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魔法の試験じゃないのか?

参らん!

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 程よく心地よい速度で飛んでいくと、明け方ごろには目的地の王都が見えてきた。
 このまま城門を越えようと思ったが、念のため遠眼という能力を使い城壁を確認してみると衛兵がキッチリと警備をしている。
「流石に、空から行くのは嫌な予感がするな……」

 一度降りてから、城門を潜るときに身分証を求められ見せるとアイリスの父親と同じ反応をされ、裏の小屋でかなりの時間待たされてから通行の許可がでた。

「兄ちゃん、こんな珍しい身分証よくもっていたな、役所で確認するときかなり大変だったよ」
「そ、そうですか……いらない手間をかけてすみません」

 こんな感じだと後々面倒なので、今の身分証を作る必要があるかもしれない。
 そんなことを考えながら、朝早くから活気だつ街並みを楽しみつつ試験会場を目指していく。

「ここか……」
 
 王立魔法学園試験会場と書かれた場所は、闘技場と呼ばれており人間同士が闘う場所のようだが、案内を確認するに殆どが召喚した存在同士を闘わせているようだ。
 昔は純粋な強さを競っていたみたいだが、今ではそれが廃れてしまったようでここも召喚術の力が色濃く表れている。

「えっと……ルーツくんね。はい受付完了したよ。ギリギリだから試験は一番最後になると思うけれど、使役しているモンスターの名前を教えてもらえるかな?」

「ん? 俺は、召喚術は使えないぞ」

 こちらの一言を聞いた受付の男性は、一瞬何を言っているのか理解できずにおり、ただ乾いた笑いを俺に放ってくる。

「こらこら、試験に必要だから嘘はいかんぞ」
「嘘じゃない。本当に使えないんだ」

 俺の真面目な顔を見て、本気だと感じたのか目をウロウロさせながらメモをとっていく、一応召喚術が使えなければ試験は受けられないのかと聞くと「そんなことはないけれど……合格は限りなく難しい」とだけ告げられる。
 昼から試験を開始するので、それまでの間は暇をつぶしていなければならない。せっかくなので王都を見学することにした。

「しかし……召喚術が優れているのは理解できるが、魔法が廃れるほどのことなのか?」
 
 街を見ると、そこら中に使役されているモンスターや獣が見えた。それだけ根付いているのはわかるが、単純な攻撃や利便性でいくなら魔法は劣っていないと思う、それが凄く気になっているが時代の流れなのか? と、思うことにした。

「さて、どこに行くかな……」

 疲れてはいないし、腹も減っていない。本当に目的もなくブラブラ歩いているだけでも十分楽しかった。以前は人間の生活に興味をもつことなんてまるでなかったが、彼女を好きになってからは少し興味がわいてきている。
 表の煌びやかな雰囲気と異なり、建物の裏は少し陰の気配を漂わせているのが更に素晴らしい。
 どこの世界でも陽と影はあるのだと思うと、なぜか嬉しくなる。ついでなので、その暗い部分も是非見てみたいと思い俺は誘われるまま裏路地へと入り込んでいく。

「う~む、これはかなり良い感じがする。以前、モンスター側でもこういった街は多くあったから、人間だけの特徴というわけではないのだな」

 アイリスたちの住んでいる街とは違い、闇が濃いというか……こう、どっちかというと我々側に近い雰囲気をまとっている。だからなのか、滅んでしまったという魔族やモンスターの気配に触れることができ、少し懐かしい気持ちを今は味わえていた。

 更に奥に進むにつれて、その闇はより濃さを増していく。もう少しもう少しと思っていると随分と奥まできてしまったようだ。
 
「さて、戻るか。ここまできて遅刻になっては意味がないだろう」

 そう思って引き返そうとおもったとき、ボロボロの建物の壁を伝いハッキリとした悪意が伝わってくる。最初は無視をしようと思ったが誰かが召喚術を使ったのだろ、その気配に俺は誘われるように足を悪意のする方へと向けてしまう。

 小走りでかけていくと、悪意は更にまし物音までハッキリと聞こえてきた。

「この小娘が! 返せぇ‼」
「いやよ!」

 男と少女の声が聞こえてきたので、俺は建物の陰に隠れて様子を見ることにする。パッと見の情報では三人ほどの人相の悪い男が少女らしき人物を取り囲んでジリジリと角に追い詰めているといったところか……。なら、見なかったことにするべきであろう。ここで面倒ごとに巻き込まれるのは避けたかった。

「これ以上近づかないで! 出でよ! 【蒼き聖騎士ブルー・パラディン】」

 少女が召喚術で甲冑をまとった存在を召喚し戦闘の態勢を整えている。それに引き換え相手の男たちはすでに召喚を済ませており、おそらく僅かに感じられる気配からデモゴルゴンとミノタウロスのカス以下の存在に見受けられる。

「へへへへ……嬢ちゃん、大人しくそれを返してくれたら命まではとらねぇよ」
「返すもんですか⁉ こんな違法なモノを売りつけるなんて!」
「正義感は身を亡ぼすぜ⁉ 嬢ちゃんのような魔法学園を受験するようなガキたちは、毎年何人も買うんだよ」

 ん? 今、魔法学園の名前が出たような気がするが? 

「受験に合格したいからって、こんな体を壊すような魔石を違法に販売していいわけないでしょ!」
「だから、見なかったことにするんだって言ってんのが通じねぇのかよ⁉」
「できるわけないでしょ! 受験は自分の力で切り開くものなんだから」

 飽きれた感じの息が漏れる。もう面倒になったのか、殺気が一気に上がると距離を詰めだした。
 
「もし、私が遅れたら今年の受験は無くなるわよ」

 なに⁉ それを早くいわないか!

「なるほど、俺たちも随分と面倒なガキに声をかけちまったもんだな、よっし! 殺さずに生け捕りにしてどこかに売っちまえ!」
「ちょっと、受験がどうなってもいいの⁉」

「関係ないな、そりゃ少しは売り上げは減っちまうが、これから逃げ出されて今後の売り上げが減るほうが痛いってことよ。だからな嬢ちゃん観念しや」

 受験が無くなる⁉ それは、困る。今後のこの世界での生活がかかっているのだから、ここは全力で阻止しなければならない。俺はそう思って隠れていた場所から動き、わざと相手に俺の存在を知らせた。
 
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