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我……恋? しちゃった♡
静けさ
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洞窟を出るころには、すっかり朝日が昇り始めていた。正直、睡眠をとる必要性はまったくないのだが少しは疲れるという感覚を味わってみたいと思うこともあった。
自分がどのような存在なのかを理解している。この世界の理から逸脱しているのは理解しているものの、やはり他の存在が行っているモノに対しては若干の興味がある。
「さて、帰りますか……」
そう思って来た道を戻っていく、街では朝から働く人々の活気が伝わりだし、空気も変わってきた。
街に到着し、まず最初に声をかけられたのはアイリスの父親だった。口調は【ルーツ】に戻し、ボロボロになった衣服は魔法で再生させていたので、問題ない。
「どこに行っていたのかな?」
「ん? どこって、散歩していただけですけど」
「ずいぶんと長い散歩だったんだね」
「道に迷ってしまいまして」
それだけ聞くと、その場から立ち去ろうとしていたので俺はあるものを父に渡した。
「これ、道に落ちていましたよ」
「落ちていた? 何を拾ってきた……⁉ これをどこで見つけたんだ⁉」
「どこかは忘れてしまいました。道に迷っていたので正確な場所はわかりません」
俺が渡したのは、賊の頭が身に着けていた指輪である。ほかの装飾品は細切れにしてしまったが、その指輪だけはほぼ無傷で残っていたので、調べてみるとアミーもどきを使役するだけの魔力を貯めておくことができる魔法具であることがわかった。
「これは……盗賊団の」
「落としたんじゃないですか? もし、心当たりがあるなら返してくれますか?」
俺の態度で何かを察したのか、急いで家を出ていく。まぁ、俺がやった証拠はそれこそ残っていないだろうし、お金というものに少しは興味があったが、いきなりこの街を騒がせているボスの遺品を持っていくと大きな騒ぎになることは間違いない。
「しかし……アミーか、あやつの能力は確か……」
炎ばかりに注目してしまいそうになるが、あのクラスの魔族になると他の能力の方が圧倒的に厄介である。
いかに強大な軍団を率い、炎を操るアミーでも三つの国を亡ぼすことは難しかった。だが、それができたのはヤツの特殊能力が関係していた。
アミーのその特殊能力は……。
「欺瞞・裏切り・悪意・誹謗」
敵に対し、裏切りの種をまいたりし相手を戦う前から大混乱に陥れることができる。それが、かなり厄介らしく人間は陣形を崩し仲間同士で殺し合いを始めた。
いくら搾りカス程度の存在といえども、アミーの分身であることは間違いない。しかし、肝心の特殊能力が今回殆ど感じられなかった。それはつまり、既にどこかに作用していた可能性を意味する。
「俺に感謝しろよ。その鎖を解き放ったのだから」
おそらく、アイリスの父親は正義感が強く普通ならば裏切るようなことはしないだろう、しかし、今回はアミーの力によって本人の意思とは関係なく賊に協力していた可能性がある。
あの様子だと、賊も父親もアミーの特殊能力に関しては気が付いていないと思われるが、知らず知らずのうちに作用していたのだろう。
「召喚術か……便利なようで、何か恐ろしさも感じるな」
借りている部屋に戻ろうとすると、二階からトタトタと愛らしい足音が聞こえてくる。
俺はその音を聞くだけで、体が動かなくなり心臓が早く動き喉が渇いていく。
「あ、ルーツおはよう♪」
「お、おおおおおはようアイリス」
挨拶するだけで顔が爆発しそうなほど緊張してしまう、以前万の軍勢を前にしても緊張しなかった俺が人間の少女一人に緊張するなんて、信じられない。
「ルーツは朝早いの?」
「朝も夜も早いです!」
緊張のあまり、何を言っているのか……キョトンとした顔をしてしまっている。しかし、その後すぐにクスクスと笑い出し笑顔になってくれた。
「なにそれ、ルーツって最初見たときは凄い魔法使うから少し怖い人って思ったけれど、全然違うんだね」
なに? 怖い人と思われていたのか、それはマズイ。今後は魔法の種類を考慮する必要があるかもしれない。
そんなことを思っているうちに、彼女は朝ごはんを作り出していく。初めて食べた人間のご飯の味は、とても美味しくまたアイリスが作ってくれたことが更に嬉しさを増してくれた。
その後、昼近くに出かけようと言われ準備をしていると父親が帰ってくるなり俺は袖を掴まれ奥の部屋へと無理やり連れていかれる
「ど、どうかしましたか?」
「すまない……本当に、ルーツくんは何も知らないんだね?」
「だから、何をですか? 俺は何も知りませんし、本当に散歩をしていただけなんですよ」
俺の顔を見て、小さくため息を吐くと少し首を横に振って「わかった。もう何も聞かないよ」とだけ、つぶやいた。
それから、また忙しく外に飛び出していくが、ピタリと立ち止まりゆっくりと振り返ると、一言。
「ありがとう! 解放してくれて!」
「だから、何からですか!」
フッと笑い、街へと消えていく。まぁ、だいたい察しているのだろうが証拠がないので俺が白状しない限りは、もう何も言ってこないだろう、さてアイリスへの脅威は無くなったがもう一つ問題が残っていることに気がついた。
「さて、これからどうするかな……」
本当は賊どもを倒したら、そのまま元の場所に戻ろうと思っていたが、召喚術で召喚された存在に興味をもったことやなぜあれほど盛んだった魔法が廃れてしまったのか、確かに千年も経過していれば何もかも違っているかもしれない。
だけど、何か違和感を感じられずにはいられなかった。
「で、残るにしても問題は住む場所だよな」
