどの男どもの行動も気になるがもしかすると波乱があるかもしれない。
 そんなことを考えながら空を見上げていると、自分の名前が呼ばれていることに気が付く。

「ルーツくん! いないのかね⁉」

「あ、ここにいます」
「急いでくれないか! 困るんだよなぁ」
「すみません……」

 人間なんぞに謝る必要はまったくないのだが、これは魔法学園で生活するために必要なことなので、今は我慢しよう。
 そして、俺の対戦相手はっと……。

「お、遅いぞ!」
「すまない、すまない」

 ガクガクと震えている赤毛の男子、身なりからはかなり裕福な家だと思うがこの最終試験はほとんどが一次試験で落ちた人たちだと聞いている。
 なら、こいつも前の試験で落ちてしまったのだろう、だから実力はたかが知れていた。
 
「な、何を笑ってやがる」
「いや、そんな緊張しなくてもさっさと終わらせようぜ」

「な、なめやがって!」

 召喚の呪文を唱えると、今まで見たことのない紋章が現れ二つにわかれた
「ほう」
「お前も早く召喚しろ!」

「召喚? いや、すまない。俺は召喚術が使えないんだ」
「なっ何⁉ お、お前、そんな落ちこぼれでこの試験を受けにきたのか⁉ な、なめやがって!」

 別れた紋章から二体の陰が浮かび出てくる。なるほど、アイリスから聞いていたが稀に複数体を召喚できる人もいるらしいことは知っていた。かなり特殊らしくそんなに多くはないと聞いており、だいたい強いが……なるほど、こいつは召喚は複数体行えるが使役できる存在が雑魚すぎるから落ちたのだな。
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