正直言えば、森の中でも快適に暮らすことは可能だった。しかし、それではアイリスの父親に怪しまれる可能性が非常に高い。
そんなとき、一枚の紙が視界の隅に入ってきた。
「ん? これは?」
自分がどのような存在なのかを理解している。この世界の理から逸脱しているのは理解しているものの、やはり他の存在が行っているモノに対しては若干の興味がある。
「さて、帰りますか……」
そう思って来た道を戻っていく、街では朝から働く人々の活気が伝わりだし、空気も変わってきた。
街に到着し、まず最初に声をかけられたのはアイリスの父親だった。口調は【ルーツ】に戻し、ボロボロになった衣服は魔法で再生させていたので、問題ない。
「どこに行っていたのかな?」
「ん? どこって、散歩していただけですけど」
「ずいぶんと長い散歩だったんだね」
「道に迷ってしまいまして」
それだけ聞くと、その場から立ち去ろうとしていたので俺はあるものを父に渡した。
「これ、道に落ちていましたよ」
「落ちていた? 何を拾ってきた……⁉ これをどこで見つけたんだ⁉」
「どこかは忘れてしまいました。道に迷っていたので正確な場所はわかりません」
俺が渡したのは、賊の頭が身に着けていた指輪である。ほかの装飾品は細切れにしてしまったが、その指輪だけはほぼ無傷で残っていたので、調べてみるとアミーもどきを使役するだけの魔力を貯めておくことができる魔法具であることがわかった。
「これは……盗賊団の」
「落としたんじゃないですか? もし、心当たりがあるなら返してくれますか?」
俺の態度で何かを察したのか、急いで家を出ていく。まぁ、俺がやった証拠はそれこそ残っていないだろうし、お金というものに少しは興味があったが、いきなりこの街を騒がせているボスの遺品を持っていくと大きな騒ぎになることは間違いない。
「しかし……アミーか、あやつの能力は確か……」
炎ばかりに注目してしまいそうになるが、あのクラスの魔族になると他の能力の方が圧倒的に厄介である。
いかに強大な軍団を率い、炎を操るアミーでも三つの国を亡ぼすことは難しかった。だが、それができたのはヤツの特殊能力が関係していた。
アミーのその特殊能力は……。
「欺瞞・裏切り・悪意・誹謗」
敵に対し、裏切りの種をまいたりし相手を戦う前から大混乱に陥れることができる。それが、かなり厄介らしく人間は陣形を崩し仲間同士で殺し合いを始めた。
いくら搾りカス程度の存在といえども、アミーの分身であることは間違いない。しかし、肝心の特殊能力が今回殆ど感じられなかった。それはつまり、既にどこかに作用していた可能性を意味する。
「俺に感謝しろよ。その鎖を解き放ったのだから」
おそらく、アイリスの父親は正義感が強く普通ならば裏切るようなことはしないだろう、しかし、今回はアミーの力によって本人の意思とは関係なく賊に協力していた可能性がある。
あの様子だと、賊も父親もアミーの特殊能力に関しては気が付いていないと思われるが、知らず知らずのうちに作用していたのだろう。
「召喚術か……便利なようで、何か恐ろしさも感じるな」
借りている部屋に戻ろうとすると、二階からトタトタと愛らしい足音が聞こえてくる。
俺はその音を聞くだけで、体が動かなくなり心臓が早く動き喉が渇いていく。
「あ、ルーツおはよう♪」
「お、おおおおおはようアイリス」
挨拶するだけで顔が爆発しそうなほど緊張してしまう、以前万の軍勢を前にしても緊張しなかった俺が人間の少女一人に緊張するなんて、信じられない。
「ルーツは朝早いの?」
「朝も夜も早いです!」
緊張のあまり、何を言っているのか……キョトンとした顔をしてしまっている。しかし、その後すぐにクスクスと笑い出し笑顔になってくれた。
「なにそれ、ルーツって最初見たときは凄い魔法使うから少し怖い人って思ったけれど、全然違うんだね」
なに? 怖い人と思われていたのか、それはマズイ。今後は魔法の種類を考慮する必要があるかもしれない。
そんなことを思っているうちに、彼女は朝ごはんを作り出していく。初めて食べた人間のご飯の味は、とても美味しくまたアイリスが作ってくれたことが更に嬉しさを増してくれた。
その後、昼近くに出かけようと言われ準備をしていると父親が帰ってくるなり俺は袖を掴まれ奥の部屋へと無理やり連れていかれる
「ど、どうかしましたか?」
「すまない……本当に、ルーツくんは何も知らないんだね?」
「だから、何をですか? 俺は何も知りませんし、本当に散歩をしていただけなんですよ」
俺の顔を見て、小さくため息を吐くと少し首を横に振って「わかった。もう何も聞かないよ」とだけ、つぶやいた。
それから、また忙しく外に飛び出していくが、ピタリと立ち止まりゆっくりと振り返ると、一言。
「ありがとう! 解放してくれて!」
「だから、何からですか!」
フッと笑い、街へと消えていく。まぁ、だいたい察しているのだろうが証拠がないので俺が白状しない限りは、もう何も言ってこないだろう、さてアイリスへの脅威は無くなったがもう一つ問題が残っていることに気がついた。
「さて、これからどうするかな……」
本当は賊どもを倒したら、そのまま元の場所に戻ろうと思っていたが、召喚術で召喚された存在に興味をもったことやなぜあれほど盛んだった魔法が廃れてしまったのか、確かに千年も経過していれば何もかも違っているかもしれない。
だけど、何か違和感を感じられずにはいられなかった。
「で、残るにしても問題は住む場所だよな」
正直言えば、森の中でも快適に暮らすことは可能だった。しかし、それではアイリスの父親に怪しまれる可能性が非常に高い。
そんなとき、一枚の紙が視界の隅に入ってきた。
「ん? これは?」
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